機械仕掛けの暗殺者と、揺るがぬ姫君
【第2章・王都編開幕!】
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カクヨムで話題を呼んだ注目作、なろうにて絶賛連載中!
※第1章(1〜49話)完結済み。通勤・通学のお供にどうぞ!
巨大なジャマーが不気味な脈動を響かせる地下空洞。
その中枢コアへと続く通路で、ポンタたち『アカマル』の前に、帝国の暗殺部隊『シャドウ』の幹部・ヴァイパーが立ち塞がった。
「小賢しい幻術だな。だが、我が魔眼の前では無意味だぞ、ネズミども」
ヴァイパーの機械化された両眼が、不気味な赤光を放つ。
彼の視覚には「生体マナ」と「熱源」を複合して捉える最新鋭のセンサーが組み込まれており、光の屈折を利用するだけの光学迷彩は完全に無効化されていた。
「……チッ、やっぱりそういうオチか」
ポンタは舌打ちと共に光学迷彩を解除し、サプレッサー(消音器)付きのハンドガンを真っ直ぐに構え直した。
広大な地下遺跡とはいえ、ここでオーバー火力の『タイタンモード』を使えば、天井が崩落して自分たちもろとも生き埋めになる。取り回しの良いハンドガンと近接格闘(CQC)で仕留めるしかなかった。
「死ねッ!」
ヴァイパーが両腕から超振動(高周波)のブレードを展開し、重装甲とは思えない異常な速度で踏み込んでくる。
その一撃は分厚い石柱を豆腐のように斬り裂き、ポンタの鼻先数ミリを掠めた。
「(……速え。だが、動きが直線的すぎる)」
ポンタは最小限のステップ(縮地)で凶刃を躱すと、すれ違いざまにヴァイパーの装甲の隙間へ向けて、音もなく三発の銃弾を叩き込む。
ガギィンッ!!
しかし、銃弾は硬質な金属音を立てて弾き返された。
「無駄だ。俺の装甲は並の魔術や物理攻撃を通さ――なっ!?」
ヴァイパーが嘲笑った次の瞬間、ポンタが床に向けて放り投げた『閃光弾』が炸裂した。
カァァァンッ!! という強烈な光と音響が、地下空間に乱反射する。
「ぐぅあぁぁッ!?」
高感度のセンサー眼を持つヴァイパーにとって、至近距離での閃光は致命的なノイズとなった。視界が真っ白に焼き切れ、演算機能が一瞬フリーズする。
ポンタはその隙を逃さず、壁や床の『跳弾』を利用した変則的な軌道で、死角から的確に関節の駆動部へと銃弾を撃ち込んでいく。FPSのトッププロだからこそ成せる、極限の三次元戦闘だ。
「おのれェ……ッ!!」
視覚を一時的に潰されながらも、ヴァイパーはポンタの無尽蔵の身体能力と、撃ち出される魔力弾の異常な威力に違和感を覚えた。
そして、彼の補助センサーが『ある事実』を捉える。
「……なるほど。貴様のその力の源は、後方にいるあの女からの魔力供給か!」
ヴァイパーの刃が、ポンタからエリスへと標的を変えた。
「帝国の至上命題も兼ねて、あの姫を先に落とす!」
爆発的な推進力で、ヴァイパーがエリスへ向かって一直線に強襲を仕掛ける。
「エリス!!」
ポンタが鋭く叫ぶ。
迫り来る帝国の刺客。その姿を見た瞬間、エリスの脳裏には、これまで幾度となくフラッシュバックしてきた凄惨な記憶が鮮明にオーバーラップした。
紅蓮の炎に包まれる故郷の王都。絶望に泣き叫び、逃げ惑う人々。
そして――「姫様、どうか生き延びて!」と自分を逃がすために盾となり、冷たい凶刃に倒れたメイド長、マリアの血まみれの背中。
身を切り裂くような悲しさと、激しいやるせなさが蘇る。
当時の自分は無力で、震えるばかりで、大切な人を見捨てて逃げることしかできなかった。
あの時のように、また死の恐怖に立ちすくんでしまうのか。
いや――違う。
今の彼女は、幾多の死線をポンタたちと共に乗り越えてきた『アカマルのエリス』だ。
「――私はもう、逃げません!」
エリスは恐れずに両手で聖樹の杖を構え、溢れる涙を振り払うように、自らの意志で魔力を練り上げた。
「『プロテクション』――十重掛け! さらに『身体強化』!!」
彼女の周囲に、半透明の分厚い魔法障壁が何層にも重なって展開される。広範囲を守る大魔法『聖盾』ではなく、遺跡内の閉鎖空間での戦闘で幾度も味方を守り抜いてきた、極めて実戦的で強固な多重防御だ。
ガガガガガガッ!!!
ヴァイパーの高周波ブレードが、外側の障壁から凄まじい勢いで削り割っていく。第一層、第二層、第三層……障壁が次々と砕け散るが、エリスは一歩も引かず、膨大なマナを注ぎ込んで内側の障壁を維持し続けた。
そして、ヴァイパーの凶刃が第九層を砕いた瞬間――その勢いは完全に殺し尽くされた。
「な、に……ッ!? ただの小娘が、俺の刃を止めた、だと!?」
「よくぞ防がれた、姫様!!」
驚愕して足が止まったヴァイパーの側面に、身体強化を受けたヒルデが両腕の黄金のガントレットを構えて躍り出る。
「このヒルデの拳、とくと味わえェッ!!」
ドゴォォォンッ!!
渾身の力で打ち込まれた重い一撃がヴァイパーの横腹を強打し、その巨体を大きく弾き飛ばす。
「今だよ師匠! ルル特製、ミニ・ジャミンググレネード!!」
空中に投げ出されたヴァイパーへ向けて、ルルが銀色の球体を投擲した。炸裂した高密度の魔力障害電波が、復旧しかけていたヴァイパーのセンサーを今度こそ完全に破壊る。
「ポンタさん、お願いします!」
エリスのユニークスキル『接続者』が発動する。
別次元に存在する膨大なマナエネルギーを直接引き出し、対象者へと流し込むという、この世界の理を完全に覆すとんでもないチートスキルだ。
無限とも言える魔力を供給された瞬間、ポンタの身体能力とハンドガンの威力が、限界を超えて跳ね上がった(魔力によるオーバークロック状態)。
「――チェックメイトだ」
ポンタは瞬きする間にゼロ距離まで踏み込むと、装甲が剥き出しになったヴァイパーの四肢の関節部(継ぎ目)へ向けて、限界まで強化された魔力弾を全弾撃ち込んだ。
「ガ、アァァァァァッ!?」
火花を散らして機械の腕と脚が完全に粉砕され、ヴァイパーはくずおれるように膝をついた。
殺してはいない。帝国の情報を引き出すため、完全に四肢の自由を奪い『捕虜』として無力化したのだ。
「……クリアリング、完了」
ポンタが銃口から立ち昇る煙を吹き飛ばした、まさにその直後。
カァァァァッ……!
背後で、ミリーナが展開していた巨大な召喚魔法陣が、眩い青の光を放った。
「うふふ、お待たせいたしましたぁ」
いつものおっとりした声と共に、魔法陣の中から水精マリーが静かに顕現する。
しかし、その柔和な笑顔とは裏腹に、彼女の手のひらに集束していく『水』は極限まで圧縮され、チリチリと空間を削り取るような恐ろしい高周波音を立てていた。
『――ポンタ殿』
同時に、ポンタの脳内にルシウスからの念話が響き渡る。
『敵の大軍、罠(結界内)に完全に入りました。……やって下さい!』
ポンタは倒れ伏すヴァイパー越しに、禍々しい光を放つ巨大ジャマーの中枢コアを見据えた。
そして、反撃の狼煙となる号令を響かせる。
「よくやった、みんな。――撃ち抜け、マリー!!」
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