五話・課題を小賢シク活用(国語に気が向いたかもしれないな、六日目)
おい、国語。どうしたんだお前は。
課題テストが返却された。ヒドイ出来だった。国語の――現国と古典の点数が、なななんと、全然悪くない。
むしろ、良い。
いやいや――、まさかこの僕が、現国と古典の順位で、二十位代を獲得するとは、どこの夢に潜むバクか、どこのゲームのバグだろうか? 流石に、これをウソにしようと魔物は働くまい。
課題テスト――はそこまで重要視されるテストではない。春休み、夏休み、冬休みの休み明けにのみ、ぼくらにその姿を現す。
確かに、休み明けである分、テストへの士気がある者、無い者で大きな点差が開くだろうが、相手は国語である。
国語は、暗記や計算が通用しない。
確かに、課題から提出される分、課題をキチンと終了させていれば、読み慣れと言うアドバンテージがある。しかし、古文とドイツ語なら、多分同等に難解だろうと認識するぼくにとって、それはあってないようなものだ。
言うなれば、剣と魔法を極めても通用しない、特殊な装備でのみ対等に戦える敵と言っていい。ぼくは、剣と魔法にしか努力しない。
いやぁーこれはなんとも……。
これは、執筆してしまおうと、ニヤニヤさせられた。国語の成績で一位をとろうが、ドべに落ちようが、別段気にかけないでいる無関心さえ持っていると思っていたぼくが、ちょっとラッキーパンチを当てたくらいで、随分とふ抜けたものだ。
ただまぁ、別の教科については、自慢ではなく、不満くらいしか執筆できないだろうから、割愛。それはそれで、中々文章量を稼げそうだったけれど、傷口に塩を塗る真似はしない主義だ。
思えば、ぼくが理系を選択した第二の理由は、この国語と言う強敵との戦闘を回避するためのものだった。勿論、ぼくの進路は理系の大学で知識を得なければならない、と言う理由の方が強い。しかし、第二を選べと言われたら、ぼくはそれを選ぶ。
悪いが、国公立大学への進学は諦めてくれ、といつの日か親に発言したような覚えがあった。しかしまぁ、どっちにせよ両親はそんなぼくを絶対に気付いている筈。国語科目の悲惨さは、それほどなのだ。
時間は流れて、父が家に帰ってきた。成績表を、提出しなければならない。国語は異例だったけれど、それ以外は、なので憂鬱と言えば憂鬱だ。お小遣いの減額までには至らないだろうが、称賛の言葉は期待できない。
一通り確認をすると驚いた反応を見せた。そんなに、ぼくの名前の下に、国語の華やかな点数がある事に、現実を疑ってしまうのだろうか?
父親から、よくまぁ、こんな点数を人生のうちに見る事が出来たものだ、などと言われた。
はぁ、とぼくはそっけない返事を返す。
ま、次の国語のテストもこれくらいとってみろ。
父はそう言ったので
いや、無理。
課題テストは、課題の答えを全部暗記するだけで点数がとれるからこその、その点数だよ。
今日のウソ。
☆現国、古典の点数→実は古典の高得点は今回じゃない。便宜上、今回にさせてもらった。
☆父に提出した→実はまだしていない




