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015 『時間』

『時間』


「時間ほど平等で、不平等なものはないと思うわ」


 そう呟き、時計を見ながらため息をつく先輩。


「矛盾してる上になんとも詩的な言い方ですけど、その気持ちは分かりますよ。要するに、時間は誰にも平等に流れるけど、それを体感する感覚は状況や人によって違うってことですよね」


 楽しくても、苦しくても時間は誰にも等しく流れる。けれど、楽しいときにはとても短く、逆に苦しいときにはとても長く感じるものだ。同じ時間でも、その長さは全く違う。


「そうね。それに人それぞれ寿命も違うもの。もし、何かの漫画とかみたいに誰もが自分の寿命が分かるようになったらどうなると思う?」


「それは、怖いですね……」


 考えてみて、身震いする。実際そんな世界になったら、普通に生活など出来ないだろう。


「自暴自棄になった人は何をするか分からないものね」


「えぇ、そうですね。明日死ぬ、なんて分かった人はもう後先考えませんでしょうから。やっぱり、寿命なんて誰も分からないほうがいいんでしょうね」


「でも、実際に年老いたり病気で死期を悟るというのはあるけど、それはどうなのかしら? 自分の死期を悟ったからといって、大きな事件を起こす人はあまりいないけれど」


「確かに、そうですけど……。それは明確な時間が分かってないからじゃないですか?」


 明確にいつと分かってるのとは違うだろう。それに偏見かもしれないけれど、そんなふうに悟った人は、もう色々と達観してたり、体力的に行動できない場合がほとんどな気がする。


「それもそうね。まぁ話はそれたけれど、時間のことよ。体感時間もそうだけれど、積み重ねた時間というのも人によって大きく違うわよね」


「ですね。けど、いままで自分が何をやってきたか、なんてまず答えられませんよ」


 生まれて、小中高と学校に通ってきた、というぐらいだ。細かいことは覚えてないし、そもそも、多すぎて何をどうまとめたものか分からない。


「そうね、私も今まで生きてきた五千二百二十七日を説明しろといわれても、流石に無理だわ」


「……いや、ぱっとそんな日数出せるだけでもすごいと思いますよ」


 このタイミングで何故こうも簡単に出せるのか。適当じゃなく、正しい数なのだとしたらどれだけ計算が早いという話だ。


「羨ましい限りですよ、その計算能力……」


「そうかしら? 正直、こんなのテストにはあまり役に立たないわよ。私としては、君の読解力のほうが欲しいぐらいだわ。国語だけは、本当に意味が分からないもの……」


 学年が違えども、期末の日取りは誰もが同じ。体感は人それぞれでも、時間は平等に訪れる。


 現実逃避の雑談をしながらも、来週に迫った期末テストに憂鬱になる僕らだった。


哲学的な話と見せかけて実際はただのテストが嫌な学生二人というお話。


次回もどうかよろしくお願いいたします。

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