アルメニアの英雄と、遺された認識票
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
「ギルドマスターに用がある。ちょっと通してくれ」
ポンタたちがアルメニアの冒険者ギルドに足を踏み入れると、喧騒に包まれていたロビーが水を打ったように静まり返り――直後、割れんばかりの歓声が爆発した。
「おおっ! ポンタたちじゃねえか!」
「王都の叙勲式から帰ってきたんだな! おかえり、俺たちの英雄!」
アルメニアを襲った未曾有のスタンピード。そこから一人の死者も出さずにこの街を救った彼らは、今やアルメニアの冒険者たちにとって絶対的な尊敬の対象だった。
顔見知りの冒険者たちが次々と声をかけてくる中、特に人だかりができていたのはエリスの周りだった。
エリスはあの戦いで、瀕死の重傷者たちを一瞬で癒すという奇跡を起こした。今や彼女は『奇跡の聖女』として絶大な人気を誇っている。
「エリス様、この前は本当にありがとうございました!」
「私も、エリス様のおかげで命拾いしました……っ!」
「俺なんて、食いちぎられた左手が生えたんだぜ!」
「あ、いえ、あの……私はただ、皆さんが無事で本当によかったです……っ」
次々と押し寄せる感謝の言葉に、エリスは顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに微笑んでいる。
その隣では、ルルが魔術師たちに取り囲まれていた。彼らはルルが使用したグレネードランチャーなどの未知の支援攻撃に興味津々だ。
「ルル殿! あの爆発魔法……いや、あの筒状の武器はいったいどんな構造で!?」
「えっへん! あれはねー、錬金の特殊な火薬をあの弾頭に配合することでー……」
目を輝かせて身振り手振りで説明するルル。
一方、ヒルデの周りには、分厚い鎧を着込んだタンク役の屈強な戦士たちが集まっていた。
「ヒルデ殿! あんたのあの土魔法と連動した鉄壁の防御、本当に圧巻でした!」
「俺たち前衛の鑑だ! どうか、俺たちの『姉御』と呼ばせて下せい!」
「あ、姉御だと……!? むぅ、少し気恥ずかしいが、貴公らにそう言ってもらえるのは誇らしいな」
ヒルデは腕を組み、まんざらでもない様子で戦士たちと肩を叩き合っている。
さらに、元トップ受付嬢のミリーナもまた、かつての同僚や冒険者たちに囲まれていた。
「ミリーナちゃん、こんなすごいパーティに居れてよかったね!」
「でもあのミリーナちゃんだからなぁ。ちゃんと役に立っている?」
「サボりのミリーナさんですからね〜」
「ちょっとやめてくださいよー! 今は少しは役に立ってるんですからー!」
ミリーナは頬を膨らませて抗議する。口では散々にいじられているが、彼女の放った凄まじい精霊魔法がアルメニアの窮地を救ったことは、ここにいる全員が知っている。からかいの言葉の裏には、愛されキャラである彼女への確かな親愛が込められていた。
誰もが笑顔でポンタたちを囲む、温かい空間。
しかし、そんな和やかな空気を切り裂くように、ギルドの奥から猛烈な勢いで突進してくる影があった。
「ポンタ様っ!!」
「うおっ!?」
ドスッ、という軽い衝撃と共に、むにゅっと柔らかな感触がポンタの顔面に押し付けられた。
魔術師団長ミランダである。彼女は周囲の目も気にせず、ポンタの顔を自身の豊かな胸に埋めるようにして抱きついていた。
「むぐぐ、ミランダ離れろ!」
「嫌ですわ〜! 久しぶりの再会ですわ〜!」
「むぐ、てかなんでお前がギルドに居るんだ? ここは城じゃねえぞ」
「そんなの、愛しのポンタ様が帰ってらっしゃったからに決まってますわ! ああ、この芳醇な魔力……更に磨きがかかってますぅ。やはり魔術師団に来ませんか? なんなら師団長の座はお譲りしますわ。むしろ私は、ポンタ様の生涯のパートナーとしてぇ……」
恍惚とした表情ですり寄ってくるミランダに、ポンタが息苦しさでもがく。
すかさずエリスがむすっとした顔でポンタの腕を抱き寄せ、ミランダから力ずくで引き剥がした。
「だーめーでーす! ポンタさんはわたしの……パーティーのなんですから!」
「そうそう! 師匠はうちのリーダーなんだからね!」
「我が主は渡さないぞ」
「ポンタお兄ちゃん連れてったらダメなのー」
ルルとヒルデ、さらにはニアも加勢し、ポンタを巡るわちゃわちゃとした奪い合いが始まる。
「……おい、お前ら。ギルドのど真ん中で騒ぐんじゃねえ」
騒ぎを聞きつけたのか、呆れ声と共に現れたのはギルドマスターのギデオンだった。
◇ ◇ ◇
一行はそのまま奥の執務室へと通された。
ギデオンは分厚いデスクに腰掛け、葉巻を燻らせながらやれやれと首を振った。
「俺が領主とギルド長を兼任してるだろ。緊急の案件の時はこちらに報告に来させてるが、今回は『お前さんが来ること』が緊急事態だったらしいな」
呆れ顔のギデオンに、ポンタは苦笑して肩をすくめた。
ふと、ギデオンの鋭い隻眼がポンタの背後に隠れるようにしているニアを捉えた。
「ほう。獣人とはこの国では珍しいな……。叙勲式に王都に向かっただけだってのに、また色々抱えてそうだな」
その言葉を皮切りに、ポンタは表情を引き締め、シリアスなモードへと切り替えた。
ポンタは特使としての使命、帝国の侵攻と邪神復活の危険性、そして最初の目的地が『獣王国』であることを簡潔に説明した。
「ニアの故郷を護るなの」
ニアの決意に満ちた言葉を聞き、ギデオンは小さく息を吐いた。
「そういうことなら……ほらよ」
ギデオンは机の引き出しをごそごそと漁り、一つの手帳のようなものをポンタに投げて寄こした。
「獣王国は排他的で厄介だ。昔馴染みのツテでこれを作っといた。向こうじゃ特使の肩書きより役に立つかもしれねえ」
「昔馴染みのツテね。……相変わらず顔が広いオッサンだ。ありがたく使わせてもらうよ」
通行証を受け取ったポンタに、ギデオンは地図を広げてトントンと指を叩いた。
「だが、獣王国までの道のりは甘くねえぞ。途中で街道は途切れ、そこから先は完全に獣道だ。馬車で行けるような場所じゃねえ。……向こうへ行くなら、馬の代わりに『走鳥』を手配しろ。ダチョウを一回りデカくしたような、走ることに特化した鳥だ。あいつらに荷車を引かせねえと、森の悪路は越えられんぞ」
そのアドバイスを聞いた瞬間、ポンタの脳裏に電流が走った。
走鳥に引かせる、悪路走破用の馬車。
ポンタの頭の中に、前世の記憶――オフロード四駆に使用されるゴツいマッドテレーンタイヤ、衝撃を吸収するショックアブソーバー、そして強靭なコイルスプリングの構造が次々と浮かび上がる。現代のオフロード車の技術を、ファンタジーの馬車に適用するのだ。
(ソフィア。俺の頭の中にあるサスペンションとタイヤの構造、ルルとボルグの技術なら再現可能か?)
『肯定します。マスターの構想データと、特級ゴム素材、およびドワーフの鍛冶技術を掛け合わせれば、極めて高い悪路走破性を持つ装甲馬車(オリジナルアカマル号)の開発が可能です』
ポンタはニヤリと笑うと、少し離れた場所にいたルルをちょいちょいと手招きした。
不思議そうに近寄ってきたルルに、ポンタはヒソヒソと耳打ちで「オフロード馬車の魔改造ギミック」の構想を伝える。
「っ……!! やる! やるやるーっ!! 絶対作りたいっ!」
機械的な開発やギミックが何より大好物なルルは、目をバキバキに輝かせて大興奮で飛び跳ねた。
「そういうわけだ。移動手段はなんとかなりそうだぜ、オッサン」
イタズラを思いついた少年のように不敵に笑うポンタを見て、ギデオンは「また何かとんでもねえことをやる気か」と、感心と呆れが入り混じった顔で盛大に溜息をついた。
「……数日、工房にこもる気だな。まぁいい。おっと、忘れるところだった」
ギデオンがおもむろに声をかけ、ポンタに小さな包みを渡した。
「商業ギルド長のゴルドーから預かったモンだ。あいつがお前さんにアカマルハウス……旧アイゼン邸を紹介した時、倉庫の整理で見つけたらしい。アイゼンの遺品だそうだ」
「アイゼンの?」
ポンタは包みを開け、中から出てきた一つの『ネックレス』に目を留めた。
「ん? この形は……ドッグタグにそっくりだな」
ポンタの呟きに呼応するように、脳内でAIソフィアが即座に音声アナウンスを流す。
『補足。この世界のネックレスは装飾品として宝石などがあしらわれるのが一般的です。全く宝石類を使わない、薄い金属板のみのこのデザインはかなり異質です。さらに材質を簡易スキャンした結果、微量のチタン合金の反応を検出。表面に打刻されているのは、軍隊の認識番号(ID)と推測される英数字の羅列です』
(チタン合金に、英数字のIDだと……?)
ソフィアの解析結果を聞き、ポンタの顔から笑みが消えた。
何の飾り気もない無骨なボールチェーンに、文字の刻まれた薄い金属板。それは紛れもなく、ポンタが前世のFPSゲームで何度も見てきた兵士の認識票だった。
(現代兵器に転用できるほどの錬金知識に、このドッグタグ。……何やら同郷の匂いがするな。もしかしたら、赤の賢者とも関連があるのかも知れない)
単なる偶然か、それとも明確な意志が遺されたものか。
一通り思考を巡らせた後、ポンタは小さく息を吐いた。
「……ドッグタグなら、首にぶら下げておかないとな」
ポンタは冷たい金属板の感触を確かめると、そのチェーンを自身の首にかけた。胸元に収まったドッグタグが、確かな重みを持ってポンタの決意を後押しする。
「数日待たせるが、準備ができたらすぐに出発するぞ。みんな」
力強く頷く仲間たちと共に、ポンタはアルメニアのギルドを後にした。
目指すは大陸南部の緑の領域、獣王国。彼らを乗せる『オリジナルアカマル号』の開発が、今まさに始まろうとしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
もし「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、 ブックマーク登録や、広告下の【☆☆☆☆☆】から評価ポイントを入れていただけると嬉しいです!
執筆の励みになります!
↓↓【☆☆☆☆☆】評価お願いします↓↓




