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3:学生寮とメイドさん

 圧倒的な強さを見せつけた二人。勇者の娘であるリーゼと、魔王の娘であるルキナは、闘技場の裏へと引っ込み、石造りの通路をまた戻る。小さくとも、大きく見えてしまう二人の背中を、俺は追い掛けた。


「その、大丈夫なのか?」

「これくらい、別に問題ないわよ」

「大丈夫。問題なし。ラルク君も、少しは使い魔として自覚が出てきたみたいだね」

「あ、うん。まぁ」


リーゼは、大して俺を見ることもなく来た道を戻る。ルキナは、ご主人様の安否を気遣う使い魔として、自覚が出てきたのかと誉めちぎる。いや、と否定したいけど、逆らったらビリビリだからな。もう何も言えなかったりする。まぁ一応、二人とも問題なさそうで何よりだけど。


「でもリーゼさぁ。さっきの、結構危なかったんじゃない?」

「そんなわけないでしょ。途中で止められなかったら、ちゃんと私が勝ってたし」

「えぇ? でもアレ使おうとしてたんでしょ? 結構やばかったから使おうとしたんじゃないの?」


 ……この娘は何処までも煽っていくな。

 挑発なのか反省会なのか分からないルキナの言葉に、リーゼがキレるんじゃないかとハラハラする。


「別に。てっとり早く終わらそうとしただけだし」

「ふ~ん、でもリーゼならもっと簡単に勝つと思ってたけど私の勘違いか」


 徐々に踏み込む足が力強くなっていくリーゼが、ついに足をピタリと止める。


「……それ、どういう意味?」

「べっつに~。ただ私だったらもっと圧勝してたってだけだよ?」


 さすがにやばいと焦ったが、意外にもリーゼは冷静になろうと努めているらしい。


「ふぅ。その手には乗らないわよ。何がしたいのか知らないけど、そうやって……」

「うんうん。皆まで言わなくても分かってるよ。私より弱いリーゼが私にビビってるのは分かってるから」


ブチッ!

うおいっ。何か物凄い音したぞ。絶対に千切れてはいけない命綱が切れてしまったような音が。せっかくリーゼが一瞬だけ耐えたのに。


「ふ、ふふっ」

「お、おい。ルキナ。謝るん……いや、謝ってください。り、リーゼ。落ち着くんだ。今のはルキナの冗談だ。ちょっと笑えないだけの冗談だぞ」


 必死に取り繕う俺だが、リーゼは意味深に笑う。超怖い。


「256勝253敗86引き分けで、私のが勝ってるわけだけど?」

「全然違うよ。264勝245敗86引き分けで私のが勝ってるもんね」


 微妙に勝敗数の認識に違いがあるのはどういうわけなんだ。まぁそんだけ勝負してたら、普通正確には覚えてないかもしれないけど。

 ただ問題は、こんな狭い通路でやり合わないでほしいということだ。確実に俺が巻き添えを食ってしまう。


「二人ともダメだって。確実に俺が死ぬから。いや、また先生たちに怒られるぞ。ほら、アドゥルス先生の耳に入るかもしれないし」

「……」


 まくし立てる俺の言葉を聞いた二人は、ピタッと止まってしまう。やはりアドゥルス先生というのが効いたのかもしれない。そんなことを思っていると、リーゼがゆっくりと俺へと向き直す。


「何? あんたチクるつもり?」

「え? あ、いや……そんなつもりはないけど。こんなところで喧嘩したりしたら、自然とアドゥルス先生にバレるかもしれないし」


 目が据わっているリーゼに、俺はそれっぽく誤魔化してみる。俺の死活に関わるかもしれんのだ。ちゃんと生きてたらチクるに決まってる。

 俺の嘘に一応納得はしたのか。リーゼはふんと鼻を鳴らすと先に行ってしまった。取り敢えず事なきは得たようで良かった。


「ラルク君」

「え?」


 俺がホッとしていると、後ろから声を掛けられる。一瞬反応が遅れてしまったのは、まだこの名前に慣れていないせいだろう。確認するまでもなく呼んだのはルキナである。そのことを自覚すると、反射的に悪寒が走る。やばい。使い魔のくせにご主人様の邪魔をしてとかってことでお仕置きされてしまうのか。理不尽なことこの上ないが、俺に対抗する術はない。二人の容赦ない戦いに巻き込まれるよりはマシか。と、出来るだけポジティブに考えることにする。お仕置きを覚悟した俺だが、ルキナからは驚くべき一言が出てきた。


「ありがとっ」


 それは何のお礼だろう。見ればルキナは、屈託のない笑顔を見せていた。嘘偽りないまっすぐな表情だった。


「あ、あぁ」


 間に割って入ったことに対してだろうか。それとも別の何かなのか。俺はただ、曖昧な返事をすることしか出来なかった。

 その後、何事もないようにルキナがリーゼの後を追う。釈然としないものの、俺も遅れないように、再び二人の後を追い掛けた。



 そして転送装置のあるところまで帰って来る。闘技場を後にした俺たちは、予定通り学生寮に向かうことになる。ルキナもリーゼも損傷はないものの、身に付けている服はボロボロで着替えを要するのでちょうどいいと言えた。個人的には別にそのままで良いのだが。

 学生寮も転送装置で行くのが手っ取り速いらしく、さっそく今目の前には、高級ホテルのような馬鹿でかい建物がそびえ立っている。


「これまたとんでもなくデカい。ってか街の中にあるんだな」

「凄いでしょ。中はもっと凄いけどね」


 横にいるルキナが、背中越しに手を組んで少し前のめりに話す。というか同時に街も凄い。見たことない変な建物も多いが、めっちゃ賑わってる。ちょうどこの学生寮を城に見立てた城下町って感じだ。

 俺が周りもきょろきょろしていると、リーゼが闘技場同様に解説してくれた。


「まぁ、この学生寮のためにこの街を作ったようなもんだけどね」

(……それは凄いを通り越してアホなんじゃなかろうか)

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