001 『終末』
『終末』
「もしも明日世界が滅ぶとしたらどうする?」
唐突にそんなことを先輩が言ってきた。
あまり広くない部室には僕と先輩しかおらず、独り言でないとすれば僕に聞いているのだろう。しかし、そんなことを突然言われても困る。
「いきなり世界が滅ぶって言われても、想像できませんよ」
「まったく、君はいつもそうね。そんなんじゃ、いざ世界が滅ぶときにやっていけないわよ」
呆れたというように、顔の前で手を広げる先輩。なんだか不当に馬鹿にされている気分だ。
「まず、そもそもどうやって世界が滅ぶって言うんですか?」
「それは、その、地球温暖化とか、巨大隕石とか、宇宙人とか色々あるでしょ。でも今はそんな原因はどうでもいいの、その最後の日にどうやって過ごすのかを聞いてるのよ」
どうやらどうあってもこの話を続けたいらしい。個人的にはまったくどうでもいいことだけど、仕方がないので考えてみる。
――もし世界が滅ぶとして、最後の日に自分は何をするか。
「……うーん、やっぱりいつもどおりなんじゃないですかね」
「いつもどおりって、どういうこと? 世界が滅ぶのにどうしていつも通りに過ごすの?」
「だって、世界が滅ぶって言われてもそれがほんとかどうかはわからないじゃないですか。最後だからって好き勝手した挙句に滅ばなかったらもう大変ですよ」
実際ノストラダムスの予言や、最近だとネットでの大地震予言なんかを真に受けて、後のことを考えず行動した人が、結局何も起こらず途方にくれたという話を聞いたことがある。
「そんなこと考えたら意味ないじゃない。面白みも無い、ほんとにつまらない発想ね」
「それに、僕は今の生活で満足してますから。学校に通って適当に勉強したりして、部活の日にはここで先輩と無駄話するの好きですし」
もし世界が滅ぶって言われても、『あぁそうなんだ』というぐらいしか思わない気もする。わざわざ慌てて動く気には僕はなれない。
「じゃあ逆に聞きますけど、先輩ならどうするんです、最後の日?」
「そんなこと急に聞かれても答えられないわ。そのときになってみないと分からないもの」
「えー……」
さっき僕がそう答えたときには馬鹿にされた気がするんだけど。そもそも先輩のほうから振ってきた話だというのに……。
「はぁ、まぁいいか……」
先輩がこんな調子なのはいつものことである。理不尽な対応にも、いい加減慣れてきた。
そんなこんなで僕の日常は今日も滅ぶことなく続いてく。
と、言うわけで、下半身の二部始まるまでのツナギ的な連載小説。
前まで書いていたものの改稿版ですが、たまに書き下ろした新規話もするつもりです。
基本的には木曜と月曜に更新していく予定です。
あらすじと言えないあらすじでも発言しておりますが、基本的に文庫換算見開き2頁丁度の物語ですので、長編を読んだ箸安めや暇つぶしにでも愉しんでもらえたなら幸いです。
それでは次回も、そしてよろしければメインで書いております魔物娘小説(http://ncode.syosetu.com/n8208ce/)もよろしくお願いいたします。