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滝の集落の危機。展開せよ、野戦病院

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!

 轟音を立てて流れ落ちる壮大な滝と、赤土の大地に立ち並ぶティピー(円錐形のテント)群。

 大自然の神秘を感じさせる『滝の集落』へと足を踏み入れたポンタたちだったが、そこには本来あるべき活気も、長旅の客を迎える歓迎の空気も一切なかった。


「……様子がおかしいですね。誰も外に出てきません」


 エリスが不安げに周囲を見渡す。

 マルコが集落の中心にある一際大きなティピーへ声をかけると、深く皺の刻まれた顔を持つ老齢の男――人族であるこの集落の族長が、重い足取りで姿を現した。


「よくぞ参られた、マルコ殿。……そして見慣れぬ客人たちよ。本来なら盛大な宴で歓迎すべきところだが、今はそれどころではないのだ」


 族長が重く沈んだ声で語ったところによると、現在この集落では、峡谷の淀んだ水脈から発生した『水棲寄生虫キャニオン・パラサイト』による奇病が蔓延しているという。

 過酷な環境を生き抜いてきた屈強な戦士や、小さな子供たちが寄生虫に体を蝕まれ、ティピーの中で高熱に苦しんでいる状態だった。


「うぅ……あぁ……」


 近くのティピーから、ひどく苦しそうなうめき声が漏れ聞こえてくる。

 その声を聞いた瞬間、エリスは誰の指示を待つこともなく、真っ直ぐに族長の元へ歩み出た。


「私に、診せてください!」

「お嬢ちゃんは……?」

「彼女は奇跡の治癒魔法の使い手だ。任せてやってくれ」


 ポンタが背中を押すと、族長は藁にもすがる思いで頷き、エリスをティピーの中へと案内した。


「……ダメだ。各テントを回って治療してたんじゃ埒が明かねえ」


 中の様子を確認したポンタは、即座に踵を返して口を開いた。


「全員を一箇所に集める必要がある。寄生虫が原因なら、衛生面を考えても完全に清潔な場所に集めて治療するのが望ましい」


 ポンタの頭の中に、前世で使っていたアイテムの記憶が蘇る。大人数でのミッションや大規模災害を想定してストレージ(アイテムボックス)に放り込んでいた、あれだ。


「ここより、我がパーティーは広場に野戦病院フィールドホスピタルを展開する! みんな、下がってろ!」


 ポンタがアイテムボックスを開放すると、集落の広場に巨大な漆黒の塊が出現し、バサァッ!と音を立てて自動展開した。

 それは、ミリタリー仕様の『タクティカルテント(大)』だった。

 驚く族長たちをよそに、ポンタはテントの入り口を開け放つ。内部には等間隔に並べられた二十台の簡易ベッドと、応急処置に必要な医療設備が完璧に揃っていた。


「ミリーナ、マリーとシルフィを呼んでくれ! テントの中をさらに完璧な環境にする!」

「はいっ! ……清らかなる水よ、吹き抜ける風よ、私の呼びかけに応えなさい!」


 ミリーナが床に魔法陣を描き、魔力を注ぎ込む。空間が揺らぎ、水と風の精霊姉妹が姿を現した。


「マリー、無菌の純水を生成してこのテント内を清めてくれ。シルフィは俺の持ってる魔石エアコンと連動して、中の温度と湿度を常に一定に保つんだ」

「はぁい、お水でピカピカにしますねー」

「任せなさい! 悪い空気は全部外に追い出してあげるわ!」


 精霊たちの力と現代の野戦テントが合わさり、土埃の舞う荒野の集落に、完璧に衛生管理された『クリーンルーム(無菌室)』が即席で完成した。


「よし! ヒルデは力仕事だ、各テントから患者をこっちへ運んでくれ! ルル、ミリーナはエリスの治療のサポートに回れ!」

「うむ。ここは我に任せておけ。ルル、ミリーナ、中のことは頼んだぞ」

「ニアも手伝うのー!」

「おお、助かるぞニア。じゃあ、水やタオルの運搬と、患者の誘導を頼む」

「うんなの! ニア、いっぱいはたらくの!」


 元気よく両手を上げるニアに、ポンタは頼もしそうに頷いた。


「任せて師匠! ほら、ミリーナ、ニア、ルルたちも急いで準備するよ!」

「はいっ! ポンタ様、皆さん、患者さんたちはこっちの清潔なベッドへ!」


 屈強なヒルデが次々と村人たちを巨大な野戦病院へと運び込み、ミリーナとルルが素早くベッドへ寝かせていく。その間を縫うように、ニアが小さな体で一生懸命に水やタオルを運んで患者たちを看病して回った。

 エリスは一人ひとりの額に手を当て、懸命に治癒魔法ヒールを施していった。淡い光が患者を包み込み、異常な高熱が嘘のように引いていく。

 その神々しい聖女の姿と、突きた現れた巨大な魔法の施設、そして懸命に動く少女たちの姿に、マルコや集落の人々が息を呑んで祈りを捧げた。


「高熱と痛みは抑え込めます。解毒の『キュア』の魔法で血中に回った毒も浄化できるのですが……」


 汗を拭いながら、エリスが悔しそうに唇を噛む。


「寄生虫という特殊な状態異常のうえ、虫自体が強い魔力耐性を持っています。私の魔法だけでは効きが悪く、完全に駆除しきれません……!」

「その通りだ。熱を下げても、数日すればまたぶり返す」


 族長が重々しく頷いた。


「完全に駆除するには、特効薬の解毒剤が必要だ。その材料となる『紅脈苔レッドベイン・モス』は、あの巨大な滝の裏側の、滑る断崖絶壁にしか自生しておらん。だが、壁を登れる集落の戦士たちは皆、倒れてしまってな……」

「なら、俺が採ってくる」


 ポンタが即座に名乗り出た。すると、ポンタの背後から静かな声が響いた。


「……俺も行く」


 マルコの護衛である、狼の青年ガロだった。彼は刃こぼれした長剣を腰に差し直し、ポンタを真っ直ぐに見据えた。


「目の前で苦しんでる子供たちを見過ごすわけにはいかない。それに、これはあんたたちに命を救われた恩返しだ。俺の獣人としての身体能力なら、絶壁でも足手まといにはならないはずだ」

「ガロ……! そうか。恩人殿、どうか彼を連れて行ってやってくだされ! きっとお役に立ちますぞ!」


 主であるマルコも力強く頷き、ガロの背中を押した。


「……いい覚悟だ。よし、ガロ。俺についてこい」


◇ ◇ ◇


 轟音を立てる巨大な滝の頂上。

 激しい水しぶきが舞い上がり、下を覗き込めば目が眩むような断崖絶壁が口を開けている。しかも岩肌は、長年の苔と水流によってぬるぬると滑る最悪のコンディションだった。


「ポンタ、ここからどうやって滝の裏へ降りる気だ? 掴まる場所なんてないぞ」


 ガロが滝壺を見下ろして唸る中、ポンタはアイテムボックスから漆黒の『タクティカルロープ』と、頑丈な『ハーネス』、そして『カラビナ(金属リング)』を取り出した。


「素手で降りるわけねえだろ。今からお前に、特殊部隊の『ラペリング降下』を叩き込む」


 ポンタは手際よく頑丈な岩にロープの支点を作り、ガロの腰にハーネスを装着させ、カラビナにロープを通した。


「ロープの摩擦を利用して、壁を蹴りながら降下する。お前の脚力なら十分可能なはずだ。行くぞ!」


 ポンタが崖に背を向け、迷うことなく絶壁へと飛び出した。ガロも一瞬目を見開いたが、すぐにポンタの動きを真似て壁を蹴る。

 轟音の滝の裏側。薄暗く滑る絶壁を、二人の男が命綱一本で垂直に駆け下りていく。獣人の驚異的な身体能力を持つガロは、すぐにラペリングのコツを掴んでいた。


「ガロ、三時の方向だ! 赤く光る苔の群生地がある!」

「見つけた! ……だが、気をつけろ! 何か来るぞ!」


 ガロの野性の勘が警告を発した直後、滝の裏側の岩壁にへばりついていた巨大な水棲トカゲが、二人の侵入者に気づいて鋭い牙を剥いた。


「チッ、邪魔すんな!」


 ポンタはロープから片手を離し、太もものホルスターからサプレッサー(減音器)付きのタクティカルハンドガンを抜き放った。


 プシュッ! プシュッ!


 滝の轟音にかき消されるほどの静かな発砲音が二度鳴り、水棲トカゲの眉間と心臓を正確に撃ち抜く。絶命した魔物が滝壺へと落下していくのと同時に、ガロが絶壁を強く蹴り上げた。

 ガロは空中で大きくスイングし、紅脈苔の群生地に張り付くと、持っていたナイフでごっそりと苔を削り取った。


「やったぞ! 採れた!」

「上出来だ! 急いで戻るぞ!」


◇ ◇ ◇


「ルル、材料は採ってきた! あとは頼む!」

「任せて師匠! 錬金術の釜、フル稼働させるよ!」


 野戦病院に駆け込んだポンタから苔を受け取ると、ルルは瞬く間に錬金術で成分を抽出し、見事な特効薬のシロップを完成させた。

 ミリーナとルル、そしてニアが患者たちに特効薬を飲ませ、その直後にエリスが仕上げの治癒魔法を施していく。


 ――数時間後。


「……お母、さん……」


 ベッドに寝かされていた小さな子供が、ゆっくりと目を開けた。

 荒かった呼吸は落ち着き、顔には血色が戻っている。体内の寄生虫は完全に駆除されたのだ。


「おおぉ……っ! 治った! 治ったぞぉっ!」


 集落の人々が次々と立ち上がり、感極まって涙を流し始めた。目を覚ました子供たちが、「ありがとう!」とエリスやニアに抱きつく。


「本当に、本当になんとお礼を申し上げればよいか……。貴方方は、我々部族の恩人だ」


 族長が深く頭を下げ、ガロやマルコも安堵の笑みを浮かべている。

 ポンタは汚れたタクティカルグローブを外し、小さく息を吐き出した。


「よく頑張ったな、エリス。ニアも。お前たちのおかげで、みんな助かったぜ」


 ポンタがポンポンと頭を撫でると、エリスとニアは最高に嬉しそうな笑顔で微笑んだ。


「はいっ! ……ポンタさんや、みんなが助けてくれたからです」

「えへへー、ポンタお兄ちゃんに褒められたなの!」


 テントの外に出ると、滝の水しぶきが夕日に照らされ、黄金色に輝いていた。

 危機を乗り越え、ようやく本来の穏やかさを取り戻した『滝の集落』。

ポンタたちの長旅の休息は、ここからようやく始まるのだった。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


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