とある神社ーずにて絵馬が怖かった件
たまに、出た先の観光地で見つけたことなど。
まず、海岸近くにある小さな神社を詣でてから、少し散策路を歩き、もう少し大きな神社まで。
境内でお参りしてから少しフラフラしていた時、相方が近づいてきてこう言った。
「何となく奉納されてる絵馬見ていたらさ、『一志さんが早く回復されますように』というのがあって、それがさ、1人だけじゃなくて何枚も、別の人の名前で同じような絵馬が奉納されてたんだよ。『一志さんが良くなりますように』って。
さっき寄った小さい神社にも『一志さんが』ってのが何枚かあって、へーって思ってたらこっちの神社にも何枚もあってさ、こんなに思われてる人がいるんだ、と思ったら何だかじんときたよ」
その言葉に興味を抱き、自分も絵馬を見に行ってみたら、確かに
「一志さんがすぐに回復されますようにお祈りします ●●××」
「一志さんのお体が早くよくなりますように △△○○」
など、奉納者の名前がちゃんと書かれた絵馬が全体の1割から2割近い枚数、奉納されていた。
もちろん奉納者はそれぞれ名前が違うし、字体も違う。
つまり、1人ひとり別々に、同じ人に対して回復祈願されていた、ということですね。
いつもはスレているオイラもけっこう感動したその光景、しかし、ここでちょっと気づいたことが。
少し離れた位置に、このような絵馬があった。
「私の知り合いが早く、やっていることが詐欺だと気づいて目覚めますように。××◇◇」
へええ、こんなことまで祈っている人がいるのだな、他人のために何と親切な。
と思ったらすぐ脇の絵馬にはこんな文面。
「知り合いの人が詐欺を働いているのに早く気づきますように。そして奥さんは嘘をついてばかりなので早く目覚めて悔い改めますように ○○◎◎」
うん? 何だか限りない違和感を覚える。なぜか、似ている。
妙に几帳面な文面。縦書き横書きは異なれども、どれもある程度年齢を感じさせる文字。
そしてどれも、最後に奉納者の実名がちゃんと書かれている。
オイラは奉納絵馬を隅からしっかり読み改めた。
すると、ついにこんなものを見つけたのです。
「詐欺をしている人がいるので、いつか悔い改めますように。
それから、一志さんが一日も早く回復されますように ◇◇◎◎」
おおおお!!
点が、線にっっっ!!!
相方に早速この絵馬を紹介すると、あぜんとしている。
「な、何なんだこの一団はっ!?」
その後すぐ、相方はこんなものも見つけ出した。
「田中◎二さんが、自分のしている詐欺に早く気づきますように。
奥さんの●●子さんが嘘ばかりつくので早く目覚めますように」
ついに、名指し???
帰りがけに、二人で色々と推察するに、
たぶん、この書いた人びとは高齢の集団、しかも同じ施設居住またはデイサービス利用者で、
経営者田中夫婦に年金をだまし取られていたのに、つい最近気づいたのでは??
そして、一番たくさん年金をだましとられた一志さんが、ショックで寝込んでしまったのに心を痛めてみんなして近所の神社に絵馬を奉納しつつ、
第三者がそれを見つけて、一刻も早くしかるべき場所に通報してほしい、と願っているのでは……?
相方が嬉しそうに言った。
「来月くらいに、またこの神社に来てどうなったか追跡調査しよう!」
うん、気が向いたらね。
相方は絵馬を買って「その後どうなりましたか?」と書いて奉納したいと。
今に罰があたるだろうな、オイラたち。
見かけたばかりの出来事でした。
人間とは、かなり、深いです。
おしまい