000 『あらすじ』
『あらすじ』
「もし見開き二頁で終わる小説があったとしたらどうする?」
「あるんじゃないですか?短編なら二頁どころか一頁とかもあるでしょうし。なんでそんなことをいきなり言い出すんです?」
いきなり訳のわからないことを言い出した先輩に首を傾げる。
いや、先輩が唐突で意味不明なのは今に始まったことではないのだけれど。
「少し言葉が足らなかったわね。私が言いたいのは文庫一冊丸々ってことよ。二頁で終わるのに一冊使う小説なんて面白いと思わない?」
「二頁なのに一冊丸々ってどんな紙の無駄です?まとめれば二頁の薄い内容を伸ばしに伸ばして、一冊にした小説とでも言いたいんですか?」
どちらにせよ、そんな小説を僕はわざわざ読みたいと思わない。
「いいえ、そのどちらでもないわ。二頁で終わるけど、二頁で終わらない。つまりは、連作短編ってことよ。具体的には一話が二頁で終わるというね」
「なるほど、それなら確かに二頁だけど、一冊丸々というのも可能ではありますね」
「ちなみにその内容は、『基本的に部室の中で少年と少女の二人が益体もない仮定話をして日々を過ごす』というものよ」
「あれ、なんか話変わってません?……というか、それもしかして僕たちのことですか?」
「変わってないわよ、特に何も?後、私達のことかどうかは、哲学的な問題になるわね」
何か問題でも?という顔で言う先輩は、それ以上の追及をしても無理そうである。いつものことだ。僕たちのことかという問いに対しての、煙に巻くような返答も含めて。
「まぁ、とにかくそういうことよ。今回はあらすじとして千文字以内って制限もあるのだから」
「いや、あらすじって、何の話をしてるんですか?」
なんだかもう、いつも以上に先輩の言論がおかしい気がしてきた。
「分かりやすくいうならメタ発言というものよ」
「メタ発言?」
「登場人物が、その物語そのものに口出しするような発言よ」
「だから、何故そんな発言する必要があるんですか?」
小説の中ならまだしも、日常生活にそんな発言は要らないだろう。
「私達が小説の登場人物で、ここが千字制限のあらすじだと考えてみなさい」
「なんで仮定をって言うだけ無駄ですね。で、あらすじだとしたらどうなるんです?」
「簡単なことよ――」
そう前置いて先輩は言う。
「これで丁度見開き二頁の最後の行。つまるところはそんな物語、よ?」
あらすじに『あらすじ』という小説を仕込むのは流石にアホだろう、読み辛すぎるとの指摘を受けて、なくなく移動。
内容は変わってないですが、第零話という扱いに。
あぁ、必死に千字に収めたのになぁ。
まぁ読みづらいというのは仕方ないので理解していはするのですが。
そんなこんなで、あらすじといえないあらすじでした。