005 『部活動』
『部活動』
「そういえば今更ですけど、ここって家庭部じゃないですよね」
「なにを言っているの? うちはれっきとしたカテイ部よ」
「いや、僕が言ってるのは、家庭科の授業的な家庭部のことで」
「あぁなるほど、それなら確かに違うわね。うちは仮定する部活だもの」
そう、『仮定する』の仮定部である。活動は仮定的な事象の探究、つまりはいつもの無駄話。カタカナ標記だったので家庭部と勘違いして僕は入ったというわけだ。我ながら迂闊すぎる。
「それにしても、よく許可でましたね」
「昔はなんでもありだったらしいからね。流石に今はそれなりに審査があるけど。あと、創設者が学校の理事の血縁だったとかで、校舎の立替の際に部室を確保したなんて話もあるわ」
「へぇ、じゃあこの部ってかなり昔からあったんですね」
てっきり誰かが思い付きで立てた部だと思っていただけに、そんなに伝統があるとは以外だ。
「あぁでも今みたいになったのは最近みたいよ。私も直接知ってるわけじゃないけど」
「どういうことです? 昔はなにか違ったんですか?」
「なんでも、部員が全員卒業して潰れる家庭部に入部して、自分達の部にしたらしいわ」
「それはまた、なんとも……」
真っ当にできた部ではないと思っていたけれど、まさか乗っ取りで設立されていたとは。
「あっ、けど昔は本当に家庭部だったんですよね。なら、その資料とか残ってたりしませんか?」
「多分資料なら、棚とか探せば何かしら残ってるとは思うけど、そんなものに興味があるの?」
「あれ、言ってませんでしたっけ? 僕、実は料理やお菓子作り、裁縫みたいな家庭科の授業でやる様なことが好きなんですよ。妹は男らしくないとか文句を言うんですけどね」
でも、趣味は人それぞれなんだから、とやかく言われる筋合いはない。というか、僕がそういうのに興味を持ち始めたのって、そもそも妹[あいつ]の我侭が原因なんだし。
「まぁ好きにしたらいいと思うけど、多分君の求めてるようなものは思うわよ」
「何でですか? あっ、ほら活動記録ありましたよ」
棚の中から『家庭部』と書かれた古いノートを発見。けれど、中身を見て唖然とした。
「分かったかしら。少なくとも、君の想像してたような部活じゃないことが」
「えぇと、なんなんですか、これ?」
ノートには謎の記号や、よく分からない何かの調合法などが所狭しと書き込まれていた。
「部の登録は家庭部でも、正式名称は『家庭でできる簡単な錬金術部』だったらしいから。そういえば、この前見せた箱も家庭部から部をもらう条件で受け継いだものらしいわよ」
「……無茶苦茶ですね」
入ったのがその家庭部じゃなく、先輩のカテイ部で良かった。本当に、心からそう思う。
五話目にしてようやく部活動内容の説明回。
ロリな先輩とぐだぐだ話すだけの部活動とか、どれだけ恵まれているのだというお話です。
では読んでくださりありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。