第537話 閑話…姉妹同盟の抱える問題
今回は2話同時更新。
こちらは2/2です。
シャフリーンが不在の間、ミリメリアはレイヴァース家にて居候生活を続け、日々メイドたちに迷惑をかけていたのだが、その日、迎えの馬車が来たことで一時的に城へと帰還することになった。
何か問題でもあったのだろうか。
そんなことを思いながら帰還したミリメリアを待っていたのは彼女が盟主を務める姉妹同盟、そこに参加している各国の姉妹たちからの手紙の束であった。
内容はすべて、レイヴァース卿への紹介をミリメリアにお願いしたいという嘆願である。
「うごごごご……」
レイヴァース卿に対し各国はおいそれと手出し出来ない状況になっていることを把握していたミリメリアは安穏と過ごしていたが、この予想外――、いや、想定しておくべきだった問題を前に自室にて姫にあるまじきうめき声を上げながら頭を抱えることになった。
姉妹同盟はミリメリアの趣味と実益を兼ねた活動であり、その最大の功績はエルトリア王国の問題解決、そのきっかけとなったことである。
緊急時における援助は同盟の目的、その最たるものであるが、他にも立場の悪い者への後ろ盾など、助け合えることは助け合おうという理念を掲げている。
ならば、この『紹介』もまた助け合いの一環となるだろう。
「こ、これは困りました……、こんなの、どうすれば……」
あばばばば……、としばし動揺していたミリメリアだが、落ち着くためにもお茶を貰おうとしてシャフリーンを呼び、それからシャフリーンは側に居ないことを思い出す。
「ああもう、シャフが側に居て……、いえ、今だけは居てくれなくて助かったのかもしれませんね」
もしシャフリーンがこの場に居合わせていたとしたら、いったいどんな目で自分を見ていただろうか……、そう考えてミリメリアは少し身震いする。
きっとその手紙を今すぐ燃やせ、とでも言いたげな視線を向けてきたことだろう。
シャフリーンのおかげ(?)で少し冷静になったミリメリアは、この問題を解決するべく意識を切り替え、もう一度すべての手紙にじっくり目を通した。
そして気づいたことは、姉妹たちは心の底からレイヴァース卿に食い込むつもりはなく、なんとか縁を結びたい家、もしくは上の立場の者から打診してみてくれと頼まれてのものらしいということだった。
しかし興味が皆無というわけでもないようで、会えるなら会ってみたいという心境も文面から読み取れる。
いきなりレイヴァース家に訪問したりするようなことまでは望んでおらず、例えばミリメリアがパーティーなどを主催して、会う機会を作ってもらえないかということだ。
「彼はあまりお城に来たがらないのですが……、それにお願いして来てもらったとしても目的がバレた場合――、いえ、彼は気にしないかもしれませんが、他の子たちに恨まれます」
今更――、そう、もはや今更なのだ。
同盟者である姉妹たちの中に、彼を取り巻くあの輪に食い込めそうな者はおらず、変に無理をして接近しようとすれば下手すると国際問題にまで発展する。
そしていざ発展した場合、その間に入るのはミリメリアである。
「板挟みすぎます……!」
同盟の姉妹たちも、レイヴァース家の姉妹たちも大切だ。
しかし贔屓するとなると、やはりレイヴァース家の姉妹たちである。
そんな姉妹たちに反感を覚えられるようなことはしたくない。
したくないが、そうもいかないのがつらいところであり、ミリメリアはちょっと悲しくなってきた。
これは断るしかないお願いなのだが、断るにしても相手が納得するような理由が必要になってくる。
彼が会いたくないと言うから会わせるのは無理、と返答できれば早いのだが、求められているのはそう言っている彼と会える『場』を用意してほしいという話なのだ。
つまり断る理由とは、ミリメリアがその『場』を用意できない理由であり、いくらなんでもレイヴァース家の姉妹たちを贔屓したいからなどと答えられるわけがない。
ならばレイヴァース家の姉妹たちの誰かがお断りしているからと答えればいいだろうか?
確かに星芒六カ国のうち、ベルガミアとザッファーナの姫が居る。
この二人に反対してもらえれば立場的には下になるミリメリアは従うしかないと判断してもらえるのだろうが、結果として二人が『会うことすら許さないとはなんと狭量か』と言われることは避けられず、それもまたミリメリアにとっては心苦しいことだ。
「うぅ、しばらくは交渉中ということでしのげますが……、名案が浮かばなければ二人にお願いしてみるしかありません」
ベルガミアとザッファーナの姫が許可しないという理由だが、二人の後ろ盾となっている国に交渉し、もし成功させてしまった場合はもうこちらで打つ手が無くなってしまうため、万全というわけではなかった。
この手段でいくなら、理想的なのは後ろ盾など必要とせず、その個人だけで影響力を持つような女性が必要になる。
さらに言えば、彼を独り占めしていると周囲に言われようと気にしない人物だ。
一応、ミリメリアには二人候補が浮かんだが、すぐに諦めた。
二人とはロールシャッハとリーセリークォートである。
各国の王家に影響力があるロールシャッハ、生ける伝説としてのリーセリークォート、この二人が許可しないとなれば、ミリメリアはそれに従うしかないと誰もが納得してくれることだろう。
しかし、今度は彼と二人との間柄――関係についての噂話が盛大に広まるに違いない。
なにしろ彼は時の人であり、民衆は彼の噂話に餓えている。
そのため後々のことを考慮するとこれはちょっと――、いや、かなりよろしくない。
では逆に、広まっても問題無さそうなレイヴァース家の姉妹たちとなると、今度はそこまでの権威がない。
「ミーネちゃんが彼くらい影響力を持っていれば……、いえ、よろしくありませんね。変に意識させてしまうことになります」
理想はそれこそ彼のような人物だ。
彼のような女性が居てくれたらよかったのだが……、もちろんそんな女性などこの世に存在するわけがない。
過去を遡ったとしても、それこそシャーロットくらいのものだろう。
ミリメリアは再び頭を抱え、この難題をいかにして解決するか、半泣きになりながら考え続けた。
これにて8章『砕け星屑の剣を』は終了です。
9章『奈落の徒花』は25日からの更新を予定しています。
※文章の修正をしました。
ありがとうございます。
2019/02/11




