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オーバーランドの極上野営と、精霊が語る前家主の謎

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!

アルメニアの街を出発し、数日が経過した。

 整備された街道はとうの昔に途切れ、現在のオリジナルアカマル号は、巨大な岩やぬかるみが続く過酷な獣道を進んでいた。


「ギェェェェッ!」


馬を優に上回る巨体を持つ二羽の走鳥が、強靭な脚力で泥濘ぬかるみを蹴り飛ばす。

 普通の馬車なら一発で車輪が埋まり、スタック(立ち往生)してしまうような最悪の路面だが、マッドテレーン仕様の分厚いタイヤは確実に地面を噛み、独立懸架サスペンションが荒地の衝撃を滑らかに吸収していく。


「すごいな……外はあんなに悪路なのに、中は本当に快適だ」


御者台から手綱を操りながらキャビンの中を覗き込み、ポンタは感嘆の息を漏らした。

 車内では、エリスやミリーナたちが備え付けのふかふかなベッドやソファで談笑している。冷え込み始めた外気も、ブリザードコングの毛皮から作った断熱材と魔石エアコンのおかげで完全に遮断されていた。


やがて、開けた森の奥に美しい湖畔が見えてきた。


「よし、今日の野営はここにするぞ」


ポンタが走鳥の手綱を引き、湖畔の平らな場所にアカマル号を停める。

 外に出たヒロインたちが大きく伸びをする中、ポンタは車体の側面に回り込んだ。


「さて、本日のキッチンを展開するとしようか」


ポンタが装甲のロックをカチャリと外す。すると、車体の側面サイドパネルがバタンと下へ開き、フラットなステンレス張りの調理台とシンクが現れた。さらに奥のスペースには、魔石駆動のガスコンロと冷蔵庫が綺麗に収まっている。


オフロードキャンピングトレーラーの概念を組み込んだ、スライド式のドロップダウン・アウトドアキッチンである。


「おおぉーーっ!!」


今までタクティカル野営セットを使っていた仲間たちから、一斉に歓声が上がった。


「す、すごいですポンタさん! 車の壁が一瞬で台所になっちゃいました!」

「師匠、このギミック最高に美しいよ! 収納と実用性の完璧な融合だね!」


目を輝かせるエリスとルルを尻目に、ポンタはすぐ隣の冷蔵庫からミリーナとヒルデが市場で調達してきた新鮮な食材を取り出す。


「今日の野営飯は、俺の特製パスタだ。オーク肉のパイ包みと、赤ワインも開けるぞ」


この世界には、まだ『パスタ』という麺類の概念が存在していなかった。

 ポンタが手際よく茹で上げた麺に、濃厚なミートソースと、チーズと卵をたっぷり使ったカルボナーラの二種類を絡めていく。ニンニクと肉の焼ける匂いが、静かな湖畔に漂った。


「さあ、冷めないうちに食ってくれ」


取り分けられた皿を受け取り、エリスがフォークでパスタを口に運ぶ。

 その瞬間、エリスの瞳が見開かれた。


「んんっ……!? な、なんですかこれっ! 麺に濃厚なお肉の旨味が絡みついて……美味しい、美味しすぎますっ!」

「うむむっ、この『かるぼなーら』という白い料理、チーズのコクと黒胡椒の刺激が絶妙だな! 赤ワインが止まらんぞ!」

「ポンタ様、おかわりありますか!? 私、これならいくらでも食べられちゃいますー!」


ヒロインたちが未知の食感と旨さに悶絶する中、ポンタも自分の分のカルボナーラを豪快に啜り込んだ。


「うめええええっ!!」


久しぶりに味わうジャンクで暴力的な炭水化物の旨味に、ポンタも思わず叫び声を上げる。やはり野営で食う飯は最高だ。


ふと視線をやると、少し離れた場所でニアが走鳥たちにご飯をあげていた。

 雑食で何でも食べる走鳥だが、特にカルボナーラが気に入ったようで、巨大な嘴でガツガツと皿をつついている。


「こらこら、順番なの。ゆっくり食べるなの。おかわりはいっぱいあるなのー」


ニアが優しく撫でながら語りかけると、走鳥たちは嬉しそうに「クルル」と喉を鳴らして応えた。


「すごいな、ニアは。昔から動物と会話ができるのか?」

「うんなのー。鳥さんたち、パスタ美味しいって喜んでるなの!」


満面の笑みで答えるニアを見て、ポンタは感心したように頷いた。すると、脳内でソフィアのアナウンスが響く。


『補足。通常、獣人は高い身体能力と五感が優れた個体は多いですが、明確に動物と意思疎通(会話)ができる能力は一般的ではありません。ニアには魔獣使い(テイマー)としての特異な素質があるものと推測されます』


(テイマーか。確かに、あの暴れ鳥を一瞬で手懐けたのは異常だったからな……ニアの奴、とんでもないポテンシャルを秘めてるかもしれないな)


そんなことを考えながら、ポンタはふと思いついた。


「そうだ、聞きたいこともあったし、あいつらも呼ぶか。ミリーナ、シルフィとマリーを召喚してくれないか」

「はい、喜んで!」


ミリーナが魔力を練り上げると、空間が揺らぎ、風と水の精霊姉妹が姿を現した。


「なになに〜! 今度はどんな敵をやっつければ良いのー! 私に任せなさい!」


やる気満々で両手に風の刃を纏わせて飛び出してきたシルフィ。しかし、目の前に広がる穏やかな宴の光景と、パスタを頬張るポンタたちを見て、ズコーッ!と盛大にずっこけた。


「ちょっと、戦闘じゃないの!?」

「あらあら〜、何やら良い匂いがします〜。お食事ですか〜?」


ずっこける姉の横で、マリーがほわほわと微笑みながらパスタを見つめている。

 さらに、馬車の脇に立てかけてあった聖樹の枝杖からポワッと光が漏れ、ユーグもひょっこり顔を出した。


「僕も混ぜて〜!」

「ああ、お前らも腹減ってるだろ。一緒に食おうぜ」


ポンタが追加でパスタを取り分けると、精霊たちも大喜びで宴に加わった。

 賑やかな食事の時間が過ぎ、食後のワインを飲みながら一息ついた頃。ポンタは服の下から、ギデオンから渡された『ドッグタグ』を取り出した。


「シルフィ、マリー。お前たちの前の主人……アイゼンについて聞きたいんだが」


ポンタの手にある金属板を見た瞬間、パスタを食べていたマリーが「あっ」と声を上げた。


「あ、それアイゼン様がいつも大事にしてた鉄の板ですー! 確か、お酒を飲むといつもそれを握りしめて泣いてました〜」

「やっぱり、アイゼンの遺品で間違いないか。……あいつは、どんな奴だったんだ?」


ポンタの問いに、シルフィが少し真面目な顔になって腕を組んだ。


「あの人は変人だったわ。『鉄の鳥が飛ぶ故郷』の話とか、『箱の中で人が動く魔法の板』の話ばかりしてて。……あとね」


シルフィはポンタを真っ直ぐに見つめた。


「『同郷の友が道を違えた。あいつの暴走(汚染)は、俺が止めなきゃいけない』って、ずっと環境の魔力異常を調べてたのよ。結局、志半ばで寿命が来ちゃったんだけどね」


(同郷の友……暴走と汚染……)


ポンタの脳内で、バラバラだったピースがカチリと音を立てて組み合わさっていく。

 現代の知識、ドッグタグ、そして帝国が引き起こしている環境汚染。

 かつてこの世界に次元航行船をもたらした『赤の賢者』と、前家主アイゼン。この二人が同じ地球からの転生者であり、何らかの深い繋がりがあった可能性は極めて高い。


(同郷の友が道を違えた……それがもし赤の賢者のことだとしたら、帝国の汚染とアイゼンの研究はすべて繋がってくる)


アイゼンは、その『友』の暴走を止めるために、この世界に残された時間と知識を注ぎ込んでいたのだろうか。そして、なぜこのドッグタグを遺したのか。

 今はまだ推測の域を出ないが、この金属板が単なるガラクタでないことだけは確かだ。


ポンタは冷たいドッグタグを強く握りしめ、静かに夜空の星を見上げた。


(……アイゼン。あんたが何を遺そうとしたのか、この旅の果てで見届けさせてもらうぜ)


ポンタの静かな決意は、焚き火の爆ぜる音に溶けて消えた。

 車内からは、遊び疲れて眠りについたエリスやニアたちの穏やかな寝息が聞こえてくる。

 謎は深まるばかりだが、仲間たちとの温かい日常だけは確実にここにある。ポンタは星空の向こうにある獣王国へと思いを馳せながら、穏やかな夜更けを過ごすのだった

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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