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始まり



暖かな春の日差しを背中に感じながら、足取り軽く歩いて行く。

さほど交通量の多くないこの道が、今日からあたしの通学路。

ふと横を見れば、そこにはお昼寝中の野良猫が。

まだ朝だというのに、呑気にあくびなんかしている。

思わず見とれてしまったが、こんなところで道草してるわけにはいかない。


「バイバイ、猫ちゃん」


名前も知らない猫に向かって、一言のお別れを告げる。

いつもなら、こんなことになど気づかずにただ黙々と歩いていただろう。


けど今日は違う。


道行く人に気をとられながらも、あたしは真っ直ぐと前を見据えて歩く。

一人、二人と制服姿の学生を追い越して。

ちらりと顔をのぞけば、みな一様に緊張している。


ほどなくしてようやく目的地へと到着する。

校門の横には立て看板が。


あと一歩、というところであたしは立ち止まった。

真新しい制服のスカートを、ギュッと両手で掴む。

さあ、あと一歩を踏み出せば、あたしは今日からこの学校の生徒に。


「……よし……!」


少し重たい足に力をこめて、慎重に前に出す。


「あはっ! 今日からあたしも高校生だ!」


人の目など気にしない、気にならない。

無邪気にはしゃいで駆けていく。

サクラ舞い散るこの道を、あたしは懸命に駆けていく。


夢にまで見たこの光景。けどこれは、夢じゃない。

そう……あたしはもう、高校生なんだ!


「こら、新入生! 走ったりしたら危ないだろ?」


「す、すいません!」


靴箱の入り口で、腕を組んで立っている女の人に怒られてしまった。

まわりからは小さな笑い声が。

赤面しているであろう自分の顔をカバンで隠し、とぼとぼと歩いて靴箱へ。

ローファーをビニール袋の中に入れ、代わりに上履きに履き替える。


埃ひとつ見つからない、綺麗な廊下を進んでいく。

しばらく歩くと、ざわざわと声が聞こえてきた。

入学式が始まる時間まであと三十分はあるが、それでも人がたくさんいる。


そうだよね、きっと皆、この日を待ち望んでいたんだよね。


空いてる席に着いて、ぼんやりと開始を待つ。


さあ、いよいよだよ!

あたしの高校生活がここから始まる――



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