012 『未確認飛行物体』
『未確認飛行物体』
「タイムマシンって、できると思う?」
「うーん、無理なんじゃないですかね?」
今日のテーマはタイムマシンらしい。先輩の脈絡のない話題ふりにもいい加減に慣れてきた。
「あら、どうしてそう思うの? 光より速く進めれば、未来に行けるらしいわよ」
「光より速くって時点で不可能な気がしますけど、仮にそれができたとしてもタイムマシンはできないと思いますよ」
「ふむ、その理由は?」
「もしタイムマシンが実現してるなら、未来人がきてるはずじゃないですか」
「なるほど、目撃があればいいのね。なら未確認飛行物体、いわゆるUFOは存在するかしら?」
「また話が飛びますね。けど、あるんじゃないですかね、UFOは」
インチキも多いだろうけど、目撃はかなりあるし、説明がつかないものもある。
「なら、UFOがタイムマシンだったらどう?」
「それは……、なるほど。言われてみれば、なかなか面白い考えですね」
確かにそれなら、タイムマシンの目撃がないことも説明がつく。今まで想像したこともなかったけど、存外ありえなくはない考えのように思える。
「ちなみに知らなかったみたいだけど、結構昔からあった説よ、これって」
「へぇ、そうなんですか。僕は聞いたことなかったので新鮮です、その考え方は。けど、それなら未来人達はなんで過去に来るんでしょうかね?」
「理由なら、色々あると思うけど、やっぱり一番は好奇心じゃないかしら」
「好奇心?」
「えぇ、今だって化石や古い文献から昔のことを解き明かそうとしているでしょう。それの延長線上で、実際に過去にやってきて調べているんじゃないかしら」
「それはなんか、納得できますけど、地味ですね……」
「現実なんて、たいていが地味なものじゃないかしら――って、あら飛んでくるわね?」
「はぁっ? 飛んでくるって、いきなりなにが……」
まさか本当にUFOが飛んできたとでも言うのだろうか? 流石にそれはないだろう、と思いつつ先輩と同じく窓に視線を向けたとき。
ガァンッツ! と、ロッカーに何かがぶち当たり、大きく音を響かせた。
「ナイスホームラン、って言うところなのかしら?」
「さぁ? とりあえず、窓が開いてて良かったですねぇ」
奇跡的にロッカーをへこませるだけで済んだ白球を見ながら、しみじみ思う僕と先輩。結局仮定のUFOやタイムマシンよりも、実際に飛んできた白球のほうが印象強いのだった。
UFOな話。
何気にUFOタイムマシン理論というのは普通にあるというのは驚き。
もともと別な小説のネタとして、そんな理論あるとは知らずに使っていた為に。
それでは、次回もよろしくお願いいたします。