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水脈のCQB(近接戦闘)と地龍の拳

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!


 轟音。

 滝の裏側に隠された『聖なる水脈の洞窟』へと足を踏み入れた瞬間、凄まじい水流の音がポンタたちの鼓膜を激しく揺らした。


「ごめんなさい、ポンタ様……! 滝の反響音が大きすぎて、私の耳では奥の様子がうまく探れません……!」


 後衛のミリーナが、特注のイヤーマフを手で押さえながら悔しそうに顔をしかめる。彼女のユニークスキル『地獄耳』による超聴覚の索敵が、この環境下では完全に機能不全に陥っていた。


「気に病むな、ミリーナ。ここからは俺が案内する」


 前衛に立っていたガロが、ルルに打ち直してもらった真紅の長剣を抜き放ちながら振り返った。


「この滝の裏は、奥の地底湖まで複雑に入り組んだ『天然のダンジョン』になっているんだ。子供の頃に少しだけ探検したことがあるから、大まかなルートは分かるはずだ」

「助かるぜ、ガロ。だが、先陣ポイントマンは俺が切る。お前は俺の隣でルートの指示を頼む。音が駄目なら、視覚と痕跡トラッキングで割り出す」


 ポンタはアイテムボックスから取り出した暗視ゴーグルをカチャリと両目に下ろした。


(ソフィア。ガロの案内ルートをベースに、環境音のフィルタリングと視覚情報の拡張を頼む)

『了解しました、マスター。滝の轟音をノイズキャンセル処理。網膜にタクティカル・ビジョンを投影し、ガロ氏の提示するルート上にある生物の微細な痕跡をハイライト表示します』


 緑色に染まった視界の中で、ポンタのFPSプレイヤーとしてのストーキング技術が全開になる。岩肌に残された僅かな爪痕、不自然に剥がれた苔、壁にこびりついた粘液。ソフィアの解析支援を受けながら、敵の接近ルートと死角を瞬時に脳内でマッピングしていく。

 ポンタは無言のまま、ハンドサインで右の岩陰と頭上を指差し、後続のヒルデとガロへ的確に警戒ポイントを伝達した。


「うぅ……耳鳴りが……」


 その直後だった。強烈な反響音に気を取られ、聴覚を研ぎ澄まそうと無理をしたミリーナの足が、正規の安全なルートから僅かに外れた。


「ミリーナ、ストップ! そこ踏んじゃ駄目!」


 ルルが後ろからミリーナの服をぐいっと引っ張った。


「えっ……?」

「その足元の色が変わってる石、天然のトラップだよ! 踏むと頭上から強酸の毒液が降ってくる!」

「プロテクション!」


 ルルの警告とほぼ同時だった。エリスが素早く杖を掲げ、光の防壁プロテクションを展開する。

 直後、ミリーナが踏み入りそうになった空間の天井から、石をも溶かす強酸の雨が降り注いだが、エリスの張った不可視の障壁に触れてジュウッと無害な煙を上げて蒸発した。


「俺は前方のクリアリングに集中してる。後続の足元のフォローは助かるぜ、ルル、エリス」

「えへへ、任せて師匠! 罠の見極めならルルにお任せだよ!」

「はいっ! ポンタさん、皆さんの守りは私が!」

「ごめんなさい、ルルさん、エリス様……助かりました」


 完璧な連携で進む一行。だが、奥へ進むにつれて足元の水は黒く濁り始め、ツンと鼻を突く異臭が漂い始めた。


「……来るぞ。数が多い。前衛、散開しろ!」


 ポンタの鋭い声と共に、真っ暗な地底湖のあちこちから、ブクブクと黒い泡が弾けた。

 水面を割って飛び出してきたのは、寄生虫の幼体を宿したおぞましい水棲甲殻魔獣の群れだった。硬そうな外殻と鋭いハサミを鳴らし、一斉に襲いかかってくる。


「なっ……なんだこの数は!? いくら天然ダンジョンとはいえ、こんな異常な群れで襲ってくるなんてあり得ないぞ! それに、この狂ったような凶暴さは一体……!」


 ガロが驚愕の声を上げる中、ポンタは冷静に背中からタクティカルショットガンを抜き放ち、引き金を引いた。


「散れぇッ!」


 ドォンッ!という轟音と共に放たれた無数の散弾が、遠〜中距離から飛びかかってきた魔獣の群れを面制圧で強引に吹き飛ばす。

 だが、壁や天井を這って死角から数匹の魔獣がポンタの懐へと潜り込んできた。


「遅えよ」


 ポンタはショットガンを瞬時に手放してスリング(負い紐)で背中に逃がすと、右手で太もものホルスターからハンドガンを抜き、左手でボルグから譲り受けた『炎の魔石短剣』を逆手に構えた。

 ガン・カタ――銃と格闘術を融合させた近接戦闘(CQC)。

 ポンタは滑るような足運びで魔獣の攻撃を躱すと、強固な外殻の関節部分に炎の短剣を突き立てて装甲を溶断。そのまま無理やりこじ開けた隙間にハンドガンの銃口を押し当て、至近距離から脳天を撃ち抜く。


「ポンタ様の邪魔はさせません!」


 後衛からミリーナの凛とした声が響く。

 ポンタのハンドガンの下部から照射された赤いレーザーサイトの光。それが闇の中の魔獣を捉えた瞬間、ミリーナの放った矢が狂いなく光の点を射抜いた。

 シルフィの風を纏ったその矢は、着弾と同時にカマイタチの刃を発生させ、魔獣の分厚い粘液ごと肉体をズタズタに切り裂いていく。


「ギシャアアアアッ!!」


 その時、群れの奥から一回り巨大で、岩のように分厚い装甲を持った中ボスクラスの魔獣が姿を現した。奴はポンタたち前衛を無視し、厄介な防壁と支援を張るエリスたち後衛へと一直線に突進を開始する。


「姫様には指一本触れさせん!」


 かつて遺跡のガーディアンであったヒルデが、後衛を庇うように大股で前へ出た。

 彼女が力強く大地を踏み鳴らす――『震脚』。

 強烈な踏み込みを起点に発動した土魔法が、エリスたちの目の前の岩盤に作用する。ドゴォォォッ!と、まるで波が迸るかのように分厚い岩の壁が下から突き上がり、巨大魔獣の突進を真正面から受け止めた。


 激突で魔獣の動きが止まった一瞬の隙。ヒルデの姿がブレた。

 『縮地の歩法』。瞬きする間に魔獣の懐へ潜り込んだヒルデは、腰を深く落とし、ルルによってレッドミスリルでコーティングされた真紅のガントレットを、魔獣の分厚い胸の装甲にピタリと押し当てた。


「地龍八極拳――『崩拳』」


 ズンッ……!

 鈍い、だが芯に響くような衝撃音が洞窟を揺らした。

 魔獣の分厚い外殻には傷一つない。だが次の瞬間、巨大な魔獣はビクンと痙攣し、目や口から大量の体液を噴き出してその場に崩れ落ちた。

 衝撃を表面ではなく、装甲を透過して「内部」へと浸透させる脅威の拳闘術。硬い外殻を無視し、内臓だけを完全に破壊したのだ。


「右だ、ガロ!」

「おおおっ!」


 ヒルデの圧倒的な武技に戦慄しつつも、高い身体能力を持つガロはポンタの指示に即座に反応した。

 獣人の驚異的なバネで跳躍し、ルルが打ち直した『紅魔の長剣』を一閃。残っていた群れを、鋭い斬撃で次々と鮮やかに斬り伏せていく。


 ポンタの完璧な指揮のもと、誰一人傷を負うことなく、一行は洞窟の最奥部――巨大な地底湖へと到達した。


「……ここが、源流か」


 ポンタが暗視ゴーグルを上げ、目を細める。

 地底湖の水は完全に墨汁のように黒く淀んでおり、不気味な瘴気を放っていた。

 その時、湖の中央が爆発するように盛り上がった。


『ゴルルルルル……ッ!!』


 凄まじい水しぶきと共に姿を現したのは、見上げるほど巨大な『水棲の大蛇』だった。

 だが、ただの魔物ではない。その大蛇の額には、毒々しい紫色の光を放つ『人工的な魔石』が、生々しく肉に埋め込まれていたのだ。


(ソフィア、あの石の解析を頼む)

『スキャン完了。周囲の清らかなマナを強制的に吸引・汚染し、対象の生体組織に流し込むことで強制的な狂暴化と突然変異を引き起こすデバイスです。マナの波長から、帝国の技術と完全に一致します』


 ソフィアの報告が、ポンタの確信を裏付ける。

 この大蛇を狂わせ、寄生虫の苗床へと変異させているのは、帝国の悪しき人為的な汚染だった。


「あれが汚染の元凶か。……悪趣味な石ころ埋め込まれやがって」


 ポンタは背中に逃がしていたショットガンをアイテムボックスへと放り込み、代わりに巨大な筒状の兵器――『RPG-7』を取り出した。


「今、楽にしてやるよ」


 ポンタが筒を肩に担ぎ、凶悪な大蛇の頭部を照準に捉えた。

 世界を蝕む帝国の悪意に向け、新たなる破壊の切り札が、いよいよその火を噴こうとしていた。


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