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6:転生と魔法と闇の教団

 二人の会話についていけていない俺はすぐさま尋ねる。


「一体何の話だよ?」

「ルガンの生態系を考えると、あんなに群れを為しているのはおかしいのよ。遭遇してもせいぜい二匹か三匹……何かこの森で起こっているのは間違いないわね」

「それに、仮にあれだけの数が集まっていれば普通は頭がいるはず」

「頭?」


 ルキナの指摘に、俺はただ言葉を繰り返すだけになってしまう。


「フェンルガンだよ。もともとルガンたちは組織を構成する珍しい魔物なの。その頭がフェンルガン。群れを作っても、普通はチームに分かれて行動するから、遭遇したときはリーゼの言う通り少数が当たり前なの。でも、さっきのは明らかに組織も何もないただの集まりだった。つまり……」

「本来とは違う行動を取っているルガンたちもおかしいし、ボスであるフェンルガンがいないのはもっとおかしい。そういうわけだな」

「そういうこと」


 ようやく俺も納得できてすっきりした。ルキナも嬉しそうに同意を重ねる。


「あの……お父さんは……」


 そこで、ソニアちゃんが唇を震わせながら見上げていた。俺たちの不穏な空気で心配になってしまったのだろう。重要なのはルガンたちではない。帰って来なくなったソニアちゃんのお父さんたちだ。


「大丈夫だ。俺たちに任せてくれ。だろ?」

「えぇ。何も心配することないわ」

「必ず助けるからね」


 俺には根拠のない強がりだが、ソニアちゃんを見ていると不安になるようなことは言えなかった。内心俺自身が大丈夫なのかと不安だが、虚栄を張るしかない。俺の問い掛けに、リーゼもルキナも即座に同調する。俺以上に心配ないと自信が現れていた。おかげで俺も腹をくくれる。


「それで、このまま奥に進めばいいのか?」

「ただ闇雲に進んでも仕方ないから、ルガンたちの住処を目指すの」

「何処か分かるのか?」

「ルガンたちは集団であること、昼よりかは夜に目が効くことから、暗がりを住処にする習性があるんだ。つまり……」

「……洞窟のような穴蔵か」

「えぇ。あくまで可能性の話だけど。細かな位置はルガンたちの痕跡から探すしかないわね」

「す、凄いです。まるでお父さんたちみたいです」


具体的なこれからの動き方を俺たちが話し合っていると、ソニアちゃんが感嘆な声を漏らす。目を見開き小さな手を顔の前で握っていた。


「お父さん?」


 俺がオウム返しのように尋ねると、ソニアちゃんは天使の笑顔で答えてくれた。


「はい。お父さんもモンスターを討伐する時はお姉ちゃんたちみたいに次々と対策を考えていました」

「お父さんも相当の熟練者みたいだね」


 感心するようにルキナが反応すると、ソニアちゃんはさらにぱぁっと表情を輝かせた。


「はい」

「そのお父さんたちが帰らなくなったのよ。油断しないでよ」

「うん」


リーゼが冷静に油断しないように注意を促す。気を引き締めねばならないという空気が立ち込める。俺は不安でいっぱいだ。ちゃんと生きてられるだろうか。


ソニアちゃんも勇ましくついて来たくらいだ。まさかここから帰ろうなんて思えるはずもない。俺も頑張らないと。


ルガンたちの痕跡を探しながら歩き続ける。比較的新しいものより、古いもののほうが普段の習慣化された動きを追えるとのことだが、それは意外にも早く見つかる。もともと集団でまとまった動きを取っていたのなら、痕跡も見つけることは容易だった。


 モンスターの食物連鎖を考えたとき、もしもルガンが捕食される側だったならルガンたちも痕跡を消していただろうが、此処では真逆のようだ。むしろ、自分たちの縄張りとして、もしくは逸れた仲間を誘導する道筋として堂々とした痕跡だった。


 その跡を辿ってみると、奥が見えない洞穴を見つける事が出来た。


「まさかこれが……」

「ルガンたちの巣穴……」

「おそらく元だけどね」


 本来此処を根城にしていたルガンたちは、何故か外に彷徨うようになったのだろうか。

 洞窟の入り口は大きく黒い空洞だった。まだルガンたちが残っている可能性は十分高い。いや、下手すればそれより恐ろしいのが待ち構えているかもしれない。この洞窟自体がモンスターの大きく開けた口に思えてならなかった。


「いつまでも此処にいても仕方ないわ。早く入るわよ」

「そうだね。もしかしたらソニアちゃんのお父さんたちもこの中にいるかもしれないし」

「虎穴に入らずんば虎子を得ずってやつだな……って何で俺が先頭にっ!?」


 いつの間にか後ろに回ったリーゼに背中を押されて、俺が一番前を歩いていた。


「こういうのは普通男が一番前でしょ」

「えぇ?」


 いや、さっきまで先々進んでいたのは貴方ですよ。


「ラルクくん、ここは何も聞かずにお願い」

「う、う~ん……」


 ルキナもそう言って手を合わせる始末だ。一体何があると言うんだ。二人が後ろに下がってしまうと、何かこの奥にいるのかとかなり不安になてしまうのだが。けど、可憐な女の子二人に頼まれると、男ととしては断りにくい。


「せ、せめて暗くて見えないから、リーゼの炎でも何でもいいから照らしてくれよ」

「それくらいなら別に……はい」

「ま、まぁこれなら……」


 一応奥が少し明るくなる。前方に何かいるかくらいは確認できそうだ。ルガンたちはすでにいなくなっていることを願いつつ、奥へと進んだ。


「もしかして二人って暗いの苦手?」

「……何か言った?」

「……いえ何も」


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