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3:学生寮とメイドさんⅡ

 さっそく入ってみると、大きなエントランスがあった。広々とした空間に、高級そうな椅子が並んであったり、観葉植物があったりと、本当にホテルのようである。何か奥には売店っぽいのもある。


 そのまま奥まで進むと受付があった。驚くべきは、瓜二つの女性が二人、典型的なメイド服を着て仕事をしていた。

うおー、間違いなく本物だ。メイド喫茶にいるような、なんちゃってメイドではない。ご主人様に傅く生粋のメイドさんだ。


「あら?」


 向こうも気付いたらしく、ロングで金髪というより、オレンジ色の髪をしたメイドさんがパンっと 手を叩くと、嬉しそうに微笑んだ。


「おかえりなさい。リーゼちゃん。ルキナちゃん」

「おかえりなさい」


 その後に続くように、隣のショートで、オレンジの髪をしたメイドさんが出迎える。ロングの人が満面なのに比べると、ショートの人はにっこりと言った感じである。

そんな麗しいメイドさんからのおかえりなさい。ご主人様はさすがに添えられてなかったが、俺はついに叶った感動で涙が出そうだ。


「ただいま」


元気良く返事するルキナ。暖かく迎えてくれたメイドさんたちだが、二人の格好を見て驚く。


「これまた随分と派手なファッションね」

「そんなわけないですよ」


 と、リーゼがやんわりと突っ込む。二人とも知り合いなのか。いや、寮のメイドさんだったらそれもそうか。


「また喧嘩したの?」

「今回はヒューイ君たちとだけどね」


 もう一人のショートさんからも質問されたので、ルキナが答える。


「元気なのはいいけど、またアドゥルス先生に怒られるんじゃない?」

「黙っといてね」

「はいはい」


 そんな会話が交わされると、ロングの人が俺に気付いて声を掛けてきた。


「ところで、そ、そちらの泣いてる方は?」

「きょ、今日からアカデミーに入ることになりましたラルク・レッド・グリーヴスと言います。よ、よろしくお願いします」


 ルキナが使い魔だと紹介する前に、俺は自ら挨拶をこなす。あまり慣れていない所業だが、使い魔扱いされるより早くに名乗ってしまおうと思った。もうラルクという名前も完璧に覚えたと言える。


「じゃああなたが……」

「連絡は学長さんとアドゥルス先生から貰ってますよ。さっそく部屋に行ってみます?」

「えっと……」


どうしようかな。これから此処に住むことになるみたいだし、見ておきたい気持ちはある。けど今見に行っていいものか。ルキナとリーゼへと向き直した。


「いいんじゃない? 私達も着替えるから時間かかるし」

「そもそもラルク君を案内するために来たんだしね」


 二人の了承も取れたし、ならばお願いするとしよう。


「あ、じゃあ願いします」

「はいは〜い。了解しました。あ、私はここの寮のメイドをやってますセラ・ファルムと言います。よろしく。で、こっちが妹の……」

「リタ・ファルムと言います。同じく私もここのメイドをしておりますので、よろしくお願いします」

「お、お願いします」


 ぺこりと行儀良くお辞儀するものだから、つい釣られてしまう。全く同じ顔の二人だから多分双子なんだろう。髪が長い方がセラさんで、短い方がリタさんだな。


「それじゃあ案内人さんを呼ぶわね」

「案内人?」


 机にあったベルを手にすると、セラさんはチリンチリンと鳴らす。その音に反応したようで、奥の方から誰かが出てきた。


「い、いま行きます」


 慌てて騒がしく出てきたのはまたもやメイドの格好をした女の子だった。リタさん、セラさんがお姉さんと言う雰囲気であるのに比べると、幼い印象を受ける。まぁ隣にいるルキナやリーゼと変わらないくらいか、小さいくらいかな。



「は、はじめまして。チェルシーって言います」


 開口一番に女の子が名乗る。内側に巻いている髪が燃えているように赤い。髪に掛かるくらいの長さだ。ついでに透き通るような白い肌のせいか、今は照れているようで顔も同じく林檎のように真っ赤だった。俺も習って名乗るが、ロリコン受けしそうだなとこっそり考えてしまう。いや、俺はロリコンではないぞ。ロリも好きってだけだ。

 挨拶が終わると、この娘とも知り合いのようでルキナが声を掛ける。


「久しぶりチェルシー」

「あ、ルキナちゃん久しぶり。凄いボロボロの格好だけど、またリーゼちゃんと喧嘩したの?」

「違う違う。ヒューイ君たちと模擬戦しただけだよ」

「それ絶対模擬戦じゃないでしょ。いいな。私なんてすぐメドレーヌさんに怒られるのに。聞いてよ。この前もさぁ……」


女子特有の話し込みが始まりそうになった時、セラさんからストップが掛かる。


「はいそこまで。チェルシーちゃん。おしゃべりも良いけど、ちゃんと仕事しないとまた寮長に言いつけちゃうぞ」


語尾にハートマークでもつきそうなくらい、凄く可愛い笑顔でセラさんさんが人差し指を立てる。けど、告げ口されるチェルシーにとっては畏怖の対象だったようだ。


「あわわ……。さ、早く行くよ皆」

「チェルシーちゃん?」

「うぅ。ラルク様、どうぞこちらでございます……」

「あ、うん」


今のやり取りで分かる。このチェルシーって娘、さては半人前だな。メイドというのはご主人様のために傅くものなのだ。常に笑顔で、常にご主人様のことを考え、努力を怠らず、それでも優雅に振る舞わなければならない。

チェルシーはメイドであってメイドに及ばず。まだ会ったことないが、寮長とやらに存分に鍛えて貰うがいい。


「ふっふっふ」

「な、何急に笑い出してんの? 気持ち悪いんだけど」

「……っ」


メイドに対する持論を考察していると、リーゼから痛い指摘を受けてしまう。まさか異世界転生した上で同じ扱いを受けてしまうとは辛い。


「いや、何でもない」


取り繕う俺に、チェルシーが声を掛けてきた。


「さ、ラルク様。こっちですよ」

「あ、ぅ、うん」


心の底からの満面な笑顔だ。その可愛さのあまり、俺はチェルシーに手を引かれて、抵抗もなく奥へと進む。

な、中々やるなチェルシーちゃん。


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