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おれの名を呼ぶな!  作者: 古柴
4章 『裁縫少女と王都の怪人』編
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第305話 12歳(秋)…歓迎&お疲れさまパーティー

 聖女二人と屋敷へ戻る道すがら、実際にガンブレードを作りあげるため段取りをちょっと考えてみた。まず間違いなくおれだけでどうにかするのは無理。そもそも、はたしてこれが作りあげられる物なのかの判断すらも怪しいのだ。そこでまず王都にいるうちに鍛冶師のクォルズに相談する。それから魔導学的なことは実家に戻ってから母さんに相談してみることにした。

 屋敷に戻ると皆はパーティに向けての準備をしていた。

 コルフィー歓迎&お疲れさまパーティーの参加者は多い。

 まずレイヴァース家の関係者としておれ、シア、コルフィーの三人。

 次にこの屋敷の関係者が全員――ティアナ校長を始め、サリス、ティアウル、リビラ、シャンセル、ジェミナ、リオ、アエリス、ヴィルジオ、パイシェの十名。

 クェルアーク家の関係者、ミーネ、バートラン。

 聖女の二人、アレサにティゼリア。

 ウィストーク家の関係者であるヴュゼア、ルフィア、レグリント。

 最後に情報を国王に伝えてくれたミリー姉さんと、屋敷の防衛に参加してくれたシャフリーン。

 しめて二十二人!

 庭師になったデヴァスも一応含めると二十三人!

 なかなか賑やかなパーティーになりそうである。

 パーティーの準備はそのまま皆に任せることにして、お城から戻ったおれは仕事部屋にコルフィーを呼んでちょっとお話をすることにした。と言うのも、コルフィーは奴隷としてこの屋敷から引き離されていたため、この数日間にどんなことがあったのかまったくわからない状況だからである。

 まずは学園での事故からの、コルフィーが知り得ない皆の活動を順番に話して聞かせる。


「んあうぁ……、みなさんわたしのために……」

「うん、だからさ、パーティーのときにありがとうって言ってあげないとね」

「もちろんです。この感謝は服作りで返していきますね。わたしが出来ることはそれくらいですし」

「服の神から加護をもらったんだってね。加護持ちの作った服となればみんなも喜ぶ……のかな? まあおれの針仕事を手伝ってもらえるならみんなの服も早めに作れるだろうし」

「全力でお手伝いします。みなさんに恩を返さなければならないのは当然ですが、やはり一番は兄さんですから」

「いや、おれは……、そんなでもないぞ?」


 今回は皆に助けられたというのが大きい。

 おれや金銀だけではコルフィーを助けることは出来なかった。

 怪しいとは感じつつも企みを看破できず、コルフィーが連れられて行くのを黙って見ていることしか出来なかったかもしれない。

 実行されてから一週間ほどですべてが片付き、そして終わってしまう相手の計画に食い下がり、阻止できたのは皆の協力があってこそだ。

 助けられなかった場合、コルフィーがどうなっていたかは謎だが、どうして自分が狙われたかについてを引き続き話しておく。

 現在、エルトリアが抱える問題――魔導師カロラン・マグニータという存在、そして周辺国で発生している誘拐事件、そこに関わる片眼鏡の男について話すとコルフィーは驚いた。


「そんな大ごとに巻き込まれそうになっていたんですね、わたし……」

「ああ、助けられて本当によかった。それでその片眼鏡野郎なんだが……、どうだろう、少し落ち着いたし、なんとなくでも特徴とか思い出せたりしない?」

「すみません……、確か男の人で……、それで片眼鏡をしていた、くらいしか……」

「髪の色とかも?」

「すみません、それも……」

「んー……、そうか。わかった」


 髪の色すらも思い出せないというのは妙な話だが、これは自分の印象をぼやけさせる仕掛け――魔道具でも使っていたのだろうと推測する。そんな物があるのだろうか、と考えるまでもなく、今回おれはそういう物をおもいっきり使ったからな……。


「それでその人が不思議な物を見せてくれたんですが、そこから記憶が曖昧になって気づいたらオークションが終わったあとでした。すみません、ぼんやりながらもオークションで兄さんにひどいことを言ったのは覚えています。本当にすみません」

「いや、いいよ。まああのときはびっくりしたけど」

「うぅ、すみません……」


 しょぼくれるコルフィーに微笑みかけながら、おれは片眼鏡の男がコルフィーに見せたそれも魔道具だろうと考える。

 どうやらそいつは魔道具の扱いに長けているようだ。

 冒険者ギルド支店長のエドベッカは魔道具蒐集家だから、一度相談してみるのもいいかもしれない。

 ともかくそいつは『片眼鏡の男』ではなく、より本質に近い『魔道具使い』と便宜的に呼ぶことにする。

 この情報はティゼリアにも伝えた方がいいな。

 ひとまずお話はここまでにして、コルフィーには皆の手伝いに行ってもらう。

 一人になったおれはこれからのことを考えるべく、情報整理のために気になる事柄を紙に書き出していくことにした。



【最重要目標……名前を変える】

 1、導名でどうにかする。

   →名声値! こつこつ頑張る。でも魔王はかんべんな!


 2、アホ神の敵対者を捜し出した報酬で名前変更。

   →常時〈炯眼〉? 疲れる。現実的じゃない。見つかるか!



【お仕事】

 ○ミリー姉さんの指名依頼。シアとミーネの服。

  →コルフィーと頑張る。王都に居るうちに。


 △王様の指名依頼。魔導武器としてのガンブレードの製作。

  →まずクォルズに相談。帰ったら母さんに相談。


 △メイドたちに贈る服。

  →コルフィーと頑張る。実家で。春に戻ったら贈ろう。


 △ウサ子の服。

  →ひとまずサリスにどんな服がいいか聞く。仕事の合間に作る。


 ◎冒険の書、二作目。

  →おれが寝てる間に代わりに仕事してくれる妖精とかいねえの?


 △冒険の書、三作目。

  →来年の春。モデルにする迷宮都市への取材。


 △発明品の企画。

  →まずは冒険の書だとダリスもわかってるはず!



【不安要素】

 △なんか張りきりすぎると死ぬ問題。

  1、祝福を増やす。ひとまず王様の依頼で武具の神の祝福?

  2、恩恵制御の魔道具。ロールシャッハの発掘待ち。


 △悪神とか魔王とかそういう面倒なの。

  →さすがに目にする人すべてに〈炯眼〉ってのは……。

  →念のため屋敷のみんなはチェックしておこう。



【帰省の準備!】

 ◎コルフィーのことを手紙で家に伝える!

  →デヴァスに飛んでいって届けてもらえるよう頼む。


 □同行者?

  →ミーネ。たぶん付いてくる。父さん母さんは喜びそう。

  →アレサ。お仕事だから同行すると思われる。

  →バスカー。クロアとセレスへのプレゼント。

  →クマ兄弟。付いてくるのか? 森に返してみよう。


 ○みんなへのお土産!

  父さん……酒。

  母さん……帰ってからコルフィーと二人で服を作って贈ろうか?

  クロア……なんか男の子が喜びそうなもの! 武器とか?

  セレス……新しくぬいぐるみ作って動き出したのを持っていく?



 思いついた事をせっせと書き出し、重要度や期間的な問題を考慮しつつ優先順位の印を付けていく。

 すぐにやるべきことは、やはりコルフィーのことを手紙で家族に伝えることだろう。

 これは数日中にでもやるべきことだ。

 次に優先されるのは冒険の書二作目の製作。

 うかうかしてると冬が来てしまう。想定としては家に閉じこもる冬に楽しんでもらおうというものなので……、なんとか頑張ろう。この屋敷って精霊はいっぱいいるのにお仕事してくれる妖精はいないんだよなぁ……。

 ひとまず書き出した紙をしまい、おれは部屋を後にする。

 張りきってパーティーの準備を進めるみんなに混じり、今すぐに出来ることとして〈炯眼〉で妙な称号がついていたりしないかみんなをチェックする。

 幸い、いま屋敷にいる者たちに妙な称号のついている者はいなかったが、名前と第一称号しか確認出来なかった者が数名いた。

 ティゼリア、リオ、アエリス、ヴィルジオ、パイシェ、デヴァスの六名だ。

 パイシェとデヴァスはまあ置いといて、他の四名の情報開示がされていないことをちょっと不思議に思う。

 これまで好感度とか信頼度とか適当に考えていたが、もしかしたらもう少し複雑なのかもしれない。

 四人とは仲良くやれていると思うし、おれへの好意や信頼が欠けているとも思えないからだ。うぬぼれだろうか? まあこれからも仲良くしていけばいい話だし、ひとまず悪神の呪いを受けていないことがわかれば充分だ。

 それから皆で準備を進め、やがてヴュゼアにルフィア、久しぶりの再会となるレグリントが到着し、夕方になるとバートラン、それから馬車でミリー姉さんとシャフリーンが到着。全員がそろったところでいよいよコルフィーの歓迎&お疲れさまパーティーの開始となる。

 食堂ではちょっと手狭になってしまうため、会場にした広間に皆で集まり、まずはおれの挨拶、それから隣に並ぶコルフィーの挨拶となる。


「えー、みなさまの協力のおかげでコルフィーを助け、どさくさにまぎれて家族に迎え入れることができました。助けてくれたみなさまには心からの感謝を。今夜の宴はコルフィーを歓迎しての、そして手を貸してくれたみなさんへの感謝の印としての、そしてそして、お祭りを楽しめなかったかわりという催しです。どうぞ楽しんでください」


 おれの適当な挨拶に続き、コルフィーが挨拶となる。

 しかし――


「あ、えっと……、えっと……」


 そう呟いたきり、言葉を詰まらせてうつむいてぐしぐしと手で目をぬぐい始める。

 自分を助けてくれた人たちを前に感極まってしまったか、泣けてしまって仕方ないらしい。

 これはひとまずパーティーを始めてしまって、落ち着いたところを見計らってやり直した方がいいかな、と思ったが――


「……み、みなざん、あ、ありがどうごじゃいまじだ……」


 なんとか感謝を言葉にする。

 もうそれでコルフィーは限界でいよいよ泣き声をあげ始めてしまったが、皆はそれを微笑ましく見守っている。

 おれは静かにジャムジュースの入ったコップを掲げ、言う。


「ではでは、みなさま――、乾杯」

『かんぱーい!』


 皆は声を揃えて言い、そして宴は始まった。


※誤字と文章の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2019/02/01

※文章の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2019/02/07

※辻褄が合わない部分を修正をしました。

 ありがとうございます。

 2021/04/19


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