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5:ギルドと依頼Ⅹ

 ルガンとかいう狼は、リーゼとルキナに任せるしかない。その代わり、俺はがソニアちゃんを保護しないと。混戦となる渦中から距離をおき、二人の邪魔にならないように俺は身を小さくさせた。


「リーゼ、無茶な暴発はダメだからね」

「分かってるわよ。むしろルキナのほうが心配なんだけど」

「自分の戦う場所がどういう場所かよく考えろって前に教えてもらったもん」

「それもそうね」


 実に短いやり取りだ。それでも最低限の確認を終えると、ルガンの大群は一斉に牙を向ける。リーゼが白銀の剣、”エクスフェルド”を構え、ルキナは黒剣の”トニトルス”で威嚇する。だが数に物を言わせているかのように、ルガンたちに退く様子は見られなかった。

 大きく口を開き、鋭い牙を見せる。眼を光らせて見据える様は、まさに獲物を品定めしているそれだった。


「来るわよ」


 先頭にいるルガンの動きを、リーゼが予測する。ルキナに呼びかけた頃にはルガンの一番手は既に跳びあがっていた。

いや、それよりも速く二人は斬り込む。ルガンの牙を躱しながら、すれ違いざまに剣を振り抜いていた。一筋の鮮血が飛ぶ。斬り込まれた二匹のルガンは、痛みに震える声を吠えながら勢いよく倒れ込んだ。そんな光景を二人は見向きもしない。そしてそれはルガンの群れも同様だった。先頭を走った仲間には目もくれず、問答無用で突き進む。


 だが、ルガンの動きをリーゼもルキナも遥かに上回る。数による暴力をぶつけるルガンの群れだが、あまり意味を為していない。華麗にとも取れる優雅な動きでルガンたちの牙と爪を躱す。その小さな隙を狙い白銀の剣を振るうリーゼ。切り込み先から僅かに炎が零れる。

 戦っているのは深い森の中だ。間違っても炎を撃ち込むわけにはいかない。リーゼはその炎の剣の真髄を無理矢理抑え込んでいるのが見て取れる。

 当然ルキナも一緒だ。雷が魔力の源であり、ルキナの黒剣も小さな電光が刃先で小さく弾く。何かの拍子で雷の火花で緑の木々に火が生じるとも限らない。

 高速で動き回るルガンの群れを相手にしても、勇者の娘と魔王の娘にとっては小さな障壁でしかないようだった。


 恐れることを知らなかったルガンたちも、仲間たちが次々にやられる光景を遅れて確認したようだ。これ以上は無駄だと悟ったのか。倒れた仲間を置き去りにして唸りながら後退してしまう。そのうち、森の奥深くへとその姿を消してしまった。


「良かった。何とか退いてくれた」


 唯一俺の仕事だったソニアを保護する役目も無事終えることが出来たようだ。俺の腕の中でうずくまりながら小さく震えるソニアに向かって安全であることを告げた。


「えと……ソニアちゃん、もう大丈夫だよ」

「う……ぅ……ほ、ほんと……?

「あぁ、二人が追っ払ってくれたよ」

「うん。もう安心だよ」


 手にした黒剣を消したように収納したルキナが優しく顔を向ける。とても先ほどまでルガンを圧倒したとは思えない優しい表情である。魔王の娘であることを忘れそうだ。


「あ、あの……ありがと……」

「どういたしまして」


 よっぽど怖かったのか。何とかお礼を口にしながら俺の腕から離れて立ち上がるとする。まだそのままでも俺は良かったんだぞ。

 俺とルキナが同時に応えていると、リーゼが声を掛ける。


「それより、何でここにいるの?」


 無事であることを確認すると、何故ソニアちゃんがこんなところにいるのか、リーゼが(いさ)めるような口調で指摘する。


 ソニアちゃんはバツが悪そうに下を向いてしまった。


「そ、その……私もお父さんを助けたくて……」

「まぁ、そんなことだろうとは思うけど……」


リーゼも叱りたいわけではない。それでも一緒に行くとなると危険が付きまとう。少なくともソニアちゃんが考えている以上の危険だと思う。


「でも、ソニアちゃんだけ帰らせることもできないよ?」

「そうね」


 ルキナの冷静な一言にリーゼが同意した。ここはもう深い森の奥だ。いつまたルガンの群れに襲われるとも限らない。


「それじゃ仕方ないな。一緒にお父さんを助けよう」

「ほんと?」

「あぁ」


 俺の提案にソニアちゃんは顔を上げて破顔した。パァッと明るくなった表情は、見ているこっちも嬉しくさせる。そこに、リーゼの怒声が飛んできた。


「ち、ちょっと、何勝手に決めてるのよ」

「う……。けどさ、ソニアちゃん一人だけ帰らせるわけにはいかないだろ。かといって、またわざわざ戻るのは効率が悪い。時間もないし。それにここで二手に別れるなんてのは論外だろう。ルガンの群れがいるんだから、戦力は固めないいけない。俺にだってそれくらい分かるぞ」

「む、むぅ〜」


 俺が正論を吐いたせいか、リーゼは目を釣り上げながら唸り声をあげた。


「リーゼ、ラルク君の言う通りだよ。ここは私達と一緒に連れて行ってあげたほうが安全だよ」

「それは分かってる。でもルキナ。あんたも気が付いてるでしょ。既にこの森がおかしいってことに」

「え?」

「もちろん。けどだからこそだよ。違和感があるからこそ、一緒のほうがいいと私は思うよ」

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