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紅魔鉱(レッドミスリル)の近代化改修と、滝奥の淀み

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!


 野戦病院フィールドホスピタルの撤収を終えた翌朝。

 寄生虫の脅威から完全に解放され、村人たちがすっかり元気を取り戻した『滝の集落』は、本来の活気を取り戻していた。


「おお、これは見事な布地だ。我が村の特産品と交換しよう」

「ええ、喜んで。王都の貴族も欲しがる逸品ですからな」


 広場では、商人のマルコが集落の族長と交易を行っていた。

 マルコが持ち込んだ香辛料や美しい布と引き換えに受け取っていたのは、鈍く赤色に輝く奇妙な金属のインゴットだった。


「ん……? なにアレ」


 朝食のスープを飲んでいたルルが、その金属を見た瞬間にピタリと動きを止めた。彼女のハーフドワーフとしての瞳が、獲物を見つけた肉食獣のように鋭く細められる。


「し、師匠! あの赤い金属、ヤバいよ! 魔力伝導率と硬度が異常な数値を叩き出してる!」

「なんだと?」

「あれは『紅魔鉱レッドミスリル』ですな。この大峡谷の特殊な赤土と、あの巨大な滝の豊富な水力を利用した『水力鍛冶』でしか精錬できない、極めて希少な金属なのですよ」


 マルコが誇らしげに解説すると、ルルはバンッ!とテーブルを叩いて立ち上がった。


「師匠! あれがあれば、ルルたちの装備を劇的にアップグレードできる! 絶対に欲しい!」

「よし、交渉してみるか」


 ポンタが族長に事情を話すると、族長は快く頷いた。


「村の恩人の頼みとあらば、断る理由などありませぬ。村の水力鍛冶場も、レッドミスリルも、どうか自由にお使いくだされ」

「恩に着るぜ、族長」


 こうして、ポンタの持つ現代兵器の知識と、天才的な錬金鍛冶師であるルルの技術を融合させた、大掛かりな近代化改修アップグレードが始まった。

 滝の轟音に混じって、鍛冶場から甲高い金属音が鳴り響く。


「まずは師匠の武器の弾丸からだね! レッドミスリルを弾頭に加工して……高圧縮した魔力を込める!」


 完成したのは、アサルトライフル用の『徹甲魔力弾アーマーピアシング』。硬い外殻や魔力障壁すらも強引に貫通する特殊弾頭だ。


「次はヒルデの変形ガントレットだよ! 表面にレッドミスリルのコーティングを施して、硬度を上げつつ極限まで軽量化する!」

「おお……! これは素晴らしいな、ルル。これほど頑強でありながら、羽のように軽い。我が地龍八極拳の踏み込みが、さらに鋭くなるぞ!」


 真新しく赤く輝くガントレットを装着し、ヒルデが空の軌跡を殴りつけるように素振りをすると、ヒュゴォッ!と風を裂く恐ろしい音が鳴った。


「さて、最後はガロ! ちょっとその剣を貸して」

「え? あ、ああ……」


 ルルは、ガロが腰に差していた刃こぼれだらけの長剣を受け取ると、容赦なく鍛冶の炉へと放り込んだ。


「ああっ!? お、俺の剣が!」

「あんなナマクラじゃ、この先の戦いにはついてこれないよ。じいちゃん程じゃないけど、ルルだって刀鍛冶も出来るからね! 最高の剣に打ち直してあげるから、ちょっと待ってて」


 数時間後。ルルがガロに手渡したのは、刃の芯にレッドミスリルが組み込まれた、美しくも禍々しい『紅魔の長剣』だった。


「こ、これは……なんという魔力の流れだ。それに、信じられないくらい手に馴染む。俺なんかが、こんな名剣を貰っていいのか……?」


 ガロが震える手で長剣を握りしめると、ルルはふふん、と得意げに胸を張った。ポンタも満足げに頷く。


「ルル、最高の仕事だ。……だが、せっかくの装備も使わなきゃ意味がないな」


 ポンタが視線を向けた先には、重い足取りでこちらへ向かってくる族長の姿があった。村人たちは助かったというのに、その顔は全く晴れていない。


「ポンタ殿……。実は、根本的な問題が解決しておらんのです」

「寄生虫の発生源の話か?」


 ポンタの問いに、族長は深く頷いた。


「ええ。数週間前から、あの滝のさらに上流にある『聖なる水脈の洞窟』から、淀んだ黒い水が混じるようになったのです。しかも、洞窟の奥には……恐ろしいプレッシャーを放つ『何か』が棲み着いておるようでして」


 その言葉を聞いた瞬間、ポンタの横に立てかけてあったエリスの杖から、ポワッと光の粒子が溢れ出し、世界樹の精霊ユーグが姿を現した。


「ポンタ! 地下の水脈は、母様(世界樹)の根っこに繋がってるんだよ! その黒いお水、多分すごく悪いものだ!」

「……なるほどな」


 ポンタは首元に下げたアイゼンのドッグタグを、服の上から強く握りしめた。

 アイゼンが遺した言葉。

 ――『同郷の友が道を違えた。あいつの暴走(汚染)は、俺が止めなきゃいけない』


(アイゼンが追っていた『汚染』……。それが今、帝国が世界樹から魔力を奪うために流し込んでいるこの黒い水と同じものだとすれば。あのバカげた技術力といい、帝国の裏には間違いなくアイゼンの追っていた『何か』が絡んでいる)


 自然発生した魔物ではない。これは間違いなく、帝国の悪意ある人為的な汚染だ。


「帝国が絡んでるなら、放置はできねえ。それに、水脈がやられたままじゃこの村もいずれ死ぬ。……よし、その元凶、俺たちがぶっ潰してやる」


 ポンタの言葉に、ヒルデが闘志に満ちた笑みを浮かべてガントレットを打ち合わせた。

 ポンタはアイテムボックスを開き、狭い洞窟での閉鎖空間戦闘(CQB)を想定した装備を取り出していく。

 暗闇を見通す『暗視ゴーグル』。そして、面制圧力に優れた『タクティカルショットガン』を背中に背負う。


「道中のザコは、こいつらで吹き飛ばす。……だが、奥にいるデカブツのトドメには、こいつを使う」


 ポンタが最後に取り出したのは、アルメニアでルルやボルグと共に開発した、巨大な筒状の新兵器だった。


「それは……?」

「『RPG-7(対戦車擲弾発射器)』だ。分厚い装甲ごと内部をぶち抜く、俺の新しい切り札さ。こいつの初陣には、うってつけの的だ」


 ポンタが凶悪な笑みを浮かべて兵器を肩に担ぐと、真新しい紅魔の長剣を腰に差したガロが、静かに一歩前へ出た。


「ポンタ。俺も案内役として同行する。……いや、同行させてくれ」

「足手まといになったら置いてくぞ、ガロ」

「ああ、分かってる」


 エリス、ルル、ミリーナも各々の武器と魔法の準備を整え、ポンタの背後に並び立つ。完全に回復した村は、もう警護に残る必要もない。


「ニアは村の子供たちと一緒にお留守番だ。いい子にしてろよ」

「うんなの! ポンタお兄ちゃんたち、がんばってなの!」


 大きく手を振るニアに見送られ。

 ポンタ率いる討伐部隊は、轟音が鳴り響く暗い洞窟の入り口へと足を踏み入れた。

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