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おれの名を呼ぶな!  作者: 古柴
8章 『砕け星屑の剣を』編
543/820

第535話 14歳(夏)…療養生活

 大工房本部前には協力してくれた人々が集まっていた。

 闘士、魔剣兵、勇者委員会の者に、認定勇者。

 みんな半裸なのは気にしないでおこう。

 そんな集団の正面にいるのはネイたちと上級闘士九名、それから撮影準備をするルフィアだ。


「やったようだな」


 そう言ったのは玄関横に座り込んで壁にもたれ掛かっていたリィ。

 おれたちがルファスをどうにかするまで、精霊たちと防衛していてくれたのだろう。


「お疲れさまです」

「まったくだよ。んじゃ、とっとと……、ん? なんか暗いぞ? ティアウルは助けだせたんだろ?」


 よっこいせ、とリィは立ち上がるが、そこで皆の様子が暗いことに気づいたらしく不思議そうに尋ねてくる。


「それについてはまた後で説明します。ひとまず、ここはぼくが何か言わないといけない雰囲気なので」


 おれはティアウルを伴って前に出ると、一つ咳払いしてからまずはティアウルを無事救出できたことの報告、そしてそれが皆の協力あってのものであることを告げ、感謝の言葉を述べる。

 そんな様子をルフィアはせっせと撮影。

 あー、この様子もばらまかれるのかー。

 まあ計画したのはおれだけどもー。

 などと考えながら喋っていたのだが――


    △◆▽


「んお?」


 気づいたらおれは仰向けで見慣れた天井を眺めていた。

 ここは屋敷の第一和室……?


「お、起きたか」


 少しほっとしたように言ったのは、すぐ横に座り込んでいたヴィルジオだ。

 ちょっとわけがわからず、ひとまず起きあがろうとしてみたが体はうんともすんとも、さっぱり動かすことができなかった。


「あれ、体が動かないや」

「そのまま安静にしているといい。主殿は皆を前に喋っている途中で意識を失ったのだ。あれからまる一日経過しておる」

「あー、そっか、じゃあこれはエルトリアの時と同じ不調か」


 エルトリアでの活動時間からもうしばらくもつと思っていたが、どうやら活動限界は一定ではなく、力の使用具合によって変化――無茶をすればするだけ短くなるようだ。


「……慣れたものだな。普通なら取り乱すところだぞ」


 苦笑ともしかめっ面とも言えない表情でヴィルジオは呟き、小さくため息をついてから表情をいつもの余裕のあるものに切り替えて言う。


「主殿が目を覚ますまで付き添うと言い張る者がけっこういてな、埒があかないので交代制にして今は妾の番というわけだ」

「お姫さまにこんなことさせてすみませんね」

「何をいまさら。そんなことを気にしておると、いずれもっと驚くことになるかもしれんぞ」

「驚く……?」

「うむ、まあそのためにも元気でいてもらいたいものだ。昨晩は遅くまで話し合うことになったしの」

「話し合いですか……」

「始めから終わりまで埒のあかぬ話し合いであったわ。さて、妾はひとまず皆に主殿が目を覚ましたと伝えに行く。少し待て」


 そう告げてヴィルジオは退出し、その後どっと皆がやって来た。

 でもなんで犬猫ヒヨコ、妖精、ぬいぐるみ軍団、おまけにメタマルまで来ているんですかね、もう部屋が凄く窮屈なことになっているんですが……。

 しかしそんな状況であっても、皆は目を覚ましたおれを見て安堵しているようだった。

 そのなかでクロアとセレスが心配そうに尋ねてくる。


「兄さん大丈夫?」

「ごしゅぢんさま、治りましたか?」

「ひとまずは大丈夫。治るのはもうちょっとかかるかな」

「はやく元気になってください」


 セレスはおれの頭をよしよしと撫でる。

 何を思ったのか眺めていたミーネまでよしよしと撫でてくる。


「父さんと母さんは仕事に行ってるよ。父さんはいつもだけど、今回は母さんも心配してた」

「そっかー、心配かけたかー」


 二人なら皆から詳しいことを聞いているだろうし、心配もするか。


「まあ今はこんなんだけど、一週間くらい安静にしていたら元気になるよ」


 ひとまずクロアとセレスを安心させる。


「さて、兄さんが無事目を覚まして安心できたことですし、ここはゆっくり休んでもらいましょう」


 そう言ってコルフィーがそれぞれ犬とヒヨコを抱えたクロアとセレスを連れて退出し、続いて猫を抱えてミーネが、それから他の皆は仕事に戻れとヴィルジオに追いだされた。

 残ったのはおれの介護当番中のヴィルジオ、少し状態を確認したいと言うリィ、それからテコでも動かないといった顔のアレサ、そしてシアだ。

 いや、他にも妖精たちやぬいぐるみ軍団、それからメタマルが残っている。

 邪魔なので連れて行って欲しかったな……。


「なあおい、目が覚めたならこいつに出てけっていってくれよー、態度でけーんだよこいつ」


 ピネが言うのはメタマルのことらしい。

 メタマルはおれが倒れたことで扱いがうやむやになって屋敷に滞在したままとなっており、本人(?)はもう住みつく気満々のようだ。

 メタマルはピネに反論する。


「おいらはちゃんと仕事してるゼ! 大活躍ダ! リィの姉御、そうだよナ!」

「まあそうだな。助かってる」


 どういうことかと尋ねると、メタマルは金属を摂取する特徴を活かして回廊魔法陣を正確に彫る道具として働いているようだ。


「ただぐーたらしているだけのお前らとは違うのヨ! 出てくのはお前らの方だゼ!」

「んだとコラー!」


 腹を立てたピネがメタマルに滑空からの蹴りを喰らわす。

 そして――


「うっぎゃー! 足がー!」


 シュッと殺虫剤噴かれた蚊みたいにぽてっと墜落した。

 これにいきり立ったのは他の妖精たちだ。


『やりやがったな!』


 今度はみんなでメタマルに流星蹴り。

 そして――


『うっぎゃー! 足がー!』


 蚊取り線香の煙が充満する部屋に飛びこんだ蚊の大群のように死屍累々。

 妖精たちは今日もアホだった。


    △◆▽


 ぬいぐるみたちに床でじたばたしている妖精たちを妖精帝国へ捨てに行ってもらい、それからおれは意識を失っている間、状況がどうなったかをシア、アレサ、リィ、ヴィルジオの四名から説明された。

 まずはヴァイロ共和国。

 首都オーレイでの出来事を受け、正式に錬成魔剣の放棄を決定。

 まあ放棄も何ももう作りようが無いのだが。

 オーレイでの騒動はおれが戦争を仕掛けた結果の出来事だが、これについてのお咎めは無いようだ。


「そういう訳にはいかないのでは?」

「そういう訳にはいかない訳にはいかないのだ。主殿――子供一人に戦争をしかけられ、結果的に負けた、というのはあまりにも外聞が悪すぎるのだよ。そこでヴァイロ側は誤魔化すことにした」

「誤魔化す?」

「主殿は善神の祝福があるだろう? それを引き合いに出してな、主殿の行動は聖女による超法規的活動――のようなもの、ということにしてお茶を濁したのだ。他の五カ国は主殿に賛同しておるし、ここでヴァイロが主殿に責任を問えばややこしいことになるからな」


 要はうやむやにした方が何かと都合がいいわけか。


「ヴァイロとてあのスライムを全面的に肯定していたわけではなかったようだぞ。ほれ、都市があんなことになっていたであろう? 要は首都を人質に取られたような状態だったのだ」

「あ、それはどうにもなりませんね……」

「だから尚のこと、戦争まで起こしてあのスライムを退治してくれた主殿を悪くするわけにはいかんのだ。偉い連中が出来ることがあれば何でも協力すると言っておったが……、どうだ、そもそもこの戦争に勝ったのは主殿だし、何か戦争賠償でも要求してみるか?」

「いやいやいや、そんなことしませんよ。ティアウルを取り返せればよかったんですから」

「ふふ、まあそうであろうな。ああそうそう、ティアの奴が持っていた斧槍だがな、あれはティアの所有物ということになった。まああれしか扱えん代物だし、じゃあティアごとよこせなどと言おうものなら第二回戦が始まるからな」


 ひとまずヴァイロに関してはこれで終わり、次に協力してくれた闘士たちについて説明してくれたのがアレサだ。


「闘士の方々は猊下の宣言に立ちあえたことをいたく喜び、それがすでに代え難い褒美であると感謝しておりました」

「む、無欲……、なのか?」


 とは言え、おれが教祖なんだからおれのために戦うのは当然――、なんてことは思えないので、なにかお礼をしたいところ。

 やっぱり『悪漢殺し』かなぁ……。

 手持ちの薬草から精製した薬草汁を使用すれば、おそらく10リットルくらいの量は精製できるはずだ。

 それを上級闘士九名それぞれに1リットルずつ分配。

 残りの1リットルは今回中核として動いたサーヴァスに提供するか。


「あと、倶楽部を隠れ蓑にしていた反スライム組織のドワーフたちはそのまま闘士として在籍するようです。なんでも体を鍛える喜びに目覚めたと」


 そうアレサが言うと、ヴィルジオが鼻で笑う。


「嘘くさい話だの。どうせ神酒目当てであろう」

「でしょうね、ぼくもそれが主な理由だと思います。量産できるようになればいいんでしょうが……、いや、それもあまり良くはありませんね。騒動が起きる気しかしない」


 そう呻いたところ、アレサが思い出したように言う。


「あ、そう言えば錬金術ギルドの……、覚えておられますか、聖都で会ったフィジクという派遣員、この方が言うには、錬金術ギルドは全面的に猊下に協力する方針をとるようです」

「また唐突な……、揉めているんじゃなかったのか……」

「なんでも猊下を敵視していたギルド長のファリバーンが引退し、息子が新ギルド長となったことで方針が変わったようです」


 なるほど、改革の結果というわけか。

 こうなると闘士倶楽部との関係が強化されて、結果的に『悪漢殺し』の量産体制がそう遠くない未来に整うのかもしれない。

 あと薬と言えば勇者たちに妙な薬を提供した野郎だが……、あれはイールと伯爵がどうにかしただろうし、今更おれが関わる必要もないだろう。

 他には……、んー、無いな。

 うん、無い無い。


「それから勇者委員会ですが、猊下の宣言にいたく感銘を受け、今後は当初の目的である『民衆の不安の解消』だけでなく、犠牲を伴う非人道的な取り組みの根絶を目的とする国際組織となるようです」

「それもまた唐突な……、でもそれって聖女とやることが被るのではないですか?」

「相互に協力して取り組むことになるのではないでしょうか。事実、まだ態勢の整わない勇者委員会に代わり、聖女が動いています」

「動く……?」

「六カ国が協議を行い、猊下の宣言は『レイヴァース法』として認められました。現在もこれに賛同する国・機関が増えており、これに伴い委員を通じて密告が舞いこんできているようです。しかし委員会はそれに対処するための実績がなく、尖兵となるべき勇者はまだそれを担えるほどの実力を持ち合わせておりません。しかしこの機を逃すとその取り組みをうやむや――被害者を片付けて無かったことにされてしまう可能性があるため、しばらくの間、聖都がこれを受け持ち、聖女を派遣して事に当たることになりました」


 これは……、聖女たちが忙殺されているのではないか……。

 次にティゼリアに会った時が恐いな。


「なるほど、わかりました。でもいざ勇者委員会が活動を始めたとして、勇者たちが聖女のように活躍できるか少し疑問ですね」

「そこは勇者たち次第ですが、おそらくはなんとかなるのではないかと思います。猊下の宣言に立ちあえたことは彼らにとって僥倖でした。現在勇者たちは猊下を自分たちの『王』と崇め、猊下のような勇者になるべく精進を重ねております」

「……?」


 アレサが何を言っているかよくわからない。

 まずおれは勇者じゃねえ。

 あとなんで勇者たちがおれを『王』と崇めるのかがわからない。

 勇者たちをなるべくあの場に立ちあわせようとしたのは、はったりとはこうやるのだと見せてやりたかっただけなのだ。

 薬が変なふうに効いてしまったのだろうか?

 ともかく、勇者たちの状況についてはあまり深くは知りたくないな。

 せめて元気になるまでは心安らかでいたいのだ。

 しかし、そんなささやかな願いを打ち砕くようにリィが言う。


「で、最後に世間の反応だ」

「……。やんわりとした表現でお願いします」

「なんだそりゃ? まあお前も予想はしてただろうが大騒ぎだ。つっても一般市民は凄い凄いと持て囃す程度だな、大陸規模だが。本当に大騒ぎなのは偉い立場にある連中だよ。各国、各貴族、お前とお近づきになろうって画策中らしいぜ」

「うわー……、凄く面倒くさいことになりそうな……」


 おれがげんなりして言うと、ヴィルジオは愉快そうに笑う。


「そう心配することもあるまい。面倒はこの国が引き受けてくれるだろうし、いざとなれば六カ国が黙っていない。それに影響力の強い冒険者ギルド、それに錬金術ギルドも圧力をかけるだろう。それになにより、今回のことで主殿の気質は広く知られるようになった。下手に手を出せば噛まれるどころでは済まないとどこも理解したであろう。それに主殿は闘士倶楽部という独自の勢力も保有しておることだしな」

「あれ保有してるわけじゃないんです」

「事実はどうあれ、だ。まああれだの、主殿がスナークを討滅できる存在であることを知った時、六カ国がどう関わったらいいものかとさんざん頭を悩まし、結果として落ち着いたところに各国も落ち着くのであろうよ」

「あれ、頭を悩ましたんですか?」

「もちろんだ。金、地位、名誉、懐柔の基本となるこの三つに主殿はそう興味がないだろう? どうすれば友好を結べるか、偉い連中が渋い顔を突き合わせてさんざん悩んだのだ」

「べつに普通に仲良くしてくれればいいんですけどね」

「そうはいかんよ、国だからな。で、結果から言うが、六カ国は主殿のメイド好きを利用して縁を結ぶことにしたのだ。各国でもメイドを誕生させようという唐突な計画が持ち上がり、特にベルガミア、メルナルディアはさらに直接的に人を送り込んだな」


 ベルガミアはまあいいのだが、メルナルディアはちょっと発想がおかしいと思う。

 リマルキス王の考えとは思えないので……、腹心になんかいるんだろう、おかしい発想する奴が。


「あとザッファーナだが、もともと妾がおったから特になにもせなんだ。そして残りの三カ国のうち、エクステラとヴァイロはメイドとなる少女を用意できなかったのだが、エクステラはリィ殿を頼り、ヴァイロは元大親方のクォルズとその娘であるティアウルを頼ることにしたようだ。聖都はまあ、従聖女という名目でアレサを送り込んできたの」


 と、このヴィルジオの言葉にアレサが反応する。


「あの、ヴィルジオ様? 私はそういった目論見の――」

「わかっておる。おぬしが主殿命なのは誰も疑わん。これは国がどう動いたかの話だ」

「……」


 アレサはまだちょっと不満そうだがひとまず黙った。


「そんな裏があったわけですか。でもそれってぼくに話してしまっていいんですか?」

「気を悪くしたか?」

「いえ、特には。目論見通りなのはちょっと癪ですが、それはここにいる皆には関係ありませんからね」

「うむ、だからもういいかと話したのだ。背景はどうあれ、この屋敷に居るメイドたちは主殿を大切に思っておる」

「ヴィルジオ様、私はメイドではないですが猊下のことは――」

「わかっておる。ちょっと待て。それは主殿もわかっておるから」

「むぅ……」


 アレサ、やっぱりまだ不満そうだが黙る。

 ちょっと膨れてる。


「ともかく、皆は主殿が大好きということじゃな。で、話は戻るのだが、各国も主殿のメイド好きに目をつけ、そこから縁を結ぼうとしてくることが予想される。各国がよりすぐりの美少女をメイドとして送り込もうとしてくるだろうが……、それは弾いてもよいな?」

「かまいませんよ。本当にメイドになりたいなら、いずれ開校するメイド学校に行ってもらった方がいいですからね」

「うむ、ならばよい。ひとまず報告はこれくらいかの」


 満足したようにヴィルジオは頷き、それから皆はそれぞれ他に話しておくことがあったか考え、そのなかでリィが何か思い出したらしく口を開く。


「あ、大したことじゃないけど一応知らせておくわ。ティアウルの親父が出直すってさ」


 おれがダウンしてたら話しようがないからな、そうなるのも当然か。

 でもおれが言うことはもう特にないんだよな……。

 逆にクォルズが言いたかったことは……、たぶんティアウルがおれのために死を覚悟して大工房へ行ったのを予想しての話だろうな。

 そりゃ何か言いたくもなるわな。

 娘をたぶらかしおって、とかそんな感じのお小言なのだろうが、ひとまずおれが回復まではお預けになるらしい。


「しかし、とんだ誕生日になりましたねー」


 ひとまず知らせておくべき話は終えたようで、あとは追々とシアがまとめるように言った。

 まったく、本当にとんだ誕生日になりやがった。


「ご主人さまが元気になったらちゃんと祝いましょうね。アレサさんの誕生日と合同で」

「合同……?」

「ご主人さまがこんなんですからね、この状況でお祝いなんて気が咎めまくりですから、アレサさんは四日後の誕生日会を辞退しようとしたんです。どうせご主人さまの誕生日会も元気になるまで延期ですから、じゃあ一緒にやってしまおうってことに淑――、でなくて、えー、皆さんと話し合って決まりました」

「そういうことか……。アレサさん、すいませんね」

「いえいえ、むしろ猊下と一緒で光栄です、はい」


 その言葉に偽りはないようで、アレサは嬉しそうであった。


    △◆▽


 第一和室で養生する日々。

 前とは違って仮面に恐れおののく必要は無くなったが、おれの容態が急変することも考慮してこれまで通り夜は希望者たちと一緒に就寝することになった。

 まあこれもあと一週間ほど、容態が回復するまでだ。

 と、思いきや、もしものことを考えこれからも第一和室で皆と就寝することが義務づけられた。

 そこまでしなくても大丈夫、などと迂闊に反論すると皆にめっちゃキレられそうで、おれは大人しく決定に従うことにした。

 四日ほど経過すると、ふらつきながらも自力で日常生活を送れるくらいまで回復したが、つきっきりのアレサと当番になっているメイドの誰かがそれはさせてくれず、おれは依然おんぶに抱っこの生活を送っていた。

 屋敷内の移動もでっかくなったバスカーに騎乗してである。

 まあ前回と同じなら、あと三日の辛抱だ。

 ただおれが体に不具合を抱えていることは知られてしまったので、これからも過保護な状態が続くのではないか、と予想される。

 みんな何かと気を使ってくれるのだ。

 早く元気になって普段はそう心配する必要がないと安心してもらいたいところである。

 ただそんな状況にあって、普段と変わらないのはミーネ。


「私もレディの仮面を凄くしたいの! あなたのみたいに!」

「いきなり部屋に飛びこんできて何を言っているのかねキミは」

「だって私はこそこそっと仮面を出さないといけないけど、あなたのは呼んだら来るじゃない。それを手にとって被るのは格好いいわ」

「いや、そう言われてもね、あれ勝手にそうなってるだけだから、しようとしてできるものじゃないよ?」

「したいー、したいー」


 ふむ、よほど仮面召喚からの装着が心を掴んだのか、ミーネはひさびさにわかりやすく駄々をこねる。


「あれを再現するのは難しいだろうなぁ……、おまえがずっと使っていれば、いずれは魔力が馴染んで魔化するかもよ? そしたら不思議な効果を宿す仮面になるかもしれない」

「……いつくらいに?」

「いつだろう?」

「……待てない」

「待てないかー」


 ならば……、そうだな。


「じゃあコルフィーに相談して魔装儀式を施してもらうか、リィに頼んで回廊魔法陣を利用した魔道具にしてもらうか、かな?」

「――!?」


 提案するとミーネはハッとした表情になり、それからぱぁーっと物凄く良い笑顔になった。


「二人にお願いすればいいのね!」


 言うやいなや、ミーネは部屋を飛びだしていく。

 なんだかコルフィーとリィに面倒を押しつけることになってしまったが、おれが下手に聖別するよりはまともな物になるはずだ。


※誤字を修正しました。

 2018/11/15

※さらに誤字を修正しました。

 ありがとうございます。

 2019/01/12

※誤字脱字、文章の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2019/02/11

※さらにさらに誤字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2020/01/07

※脱字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2021/02/22


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