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第五話 三日目(終)

もう吹っ切れていたものの、やはり心のどこかで気まずい思いがちらほらと。

足取り軽く、とはとても言えない様子で学校へ向かう。

登校三日目にして、早くも気分は下がり気味。

「はあ……」と、天を仰いでため息一つ。


今日はとても良い天気だけど、素直にそうは思えない。

ひたむきに地面とにらめっこする自分。

同じ制服を着た人に何度か追い越される。

すぐにでも帰りたい気持ちがあたしを駆り立てる。

ここでまたしてもため息が。


大きくかぶりをふって、弱気な自分を否定した。

もう後悔しないよう、もう迷惑をかけないように、昨日は散々考え抜いたじゃないか。

あとは皆に話すだけ。


「よし……」


腰のあたりで小さくガッツポーズをつくり、自分を鼓舞する。

春独特の肌寒さに、あたしはぶるっと身をよじらせる。


友達どうしで挨拶しあう声が、ふと、あたしの耳に入ってきた。

他愛もない会話をしながら、楽しそうに歩いている。


時折吹く風が、スカートを優しくなびかせる。

地面にはまだ、桜の花びらがいくつか落ちていることに気がついた。

少し目を凝らして先を見てみれば、そこにはやはり桜の花びらが。

わずかばかりピンク色に染まったこの通学路を、あたしは走り抜けていく。


いつだってあたしは全力だった。

いつだってあたしは真っ直ぐに生きてきた。


そしてそれは、あたしだけじゃない。

宮ちゃんも由良ちゃんも凛ちゃんも、みんなそう。

たった三日しか過ごしてないけど、あたしには分かる。


だから大丈夫、きっと大丈夫。

ようやく学校に辿りつくと、あたしは靴を脱ぎ捨て、上履きも履かずに、校舎を全力疾走。

手抜き掃除をしたのだろうか、廊下の埃がやや巻き上がる。


一年一組に到着し、そこで立ち止まる。

扉に手をかけ、ゆっくりと開け放つ。


「宮ちゃん由良ちゃん凛ちゃん! あたし分かったの!」


自分の席にカバンを放り投げ、三人に呼び掛けた。


「分かったって、何がだよ? だいたい昨日はいきなりどうしたんだ? 心配したぞ?」


「ごめんね宮ちゃん」


「私も心配してたのよ、奏ちゃん?」


「あはは……、そうだよね。由良ちゃんもごめん」


「奏……わたしも」


「うん、分かってる……。凛ちゃんもごめんね?」


ぐるりと三人を見回して、あたしは語りかける。


「あたしたちのやろうとしてたこと、やっぱり間違ってた。楽しいことしたいからって、部活作るのは間違ってたんだよ。でもね――」


ここで精一杯の笑顔をつくり、元気な声で言ってみせる。


「あたしたちのやろうとしてたことは、悪い事じゃない! 間違ってたのは方法なんだよ!」


「方法?」と、凛ちゃんが疑問を浮かべる。


「そう、方法! 部活を作ろうっていう、その方法」


「ごめんなさい……。私いまいち、よく分からないのだけど……?」


「わたしもだ。奏には悪いが、さっぱり……」


二人が困惑している中、宮ちゃんだけがハッとして。


「そうか……、分かったぞ……! うち、奏の言いたいことが分かったぞ!」


「そうだよ宮ちゃん。部活なんて必要ない……。だってあたしたちは――」


ここでようやく、取り残された二人も気がついて。


「「部活なんてなくても、楽しいじゃん!」」


「あははっ! ほんとなんで気づかなかったんだろうな。もしかして、うちらってバカなのかも?」


「うふふ……、そうねえ。私たちって、ちょっと抜けてるかもしれないわぁ!」


「まったくだ。勝手にわたしを巻き込んで、勝手に自分たちで解決するなんて、わたしはとんだ噛ませ犬だよ、ほんと」


本当にその通りだ。

あたしたちはバカだよ。

でも、バカだけど、楽しくて最高だよね!


「じゃあ、あたしたちの部活はもう決まりだね!」


四人はバラバラに頷き合う。

そして――


「「今日から帰宅部に入部しまーす!」」


短いお話でしたが、いかがでした? 思い付きで執筆を始め、気づけば兄妹コンプレックスが手つかずになる始末。はい、反省してます。すいません……  

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