赤き弾丸と、銀のサポーター
【カクヨムコン参加中の話題作、ついに「なろう」解禁!】
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森の奥深く。
俺たちは今、俊敏な動きで知られる魔物『ゲイル・ウルフ』の群れと対峙していた。
「ポンタさん、右から来ます! 数は3!」
「オーライ、視えてるぜ」
エリスの声と同時に、俺は脳内のトリガーを引く。
ターゲットは、風のように森を駆ける狼たち。通常の銃撃では捉えきれない速度だ。
だが、今の俺には新しい手札(MOD)がある。
(モードチェンジ。『粘着弾』装填)
俺の体から発射されたのは、半透明の緑色のゲル弾だ。
それは着弾した瞬間に広がり、先頭を走っていたウルフの足を地面に縫い付けた。
「ギャンッ!?」
「止まったな。……次はこれだ!」
俺は即座に武装を切り替える。
全身から針を飛ばす魔獣『ニードル・ポーキュパイン』から奪った、広範囲制圧用のMODだ。
(『散弾』、ファイア!)
ズドォォン!!
空気が震える轟音と共に、無数の魔力の礫が扇状に放たれる。
回避行動を取ろうとした残りのウルフたちも、この面制圧の弾幕からは逃れられない。次々と蜂の巣になり、ポリゴン……ではなく光の粒子となって消えていく。
「ふぅ……。調子いいな」
俺は残心しながら、空中でくるりと回転した。
ここ最近の俺たちの冒険者ライフは、驚くほど順調だった。
あの夜……グレート・ボアに襲撃された夜から2週間。
俺はスライム系の魔物から敵を拘束する【粘着弾】を、針系の魔物からは【散弾】を習得した。
単発火力だけでなく、足止めや範囲攻撃といった戦術の幅が広がったことで、ダルマとしての殲滅力は飛躍的に向上している。
だが、成長したのは俺だけじゃない。
「ポンタさん! お疲れ様です!」
戦闘が終わると、エリスが駆け寄ってきた。
彼女の着ている革鎧やローブは、以前のボロ切れとは違う上質なものだ。
そしてその手には、以前立ち寄った武具屋で、頑固なドワーフの店主ボルグから破格で譲り受けた『聖樹の枝杖』が握られている。
俺が彼の鍛治技術に助言をして気に入られたこと、そして並の魔導師では魔力を吸い尽くされてしまうその『失敗作』を、エリスがその規格外の魔力量で完璧に制御して見せたことで手に入れた逸品だ。
エリスは今では、的確なタイミングでのヒールはもちろん、初級支援魔法【身体強化】を使いこなせるようになっていた。
実は、俺の【浮遊】は瞬間的な機動力は高いものの、最高速度を維持して動ける距離には限界があった。
だが、エリスの身体強化は、ダルマの俺にとっては「出力増強」のように作用する。おかげで高速戦闘を行える範囲が劇的に広がり、より立体的な立ち回りが可能になった。
まさに、相性抜群のバフだ。
ただし、あの夜に見せた絶対防御【聖盾アイギス】は、あれ以来一度も発動していない。
ソフィアの分析によれば、『感情値が限界突破した際の緊急防衛本能』がトリガーになっているらしく、平時の精神状態ではまだ制御できないようだ。
「うーん……やっぱり、出そうと思って出せるものじゃないですね」
「まあ、焦る必要はねぇよ。今のままでも十分役に立ってる」
俺の言葉に、エリスは「はい!」と嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔を見るたび、俺の中で「この子を守り抜く」という決意が、鋼のように固まっていくのを感じる。
***
探索を終えた俺たちは、見晴らしの良い河原で遅めの昼食をとることにした。
ここでの食事も、俺たちの日課であり、最大の楽しみの一つだ。
「さーて、今日のメインディッシュは……」
俺はインベントリ(収納空間)から、さっき倒したばかりの『ワイルド・ボア』の肉を取り出す。
前世の知識と【料理】スキルを組み合わせれば、野営料理もレストラン級に早変わりだ。
香草で臭みを消し、鉄板の上でジュウジュウと焼き上げる。仕上げに、果実を煮詰めた特製ソースをかければ完成だ。
「よし、出来たぞ。『特製ボア・ステーキ』だ」
「わぁぁ……! すごく良い匂いです!」
エリスが目を輝かせて、熱々の肉を頬張る。
「ん〜っ! 美味しいです! お肉が柔らかくて、ソースが甘酸っぱくて……!」
「だろ? たっぷり食って体力つけろよ」
「はい……! ポンタさんと出会ってから、毎日が夢みたいです」
エリスがふと、噛み締めるように言った。
以前のパーティでは、食事の時間こそが最も惨めな時間だったという。
罵声を浴びせられながら、味もしない固いパンを急いで喉に流し込むだけの作業。それが彼女にとっての「食事」だった。
今の彼女の顔からは、そんな悲壮感は消えていた。
自分の足で立ち、俺の隣を歩く、一人の冒険者の顔になっていた。
「ポンタさん! 今日は大漁ですね!」
「ああ、これならしばらく遊んで暮らせるぜ」
夕暮れ時。心地よい疲労感と満腹感と共に、俺たちは街へ戻り、冒険者ギルドの扉をくぐった。
換金して、明日の準備をしよう。
いつも通りの足取りで、エリスが軽やかに足を進める。
だが、今日はいつもと何かが違った。
ギルドの中へ数歩入った、その時だ。
彼女の背中に、ねっとりとした声が掛かった。
「……おいおい、見間違いかと思ったぜ」
その瞬間、エリスの全身が氷水を浴びせられたように硬直した。
忘れもしない。忘れることなどできるはずがない。
二年間、毎日のように罵倒と嘲笑を浴びせ続けてきた、あの忌まわしい声。
ドクンッ、と心臓が嫌な音を立てて跳ねた。
早鐘を打つような激しい鼓動が、耳の奥で鳴り響く。呼吸が一瞬で浅くなり、背筋に冷たい汗が伝うのが分かった。
嫌だ。見たくない。
だが、染み付いた恐怖は彼女の意思を無視して体を動かす。
恐る恐る、まるで錆びついた人形のような動きで振り返ったその先に――数人の男女が立っていた。
先頭にいるのは、巨大な大剣を背負った男。
その後ろには、嘲笑うような表情の女魔導師や目つきの悪い軽戦士、そして大斧を背負った巨漢の男もいる。
(……こいつらが、そうか)
俺は直感で悟った。
エリスにトラウマを植え付けた元凶。元・エリスのパーティ『鉄の牙』のリーダー、ガストンとその取り巻きたちだ。
「よぉ、役立たずの荷物持ち。まだ生きてたのか?」
ガストンの下卑た声を聞いた瞬間、エリスの体がビクンと跳ねた。
顔からは血の気が引き、俺を抱く手は小刻みに震えている。二年間の虐待で植え付けられた恐怖は、そう簡単には消えない。
ガストンたちの背後には、彼らの悪評を知りながらも関わりたくないと目を逸らす冒険者たちの姿がある。
かつての彼女なら、この冷たい空気の中で、ただ蹲って(うずくまって)泣いていただろう。
だが、今の彼女は違った。
エリスは震える足で懸命に踏みとどまり、俺を心の支えにするようにギュッと抱きしめる。
そして顔を上げ、涙目になりながらも、必死に彼らの目を見返したのだ。
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