第三十九話 地下牢の少女と偽物?偽者?
第三十九話 地下牢の少女と偽物?偽者?
「気づいてくれたのね。これを投げて正解だったわ。ほら、見て。」
その少女は言って、私の手の上を指差した。私の手のひらにはキレイなクリスタルが黒に光っていた。
「あなた…、守り石の使い手…なの?」
「うん。あるとき、たまたま入った洞窟で聞こえた声が言ってたの。」
「えっ!あ、そ、そう…。」
「?なんか、問題でも?」
「えっ、なんでもないっ。そ、そう言えば自己紹介するのを忘れていたわ。私はウル。一応、天気を司る、クリスタルの使い手よ。」
「私はライナ。アメジストの使い手よ。」
「あのね…、それぞれの守り石は、正しい使い手の元にいるとき、他の守り石や使い手に会うと、強く光ってひきつけられるらしいの。この話『magic-legend』に書いてあったんだけどね。」
「へー。でもさ、守り石ってよく光るからさ、いまいち何が起こっているのか分からないんだよね。」
「守り石は生きているの…。だから、魔法を知っていれば、この石を妖精みたいなものに変えることもできるわ…。」
「それって…、実物変化魔法?」
「カンがいいのね。でも、普通の実物変化魔法じゃ…だめよ。なにしろ、伝説の石だもの…。」
ウルはアメジストを見つめていた。それから、すうと大きく息を吸った。
「○▲×◎■…」
ウルはそう言って目を見開いた。
「ああっ、石が割れてる!」
ウルが言って振り返った私の目に、パリンと砕け散ったアメジストが飛び込んできた。
「やっぱり…。呪文を唱えないほうがよかったわ。」
私は、アメジストから目が離せなかった。
「…どうして…。」
「ごめんなさい、すべて話すわ。このこととはすごくかけ離れたことから話さないといけないんだけど、しっかり聞いてね。」
今から数百年も前の私のひいお爺さんの話。
ひいお爺さんは私と同じクリスタルの使い手だった。
ひいお爺さんと一緒の守り石の使い手はしっかりとその役目を果たした。でも、ひいお爺さんはそれで満足しなかった。
ひいお爺さんはまだ自分の子を守り石の使い手にしようとたくらんでいる人がいること、代々この家がクリスタルの使い手になっていることを知っていた。
だから、未来に守り石の使い手になる人、そして、多分出てきてしまうだろう偽者の使い手のために、自分が知っている守り石と使い手のことをすべて紙に書き、分厚い本にまとめた。
それが、『magic-legend』。
『magic-legend』は全六巻。一巻ずつ、アメジスト、ラピスラズリ、エメラルド、クリスタル、ルビーの使い手のことがくわしく書かれていた。でも、残りの一巻には特殊な魔法がかかっていた。
かかっていたのは、「人物限定魔法」。ひいお爺さんは、この魔法をかけて、守り石の使い手だけにしか本を読ませなかった。
そんな工夫をしていても、時代は進んだ。
そして、金持ちで性悪の魔法使いがどんな魔法にも引っかからない薬を作ってしまった。それを飲んだ魔法使いは、たちまち偽者の使い手になってしまった。
でも、偽の使い手なんかのもとに真実を映す守り石が引きつけられるわけはない。そこで、偽物の守り石を作った。守り石の中で一番重要なアメジストを作ってしまえば、世界なんて救えるはずはない。そして、自分の子孫が世界を支配すればいいと考えたのだろう。
その、策略を企てた魔法使い、それが月野家だった。
月野家に生まれる子は女が多かったから、”月野”と名乗る人は今はほぼいない。
「でも、月野家の子孫が、たまたま真実を映すクリスタルを持っていた私を捕まえてこの牢に入れたの。真実を映されてはすべて台無しだからなのね。それでも、あなたはここへ来てくれた。だから、クリスタルは真実を映した。そうして、私はあなたに本当のことを教えることができた。あなたは本当の守り石の使い手では無くてショックかもしれない。だけど、もし、私が真実を伝えられなかったら、あなたは…、守り石の使い手を集めて戦っても、失敗に終わるという無駄な人生を過ごすことになっていたのよ。」
その時、すべての私の荷物が、ふっと肩からおろされたような感じがした。
私は、うつむいたまま小さくうなずいた。
さっき割れたはずのアメジストが、ゆかに馴染むように消えていった。
続く…。




