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赤土の大峡谷。岩場越えと強行突破

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!


 アルメニアを出発してから数日。深い森を抜けた一行の視界に、圧倒的な光景が飛び込んできた。


「こ、これは……なんというスケールだ」

「見渡す限り、真っ赤な岩と大地です……!」


 御者台の横から身を乗り出したヒルデとエリスが、息を呑んで声を上げる。

 視界の果てまで続く、乾いた赤茶けた大地。そして、天を突くようにそびえ立つ無数の巨大な岩柱。まるで星そのものが切り裂かれたかのような、雄大な大峡谷レッドキャニオンが広がっていた。


「ここから先はマジで道がねえな。しっかり掴まってろよ!」


 ポンタが手綱を引くと、二羽の走鳥が甲高い鳴き声を上げ、赤土の大地を力強く蹴り出した。

 峡谷の底は、巨大な亀裂や岩が乱立する天然の迷路だった。やがて、一行の行く手を完全に塞ぐように、崩落した巨大な岩の山が立ちはだかった。


「ポンタ様、道が塞がってます! 迂回しますか!?」


 後方からミリーナが声をかけるが、ポンタは不敵に口角を上げた。


「迂回はしねえ。このまま岩を登るぞ」


 ポンタは手綱を巧みに操り、オリジナルアカマル号を巨大な岩の斜面へと真っ直ぐ突っ込ませた。

 ガコンッ!と車体が大きく傾くが、独立懸架サスペンションが限界まで伸び縮みし、岩の凹凸に合わせてタイヤをピタリと接地させる。マッドテレーン仕様の分厚いブロックタイヤが岩肌にガッチリと食い込み、装甲馬車はまるで生き物のように、急斜面を這い上がっていく。


「うおおっ!? 車体がこんなに傾いているのに、中は全然平気だよ師匠!」


 車内からルルの興奮した声が響く。オフロードの華『ロッククローリング』による極限の岩場越えだ。

 巨大な岩山を乗り越え、切り立った崖の間の細い上り坂(峠道)に差し掛かった、その時だった。


「だめなの! 岩の影から、いっぱい悪い子たちが来るなの!」


 獣人のニアが耳をピンと立てて叫ぶ。

 直後、赤土に擬態していた峡谷の凶悪な魔物、『キャニオン・ラプトル』の群れが、崖の上や死角から凄まじい速度でなだれ込んできた。鋭い鉤爪と牙を持つ、恐竜のような魔物だ。


「この地形で立ち止まったら包囲される。強行突破するぞ! ルル、手綱を代われ!」

「任せて師匠! ゴリゴリに踏み潰してあげる!」


 機械と操縦が大好きなルルが、目を輝かせて御者台に飛び乗る。

 ポンタはすぐさまアイテムボックスからアサルトライフルを取り出し、車体のルーフの銃眼から身を乗り出した。


「ポンタ様、右舷は私が!」


 ミリーナも愛用の弓を構え、反対側の窓から身を乗り出す。


「シルフィ、サポート頼む! お前の魔法を直接ぶち込むと崖が崩れる恐れがある!」

「分かってるわ! 個別撃破のエンチャントね、任せなさい!」


 シルフィが指を鳴らすと、高圧縮された風の魔力がミリーナの矢に纏わりついた。崖崩れを防ぐための、貫通力に特化した風と弓の複合技だ。


 ミリーナは、自身のウサギの耳を覆うイヤーマフへと意識を集中させた。

 彼女が属する『ルナ一族』特有のユニークスキル『地獄耳ラビットイヤー』は、敵の足音だけでなく、周囲の人間の微かな殺意や感情までも「音」として読み取ってしまう。かつての彼女は、ダダ漏れに入り込んでくる周囲の感情という雑音ノイズに、過敏な能力ゆえにひどく苛まされていた。

 しかし、それも過去の話だ。

 今彼女が身に着けているのは、パーティーへ正式加入した際にポンタたちからプレゼントされた特注の高性能イヤーマフ。日常の余計な雑音をすべて遮断し、敵意や殺意にのみ鋭く反応するよう調整された、彼女にとって最高の魔道具デバイスである。


「……そこです!」


 頭上の死角から襲い掛かろうとしたラプトルへ、ミリーナが振り返りざまに矢を放つ。風のエンチャントを帯びた矢は、凄まじい速度で岩陰の敵を正確に射抜いていく。敵の殺意を事前に察知する彼女に死角など存在しない。ミリーナの弓の腕が、この大峡谷で完璧に冴え渡っていた。


 同時に、ポンタの構えるアサルトライフル『M4A1』が火を吹いた。

 それはかつて、彼が『次元航行船ダルマ』の姿だった時に魔力で生成した重火器を、現在の人型サイズに合わせて具現化し直したものだ。本気の魔力を注ぎ込んで放てば完全なオーバーキルとなり、この崖ごと崩落させてしまう。

 そのため極限まで威力を調整しての射撃だったが、それでも放たれる魔力弾は、キャニオン・ラプトルの硬い外皮を紙切れのように易々と貫く、恐るべき貫通力を誇っていた。


 タタタタタタッ!!


 乾いた銃声が大峡谷に木霊し、熱い薬莢がチャキチャキとルーフに弾け飛ぶ。精密なフルオート射撃が、飛びかかってくる魔物の群れを空中で次々と蜂の巣にしていく。

 ルルの荒っぽいが的確な神業ドライブに合わせ、ポンタとミリーナのドライブバイ(車上戦闘)が群れを蹴散らし、アカマル号は土煙を上げて峠を猛スピードで駆け抜けた。


◇ ◇ ◇


「ヒャッハー! 頂上サミット到達だぜ!」


 群れを完全に振り切り、峠の頂上へ飛び出した一行の視界が、一気に開けた。

 眼下には、夕日に照らされて燃えるように赤く染まった、広大な大峡谷のパノラマ絶景が広がっている。


「ここで野営にする。今日は長旅の垢を落とすぞ」


 ポンタが車体の横に回ると、上部の収納からサイドオーニング(日よけのロールテント)を引き出し、広大な日陰を作った。そこに折りたたみ式のチェアやテーブルを展開し、リラックス空間を一瞬で作り上げる。

 さらに、反対側の車体側面からは別のオーニングを展開し、目隠しのテントを張った。


「こっちのシャワーからお湯が出るように設定しておいた。マリーと火の魔石の連携ギミックだ。順番に使ってこい」

「お、お湯のシャワーですか!? こんな荒野のド真ん中で!?」

「師匠、天才すぎるよ!」


 ヒロインたちは大喜びでテントへ駆け込み、温かいお湯を浴びて長旅と戦闘の汗を流した。


 すっかり日が落ち、満天の星空が大峡谷を包み込む頃。

 オーニングの下では、パチパチと焚き火が燃えていた。


「今日の野営飯は、ハンバーガーだ! 濃厚なチーズと、ピリッと辛いチリソースを入れた俺特製だぜ。デカいから大口開けて食えよ」


 こんがり焼けたバンズに、分厚いオーク肉のパティ、とろけるチーズが挟まれた凶悪な食べ物を配る。


「むぐっ! はふっ……こ、これは! お肉の肉汁と辛いそーすが混ざり合って、たまらない美味しさです!」

「ポンタ様ぁ〜、ワインにも最高に合いますぅ〜」


 ヒルデが口の周りにソースをつけながら豪快にかぶりつき、すでにワインを何杯も空けたミリーナがへべれけになって笑っている。

 その横では、ルルが食事もそこそこにキャニオン・ラプトルの素材を使った変なメカの図面をいじり倒し、ニアは走鳥たちのふわふわの羽毛に埋もれて、安心しきった顔で寝息を立てていた。


 そんな賑やかな仲間たちを見守りながら、ポンタは焚き火から少し離れた場所で、夜空を見上げていた。


「ポンタさん」


 ふわりと石鹸のいい香りを漂わせて、エリスが隣にやってきた。彼女はポンタの隣に座ると、視界いっぱいに広がる星屑の川を見上げて、ほうっと息を吐いた。


「すごいですね……。王都にいた頃は、空にこんなにたくさんの星があるなんて、想像もしていませんでした」

「大気の汚れも、街の光もないからな。……エリス、旅は疲れないか?」


 ポンタが優しく尋ねると、エリスはふるふると首を横に振った。


「いいえ。ポンタさんが作ってくれたこの馬車のおかげで、毎日が驚きと楽しさでいっぱいです。それに……」


 エリスは少しだけポンタの肩に身を寄せ、柔らかく微笑んだ。


「ポンタさんや、みんなと一緒に見るこの景色は……私の一生の宝物です」

「……そうか。なら良かった」


 ポンタはエリスの銀色の髪をそっと撫でた。

 アイゼンが残したドッグタグの謎、帝国の脅威、そして汚染されゆく大地。これから先、過酷な戦いが待っていることは間違いない。

 だが、この星空の下で笑い合う彼女たちの居場所は、何があっても俺が護り抜く。


「世界はまだまだ広いぜ、エリス。これからも、いろんな景色を見に行こうな」

「はいっ……!」


 広大な赤土の大地を吹き抜ける夜風は、どこまでも優しく、彼らの前途を祝福しているかのようだった。

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