002 『無人島』
『無人島』
いつも通りの放課後、部室にいるのは当然僕と先輩の二人だけ。
「ねぇ先輩、もし無人島で一週間過ごすことになって、何か一つだけ持っていけるとしたらなにを持ってきます?」
手元の本を読みながら、なんとはなしに聞いてみる。
「なにかしら、いきなり? そもそもその状況がよく分からないのだけど」
「先輩のいつもする仮定話ですよ。たまには僕からしてみてもいいじゃないですか」
「釈然としないけれど、まぁいいわ。それで環境は? その無人島に食料や水はあるの?」
「そうですね、樹の生い茂った島で、水や食料は涌き水や果物なんかがあるとしましょう。一週間後に迎えの船がくることになってます」
本の方には無人島でという他に指定はなかったが、設定としてはこんな感じでいいだろう。
「成る程、つまり自給自足のサバイバル生活というわけね。持っていくのはなんでもいいの?」
「はい。でも、一応自分の持って行ける範囲のものでお願いします」
「そうね……」
言いながら先輩が目を閉じる。たぶん頭の中で実際にその状況を考えているのだろう。
そのまましばらくして、先輩は満足げな様子で目を開いた。
「うん、決まったわ」
「一体、何にしたんですか?」
そう聞く僕に、先輩は指をさして答えた。
「私が持っていくのは、――君よ」
「えっ、僕、ですか……?」
予想外の回答に面食らってしまう。だけど、先輩がそんなに僕のことを思っていてくれたということがとても嬉しく感じる。――が、次の一言でそんな喜びは消え去った。
「だって君を連れて行けば、暇つぶし、雑用、力仕事、なんでもこなせるじゃない」
「あぁなるほど……」
「それで、その心理テストの結果はどうなるのかしら?」
「あれ、気づいてたんですか」
読んでいた本で面白そうな問いがあったので聞いてみたのだけど、まさかそれだけで判断されるとは。しかしバレた所で問題ないと思い、次のページの結果を見て固まった。
「どうしたの、さっさと教えて頂戴」
「えーっと、その、選んだものが、……自分の一番大切に思ってるもの、らしいです」
「なっ、なによそれ!?」
この後、顔を真っ赤にした先輩に『勘違いするな』と散々言われたのはいうまでもない。
とりあえず、今日から一週間は毎日更新していく予定。
その後は基本的には木曜と月曜に更新していく予定です。
あらすじと言えないあらすじでも発言しておりますが、基本的に文庫換算見開き2頁丁度の物語ですので、長編を読んだ箸安めや暇つぶしにでも愉しんでもらえたなら幸いです。
それでは次回も、そしてよろしければメインで書いております魔物娘小説(http://ncode.syosetu.com/n8208ce/)もよろしくお願いいたします。