闇の力と相性
勝った……勝ったぞ。
異世界転生したわりにはめちゃめちゃ辛勝だが、負けるよりはずっといい。けど、ほっとしている場合じゃない。
すぐ近くでは、まだリーゼとルキナが激戦を繰り広げているんだ。
「……はぁ、はぁ……」
すぐに参戦したいところだが、休憩がほしい。けどそれ以上に、この凍ったベンジャミンがすぐに動き出さないかという懸念が残る。もう一度氷の魔法で凍結を施す。万が一にでも復活はさせないように厳重に氷の魔法を浴びせる。
「これで、少しは大丈夫だろ」
まさか死んではいないだろう。それはそれで嫌なものだが、再び戦う羽目になることのほうが避けたい。大体こういうのは、氷を砕いて復活する流れだからな。大きく息を吐いた後、戦闘を繰り広げるリーゼとルキナを見比べる。
リーゼも明らかに力で押されているが、ルキナを助けるべきだと判断する。あまりにもルキナの魔法と相性が悪すぎる。だが俺の氷なら……。
「ルキナッ! 俺が援護するっ!」
「倒したんだね。さすが私の使い魔」
「ははっ、お褒めに預かり光栄です。さぁ、俺の魔法を喰らいやがれ」
「あんな軟弱そうな奴にやられたって?」
驚きを隠せないヴァネッサだが、思考の切り替えは早かった。すぐに俺にも注意を払い、魔力を放出する。
「赤い泡……」
撃ち出した氷の魔法に対して、ヴァネッサの周りから赤い球が無数に出現した。その大きさはせいぜい拳程度のものだ。とても盾になろうものとは思えない。だが、無数に生まれた球が融合するように合わさると、それは大きな光の球となる。
「く、そのままいけぇ」
放った魔法をもともとコントロールすることもできないが、そのまま得体の知れないものに向けて腕に力を込める。このままヴァネッサも凍り付けばいいのだが……。
俺の魔法は、赤い球が受け止めると、その球が凍り付く。つまりはヴァネッサ本体には届かなかったということだ。
「くそっ」
「くそはこっちのセリフだわ。本来これは盾なんかに使うものではないんだからね。せっかく出したんだから、魔力の無駄遣いをさせないでほしいわね」
言葉通りまだまだ余裕そうな敵にこっちは焦りを感じるばかりだ。せっかく魔法を使えるようになったといってもチートには程遠い。しかも、俺自身はもう体力の限界だ。何とかルキナにメインで頑張ってもらうしかない。
そんな思いが通じたのか。ルキナの奇襲がここで光る。文字通り、視界に入らないくらいの上空から、ルキナが特大の雷を落とす。
「さすがにこれは効いたんじゃない?」
雷の閃光で、、目の前は真っ白に覆われる。しかし、回復した視界の先には、ヴァネッサが平然と君臨していた。
「だーかーらー、あんたの雷は私には効かないんだって」
ヴァネッサの周りにはやはりうすい膜が覆われており、雷を弾き返していた。まさに鉄壁のシールドと言わんばかりに、泡であるはずの膜にて、バチバチと、霧散した雷の音を奏でるだけだった。
「でも1対2なら」
「……はぁ、そろそろ起きな。ベンジャミン」
「……っ!」
ルキナの瞳が見開かれる。ヴァネッサの言葉に俺もすぐさま反応した。
「ラルク君、伏せてっ!」
ルキナの剣から放出された雷が、ギリギリ俺の頭頂部をかすめる。腰を低く下げなければ当たっていただろう。その要因は、視認するより早く予測する。
「まさか……」
「あれくらいで、俺をやったと思ったか!」
おいおい、フラグを綺麗に折ったってのに復活しやがった。けど、またこいつの相手は
正直しんどいぞ。けど、やるしかない……。ルキナにはやはりヴァネッサを任せて……いや……。
「ルキナ。頼む。こいつ……代わってくれ」
「は? 何を言って、私はこの女が……あ、なるほど、そういうこと……」
皆まで言わずともルキナも理解する。ルキナの雷を容易く受け止めてしまうヴァレットをそのままやるのでなく、泡なら凍らせられる俺がヴァネッサの相手をしたほうがいいのは明白だ。
「ふざけるな。あのガキは俺が……」
ベンジャミンを行く手をルキナが阻む。雷の猛攻。そして、直接剣で斬り付けるところ、寸でのところでベンジャミンが血の刃で弾き返す。
「残念だけど、私もあの女に負けてるって思われるのは尺なんだよね。でも、確実に勝つためなら仕方ない。今度は私に付き合ってもらうよ」
「……ガキ相手なのは変わらん。すぐにどちらも殺してやろう」
単調な氷の魔法。それでもこれしか今できることはないんだ。
種が割れてるものの、ヴァネッサはと特別何かするわけもなく、俺の魔法攻撃をかわし続けている。
「氷の魔法だと……厄介なものを……」
時折、泡を放出するが、俺の魔法ですべて凍り付いてしまう。赤い泡、青い泡など色味の違いはが分かる。何か特性があるのかもしれないが、今は気にしている暇はない。
魔法を使った反動か、体力の消耗が激しい。
いったいいつまで使えるのかわからないんだ。さっさとあたってくれ。
「くそっ……」
泡を出しても出しても凍らせていくため、ヴァネッサの苦渋に満ちた表情を浮かべていた。自身の周りに出した泡は確かにヴァネッサの身を防いではくれていたが、凍らされた泡はそのまま空間に漂ったままである。つまり、ヴァネッサの逃げ道を障害物となってしまっていた。
「これで終わりだ」




