◇夏(学パロ。かのさんに捧げ物)
網戸になった窓から稀に風が吹き込んでくる。カーテンを揺らす風は一瞬だけ身体を冷やし、心地よい気分にさせてくれた。ただしまたすぐ纏わり付くような熱が広がり体温と気力を奪う。室内だというのに陽炎でも見えそうだ。
外の空気と一緒に、何人かの楽しげな声が聞こえてくる。恐らく大家とその隣の部屋にすむ連中だろう。もの炎天下の中ご苦労なことだ。
ツァオは薄いタンクトップの中に空気を送り込んで体温を調整したあと、すぐ横に視線を移す。
フローリングの床には部屋の主が頬を上気させて寝転がっていた。熱いというのにモスグリーンの長袖を着ている。
「クーラーぶっ壊れてんだから、半袖でも着ればいいだろ」
ツァオが言うと、部屋の主――ヴァレンタインがふふ、と小さく声をあげて笑った。
「明日には業者さんくるみたいだから」
答えになっていない。
昨日クーラーが壊れた時も、直るまで家に来ないかと大家に言われたが断ったそうだ。
曰く、『今日君がくるから』だそうで、ツァオは扇風機から送られてくる熱風に眉をひそめる。
どんなに熱くても長袖を着るのは手首の傷を隠すためだろう。別に傷のことを知っているツァオの前でまで隠さなくても良いだろうに。もう何度あの傷を見たか覚えていない。
ツァオはすこし汗ばんだ手でヴァレンタインの前髪をかき分け、額にそっと手を置いた。
「顔が赤いぞ」
当然というか、すこし熱い。
ヴァレンタインがうっすらと笑っていた。ツァオの言葉をきちんと聞いていないのかもしれない。暢気な笑顔にツァオは眉を顰めて、額にのせた手をゆるゆると頬へ滑らせた。それから首筋をなで、シャツのボタンに手をかける。
ヴァレンタインが声をあらげた。
「ちょっと、ツァオくん!」
抵抗の言葉を、ツァオは聞かなかったことにする。片手でヴァレンタインの服のボタンを外していくと、赤みのさした肌が露わになった。汗ばんでいる。ゆっくり身体をかがめて首筋に顔を埋めると、フローリングに横たわっていた身体がビクリと跳ねる。
それからヴァレンタインは不機嫌そうな顔をして、ツァオを睨んだ。
「……せめて、シャワー浴びたいんだけど」
ツァオは一瞬だけ考えて、ゆるやかに笑った。
「後でな」
ガタン、と部屋に小さな物音が響く。
レースのカーテンが風をはらんで、ふわりと広がった。
この後滅茶苦茶セックスした。




