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最強の動く拠点、オリジナルアカマル号の誕生

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!


「いいかボルグ、ルル。今回の馬車開発のキモは『車軸を固定しない』ことだ」


 アカマルハウスの離れの工房。ポンタは地面に広げた羊皮紙に、前世の記憶――オフロード車の足回りの構造を図解していた。


「車軸を固定しねえ!? そりゃどういうことだ旦那。馬車ってのは左右の車輪を一本の軸で繋ぐモンだろうが」


「それをやると、片方の車輪が岩に乗り上げた時に車体全体が傾いちまう。そこで、左右の車輪が独立して上下する『独立懸架どくりつけんかサスペンション』を採用する」


 ポンタは強靭なアームとコイルスプリングを組み合わせた機構を描き出す。


「なるほど……! 衝撃を個別のバネで吸収させるのか。こいつはたまげたぜ!」

「ルル、いけるよ師匠! 特級ゴムと鋼のバネなら、図面の通りの弾性が作れる!」


 ルルが目をバキバキに輝かせて魔法陣と数式を書き殴っていく。


「それとタイヤだ。泥や岩場を噛み砕いて進むため、接地面のブロックを深く、分厚くした『マッドテレーン仕様』にする。さらに、牽引する鳥が急旋回しても車体が横転しないよう、首根っこには全方位に回転する特殊な連結ジョイントを噛ませてくれ」

「ガハハ! 生きているうちにこんな面白えモンを打てる日が来るとはな!」


 職人魂に火がついたボルグのハンマーが、工房に甲高く鳴り響いた。


◇ ◇ ◇


 一方、アルメニアの街の市場では、長旅に向けた物資調達が進められていた。


「おじさん、この干し肉と香辛料、もう少し安くならない? 私たち、これからすっごく長い旅に出るの。ね?」


 元トップ受付嬢のミリーナが、持ち前の愛嬌と交渉術で商人たちと次々に値引き交渉を成立させていく。


「ははぁ、ミリーナちゃんの頼みとあっちゃあ仕方ねえ! 持ってけ泥棒!」

「ありがとうございますー! ヒルデさん、これお願いします!」

「うむ、任せておけ」


 屈強な騎士であるヒルデが、両手に抱えきれないほどの木箱や水樽を軽々と持ち上げている。


「ミリーナの交渉術、お見事だな。兵站へいたんは戦の要。これほど質の良い保存食や物資を安価で揃えられるとは、非常に頼もしい」

「えへへ、冒険者のサポートならお任せですよ! ポンタ様たちがすごい乗り物を作ってくれてるんですから、私たちもしっかり胃袋を支えないと!」


 二人は大量の物資を抱え、笑顔で拠点へと戻っていった。


◇ ◇ ◇


 足回りの製作をドワーフ組に任せ、ポンタはエリスや精霊姉妹と共にキャビン(居住区画)の製作に取り掛かっていた。


「ポンタさん、壁の隙間にこのフカフカの毛皮を敷き詰めるのですね?」

「ああ。以前雪山で倒したボス、ブリザードコングの毛皮だ。極寒の雪山でも、灼熱の砂漠でも耐えられる『完璧な動く拠点』にするための最高の断熱材になる。……まさかこんなところで役立つとはな」


『肯定します。ブリザードコングの体毛は、内部に極小の空洞を持つ中空構造となっており、極めて高い断熱性と保温性を誇ります。これを隙間なく充填することで、車外の気温を完全に遮断し、過酷な寒冷地等での結露も防ぐことが可能です。悪路を走破するオーバーランド車両の断熱材として、これ以上ない最高クラスの素材と推測されます』


(なるほどな。いくら足回りが頑丈でも、中が寒かったり暑かったりしたら『動く拠点』としては三流以下だからな)


 ソフィアの解析に内心で頷きつつ、ポンタは作業を進める。


「なるほど! これなら外の気温がどうであれ、快適に過ごせますね!」

エリスも一生懸命敷き詰めている。


 外観は装甲車のように無骨でイカつい漆黒の車体だが、一歩中に入ればそこは別世界だった。アイテムボックスの空間拡張技術を応用し、外から見るより遥かに広い空間が広がっている。

 壁には空調エアコン用の魔石が、そして小さなキッチンには水道用の水の魔石が設置されていた。


「シルフィ、マリー。それぞれ魔石に魔力を込めてもらえるか?」

「任せなさい! 私が魔力を込めれば、エアコンは一年は使い放題よ!」

「はぁい、こちらもお水は飲み放題ですよー」


 シルフィが風と温度を司る魔石に、マリーが水を生み出す魔石に、それぞれあっという間に膨大な魔力を充填していく。


(上位精霊の膨大な魔力……チートすぎるが、ありがたい!)


 これで快適な室温と、清潔な水が常に確保された。さらに、全員が足を伸ばして眠れる二段ベッドまで備え付けられ、長旅のストレスを極限まで減らす完璧な動く拠点が仕上がっていく。


 そして数日後。ついにオリジナルアカマル号が完成した日、ギルドから手配された動力源が庭に届けられた。


「ギ、ギルドマスターからの頼みの品、お持ちしましたぁっ!」


 ギルドの職員たちが必死に手綱を引いていたのは、馬を優に上回るほどの巨体と、強靭な太ももを持った二羽の巨大な『走鳥ガレアビアン』だった。


「ギェェェェッ!!」


 しかし、気性が荒いのか、走鳥たちは激しく暴れ回り、誰も近づくことができない。


「こりゃあ手強いな……」


 ポンタが首を掻いたその時、ちょこん、と前に出た影があった。


「だめなの。怖がらせちゃだめなの」


 獣人のニアだった。彼女は暴れる走鳥の前に丸腰で立つと、そっと両手を差し伸べた。


「大丈夫なの。誰もいじめないなの。一緒にお散歩に行くの」


 ニアから発せられる獣人特有の温かい波長。それに触れた走鳥たちは、嘘のようにピタリと暴れるのをやめ、ニアの小さな手にすりすりと顔を擦り付けた。


「すごい……一瞬で手懐けちゃった」

「いい子なの。ポンタお兄ちゃん、もう大丈夫なの!」


 エリスが目を丸くする前で、ニアが誇らしげに胸を張る。


「でかしたぞ、ニア。……さて、あとは俺の番だな」


 ポンタは御者台に飛び乗り、手綱を握った。

 FPSゲームにおいて、ビークル(車両)の操縦は必須スキルだ。手綱から伝わる鳥の挙動、サスペンションの沈み込み。ポンタの脳内で、それらがジョイスティックの操作感覚と完全にシンクロする。


「よーし……エンジンスタートだ」


◇ ◇ ◇


 ポンタは完成したアカマル号に仲間たちを乗せ、アルメニア郊外の荒れ地へとテストドライブに出た。


「ヒャッハー! 乗り心地はどうだお前ら!」


 ポンタが手綱を振るうと、走鳥が凄まじい脚力で荒野を爆走する。

 道なき道。巨大な岩が転がり、深い泥濘が口を開ける悪路へと、ポンタはわざと突っ込んでいく。

 外から見れば、分厚いマッドテレーンタイヤが激しく泥を跳ね上げ、独立懸架サスペンションがぐわんぐわんと狂ったように上下して衝撃を吸収している。


 しかし――。


「ポンタさん、信じられません……こんなに揺れないなんて!」


 キャビンの中で、エリスは目を輝かせていた。

 目の前のテーブルには、淹れたての紅茶が置かれている。窓の外の景色は激しく上下しているというのに、カップの中の水面は微かに波打つ程度だった。


「本当だな。まるで王都のふかふかの絨毯の上を走っているようだ。これなら、鎧を着たまま眠っても全く疲れが出まい」


 ヒルデも感嘆の声を漏らし、ミリーナやルルたちも大はしゃぎでベッドにダイブしている。


 その日の夜。

「今日は絶対にこの中で寝たいです!」というヒロインたちの強い要望により、庭に停めたアカマル号の中でささやかなプレお泊まり会が開かれた。

 ミリーナとヒルデが調達した食材で美味しい夕食を囲み、これからの長旅へ向けた期待に胸を膨らませる。


 そして、翌朝。

 朝日に照らされるアルメニアの正門前には、ギルドマスターのギデオンや魔術師団長のミランダ、そして大勢の冒険者たちが見送りに集まっていた。


「無茶だけはすんなよ、お前ら」


 ギデオンが葉巻を咥えたまま、片手を上げる。


「ポンタ様〜! 寂しくなったらいつでも私を召喚してくださいませね〜!」


 ハンカチを噛み締めて涙ぐむミランダに苦笑しつつ、ポンタは御者台で深く頷いた。


 服の下にある、冷たいドッグタグの感触を確かめる。

 前世の知識と異世界の技術。そして最高の仲間たちと共に作り上げた、この『最強の動く拠点』なら、どんな過酷な道のりも乗り越えていける。


「さあ、行くぞ! 次の目的地は獣王国だ!」


 ポンタの力強い声に応えるように、二羽の走鳥が甲高く鳴き声を上げた。

 圧倒的な走破性を誇る漆黒のオリジナルアカマル号が力強く土を蹴り上げ、彼らは新たな冒険の地へと出発するのだった。

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