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案内と闘技場

「あれ?」


 長い通り道。敷石と緑のなかをを歩いていると、ぽつんと白い石像が見える。一体だけというのもそうだが、見覚えがあったからだ。先程俺が足を止めた竜の石像だった。今まで類似したものは目にしたが、これにおいては完全に同じものかと思えた。こいつだけ今にも動きそうだという印象もそうだが、燭台のような石台の上に乗る小さな竜。左眼に傷みたいな装飾がされているのもこいつだけ全く同じだったのである。


「どうしたの?」


 リーゼが俺に尋ねる。俺は素直に感じたことを伝えた。


「さすがに別物だとは思うけど。たまに兄弟でもイメージしてるのか、本当にそっくりなのを配置することも多いし」


 というのがリーゼの回答である。だったらそうなのだろう。石に興味のないルキナに呼ばれ、お仕置きされる前に俺とリーゼは足早にルキナを追い掛けた。


 やがて一つの建物が目の前に現れる。今までと同様に大きな造りだが、妙に縦に長く、青い屋根が上から畳まれるように重なっている。造りに合わせて窓が大きく、壁が白く装飾されている。造りのせいなのか。この建物だけ何か雰囲気が違っていた。


「此処なのか?」


 俺は真っ直ぐその建物に歩み寄る二人に問う。闘技場に向かってるんじゃなかったのか。


「そうだよ。闘技場はね。此処からすっごく遠くにあるの。飛んで行っても時間が掛かるから、此処で転移するんだよ」


 そう言って、ルキナが得意気にふふんと鼻を鳴らす。つまりはワープって奴か。ゲームでもたまにあるけど、魔法がある世界ってのは本当便利だよな。

 中に入ると薄暗く雰囲気のある大きな部屋だ。部屋自体がまるで、プラネタリウムみたいに夜空を投影していた。機械じみた装置が幾つかあるのが見える。その中央に、高さはさほどないものの大きな台座みたいなものがあった。どうやらこれに乗れば良いみたいだな。


「じゃあさっそく行くわよ。早く乗りなさい」

「はい。ラルク君はこっち」

「お、おう」


 リーゼに促され、俺はルキナに背中を押されていち早く台座に乗る。何でできているのか分からないが、思ったより堅い。コツコツと鳴るあたり石みたいだ。


「行き先は闘技場ね。中央席の入口でいいよね?」

「そうだね。そこが一番よく見えるし」

「なぁ、これこのままつっ立っとけば……」


 突然視界が揺れた。これは俺にも覚えがある。アドゥルスと一緒にマーブルさんの所に行った時と多分同じだ。


「……いいのか」

「そうだね。もう着いたけど」

「は、速いな」


 だがあまりに一瞬すぎて、このまま待っとけばいいのかという質問さえ置いてけぼりだ。不思議と振動も少なく、本当に一瞬だった。


 さっきと同じような台座の上に立っているのは変わらない。だが周りはと言えば、プラネタリウムみたいだったものは一切なく、代わりに部屋の柱に備えてある松明が、大きな炎を灯していた。部屋の装飾も大きく異なり、木製のテーブルやイス。本棚。両端には大きな甲冑が今にも剣を振り下ろしそうな雰囲気を見せていた。


「何かアドゥルス……先生の転移より楽だったな」

「それアドゥルス先生の前で言わないほうがいいよ」

「何で?」


 感じたまま素直な感想を述べると、ルキナから指摘が入る。見ればリーゼも同意見だと言わんばかりに腕を組んでいた。


「元々転移魔法なんて、誰でもほいほい使えるわけじゃないから普通はこういう装置を使うんだけど。独自に転移魔法を使えるってだけでも凄いのに、アドゥルス先生あれで負けず嫌いだからね。多分機嫌悪くするよ」

「……まるで子供だな」

「っていうか、その辺はラルクのほうが知ってるんじゃないの? 前は一緒にいたんでしょ?」


 やべっ。リーゼの最もな意見に俺はドキッと動揺してしまう。


「……い、いやぁ、アドゥルス先生も変わってないなと思っただけだよ」

「……ふ〜ん」


 咄嗟の機転で何とか誤魔化す。ふぅ。俺も中々やるじゃないか。そんな風にも思ったが、リーゼが何やら俺を見ている。これってもしかしなくても、疑われてる?

 どうしようと冷や汗をかきつつ、俺は乾いた笑いを見せるしか出来なかった。


「それより早く行かない? 今なら誰か対戦してそうだし」

「そ、そうだな。早く行こう」


 傍若無人なルキナはリーゼほど気にする様子はない。助け舟だと思い便乗することにした。リーゼもそれ以上追求してくることはなく、何とか有耶無耶に出来たようでホッとする。


 転移装置のある部屋を出ると、思ったより人はいなかった。アカデミーと違い、石造りに囲まれていた。窓もあるし、電気か分からないが、上に光を発しているものもある。まるでダンジョンのような通路に出たわけだが、その明るさのおかげで、緊張するようなことはなかった。ただ、部屋を出てすぐ左右に道が伸びており、此処もまた覚えておかないと迷ってしまいそうである。


「そっちは出口。こっちが闘技場に繋がってるから」


 リーゼに諭され、俺は遅れないように二人の後を付いて行った。


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