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魔法と反撃

「ちっ……」


 ヴァレットが大きく舌を打つ。厄介な相手だと分かっていたからこそ、泡でできた牢獄に閉じ込めていたのだろう。それが、解放されてしまった。

 フラストレーションも溜まったルキナは、それを払いのけるようにして腕を振るう。雷の魔力は十二分に蓄えており、戦闘態勢は万全だ。


「さて、私の相手は誰がするの?」


 見下すように、見下ろすように。浮き上がったルキナは魔王の娘たる片鱗を見せる。俺なんかはそれだけで服従してしまいそうになるが、今回の相手はそう容易くないようだ。

 こちらが優勢になったことに焦りはなく、ただただ面倒だとぼやく程度だ。


「脱出されてしまったか。お前の泡もたいしたことないようだな」

「黙りなさい。あんたから消してもいいのよ」

「ふ……」


 ヴァレットの横目による睨みを、ベンジャミンは涼しい顔で受け流す。こいつらにとってはこれくらい平常ってことだろう。


「特にリクエストがないんなら、こっちから行っていくよ」


 そう言って、ルキナが頭を下にして、笑みを浮かべながらも急降下する。さながら落雷のようだ。目標はやはり、自分を閉じ込めたヴァレットに戦いを仕掛けた。

 ルキナが腕を伸ばして雷を飛ばすかと思いきや、宙を舞って一気に間を詰める。雷を飛ばすのではなくそのまま瞬時に握った剣を振りぬいて、ヴァレットを斬り裂こうという魂胆だった。


「くっ……」


 ヴァレットは苦渋に満ちた顔つきで回避に努める。俺は遅れて察した。雷だとヴァレットの泡で防がれてしまう。だから別の攻撃手段をルキナは選び、事実それは効果的だったのだろう。だがそれでも、あの速度での滑空からの攻撃を、かわし切ったヴァレットの身のこなしも只者ではなかった。


「外したか」

「外したんじゃない。私が見切ったのよ」

「……それで?」


 ヴァレットが見切ったと吠えた直後、ヴァレットの身を包む黒衣が切り裂かれる。右の二の腕、太腿、ふくらはぎと白い肌を見せる。傷を負わすには届いていないが、かわし切ったとは言えない不格好な姿と言えた。それでもヴァレットは怯むことなく返す。


「えぇ、おかげで動きやすくなったわ」


 服を裂いて足元を露出させる。膝まで露になると少し色っぽさが増す。が、俺にのんびり鑑賞する間はなかった。忘れたわけじゃない。


「さて、続きといこうか」

「……できれば勘弁願いたいけどな」


 少しだけ冷静になると、勝ち目が果たしてあるのかが頭を過ぎる。だが、ソニアちゃんを狙ったクソ野郎だ。怒りの感情は充分に有している。魔法が使えるとなると、やるしかないだろう。


 ルキナがヴァレット、俺がベンジャミン、リーゼがガブリエルと対立する。


「来いっ!」

「ちっ、氷を扱えたくらいで勝てると思うなぁ!」


 勝てるじゃない。勝つしかないんだ。そう自分を奮い立たせて突っ込む。目の間に迫るベンジャミンに狙いを定めて腕を伸ばす。が、動きの速い標的は、左右にフェイントを仕掛けながら接近する。

 く、これじゃ狙いが定まらない。


「死ねっ!」


 殺意を孕む言葉。同時に、ベンジャミンの凶刃が我が身を削った。


「つぁっ!!」


 一瞬、怯むようにして距離を於くが、ベンジャミンの身のこなしのほうが数段上だ。俺の回避先を予測されて、ベンジャミンは血で象った赤い刀剣が腕を裂いた。

 斬られた。熱い。痛い。

 けど、今のうちに……。


 戦闘経験などほとんどない俺だが、漫画で良く目にしていた肉を切らせて骨を断つというシーンを思い描く。痛みをこらえて、血を流しながらも腕を構える。ほとんどゼロ距離の位置で、血の剣を振り抜いたベンジャミンに向けて、氷の一撃を放つ。


「喰らえっ!」


 この距離なら……どうだっ!


「そんなトロい攻撃なんぞ喰らうか」

「なっ!」


 消えたように映るベンジャミンの姿。見失った俺は背中から再び攻撃による衝撃をまともに受けてしまう。


「がはっ! くそっ!」

「お前、戦闘経験がてんでないだろう。攻撃の構え、タイミングも測れていない。おまけにガードも脆い。勝負の駆け引きってものを分かっちゃいない雑魚だ」

「ちっくしょ……」


 倒れこんだ身をすぐに起き上がらせて、ベンジャミンを確認する。が、奴は俺の視界の外れに現れる。


「何より俺の動きについてこれていない。話にならんな」


 俺の背後で悠々と君臨しているのだろう。得意げに、ついでに俺を見下しているのが背中越しに伝わってきた。


「だったらまずはその動きを封じてやるよ」

「っ……」


 ベンジャミンに向けることをやめて、俺は地面に狙いを定めて魔法を放つ。余裕のあるベンジャミンが、驚きの表情を浮かべる。瞬時にベンジャミンの足元を凍らせていく。


「これならどうだっ」


 氷のレーザーから逃げるようにして、ベンジャミンが離脱する。逃がすまいと、俺はベンジャミンの跡を辿って、動きを封じていく。


「仕方ない。攻めるか」


 切り替えたベンジャミンが俺と向き合う。真向から衝突するつもりだ。負けないとばかりに、右腕に力を入れて、威力を高める。凍らせさえすれば俺の勝ちだ。


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