第四十三話 地下道の奥に ~後半~
第四十三話 地下道の奥に ~後半~
「月野さん…。なぜここに!?」
「夜空先生こそ…。」
檻の中にいるウル、そして、夜空先生の背後にいた家来らしき人々が首をかしげている。
私と夜空先生の間に、沈黙の時間が流れた。
しばらくすると、奥の豪華な椅子に座っていたおじいさんが立ち上がり、こちらに向かって歩いてきた。
「はじめまして。わしらの重要な人物の、月野来菜さん。」
すると、夜空先生がそのおじいさんの方を振り向いて言った。
「ハルク様!これは、一体どういうことでしょうか?」
「驚いたか。こいつが、使い手じゃ。」
その時、夜空先生の動きが止まった。
「私の教え子が…なぜ?」
「愚かなやつじゃ。この中で一番経験を積んだ優秀な弟子じゃったのに、そんなことも知らぬとはな。」
ハルクと呼ばれたおじいさんがそう言った。
「私は、本当の守り石の使い手なんかじゃない!大昔に偽の使い手とアメジストを作った、月野家の子孫よ!」
「ほう、すでに知っておったか。それにしても、くわしく知っておるな。う~む。」
すると、ハルクは大勢の家来を呼び、夜空先生を残し、隠し扉を開けて奥の部屋へ入って行った。
私は、檻の隙間からウルにクリスタルを渡した。
「ありがとう…、ライナ。」
ウルはそう言った。
「ウル、またこんな檻に…。」
「心配はいらないわ。このクリスタルがあるもの。こんな安っぽい檻を、伝説の守り石がこわせないわけないでしょう。」
そう言ってウルは破壊魔法を唱えた。
「○●◎…。」
ガッシャーン
ウルを閉じ込めていた檻が壊れた。
「上手くいったね。さあ、帰ろう。」
「月野さん…。」
か細い声がした。
夜空先生がこちらを向いていた。
「私は、どうやら運命を利用されていたみたいです…。あなたも同じ。あなたは守り石の使い手を見つけ、集めるのが使命です。それを利用して、あなたが見つけた使い手を、ウルと同じようにとらえて監禁したりするでしょう。あなたの見つけた仲間に、気をつけなさい。」
夜空先生は一息ついてまた言った。
「それから…、妹のレイナに、あなたは偽の使い手だよって言っておいて。いつまでも信じさせておけないから。これは私があなたの担任として最後のお願いです。では、くれぐれも気をつけて。」
「はい。」
私は前を向いて歩いた。決して、後ろを振り向かずに。
今、振り返ったら、涙がこぼれてしまいそうだった。
続く…。




