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あふれる魔力と、聖樹の杖

【カクヨムコン参加中の話題作、ついに「なろう」解禁!】

★スタートダッシュ! 毎日「7時」と「19時」の2回更新中!★

宿屋『金色の亭』での一夜は、俺たちにとって極上の休息となった。


 ふかふかの羽毛布団に、朝日と共に運ばれてくる焼きたてパンの香り。大会前の追い込み時期にはカフェイン錠剤とエナドリで脳を無理やり覚醒させていたプロゲーマー時代とは、雲泥の差がある優雅な朝だ。  完全にエネルギーをリチャージした俺たちは、意気揚々と冒険者ギルドの重厚な扉をくぐった。


 朝のギルドは、これから依頼に向かう冒険者たちの熱気と、昨晩の酒の匂いが混じり合った独特の空気に満ちている。  俺たちが受付に向かうと、周囲からちらほらと視線を感じた。


「おい見ろよ、あの子……昨日の」 「ああ、あの赤い丸いのを連れた……」


 好奇の目。だが、昨日のような嘲笑はない。俺たちは胸を張ってカウンターへ進み、正式なパーティ登録手続きを済ませた。  その足で、壁一面に張り出された依頼掲示板クエストボードの前で作戦会議を開く。


「いいかエリス。これから本格的に稼働するにあたって、パーティ内の『役割ロール』をはっきりさせておくぞ」 「ろーる……ですか?」 「ああ。俺は見ての通り、鋼鉄のごとき頑丈さと、遠距離からの火力を兼ね備えている。だから敵の攻撃を一手に引き受ける『タンク(盾)』であり、敵を殲滅する『DPS(火力担当)』をやる」 「たんく……でぃーぴー……えす?」


 エリスが呪文のように繰り返しながら、可愛らしく首を傾げる。まあ、こっちの世界にそんなゲーマー用語はないか。


(ソフィア、エリスのステータス詳細を頼む。今後の育成方針を固めたい) 『了解。解析スキャン開始……完了しました。……マスター、これは驚くべき結果です』


 脳内にソフィアの冷静な声が響くが、そのトーンには僅かな驚愕が含まれていた。


『彼女のMPマジック・ポイント保有量は、一般魔導師の数百倍、宮廷魔導師クラスと比較しても遙かに凌駕するレベルに達しています』 (マジかよ。とんだSSRスーパースペシャルレアキャラじゃねぇか) 『ただし、その膨大な魔力を出力するための回路パスが未発達です。例えるなら、『錆びついた蛇口がついた巨大ダム』のような状態です。水圧に耐えきれず、制御できていません』


 なるほど。水はたっぷりあるのに、出口が詰まってちょろちょろとしか出ないわけか。だが、蛇口さえ直せば化ける。


「エリス、お前には魔法の才能がある。凄まじい才能だ」 「えっ……私が、ですか? でも、前のパーティでは生活魔法の『着火』くらいしか……」 「使い方が悪かっただけだ。お前は後ろで安全に経験値を吸いながら、その有り余るMPを使って俺を支援する『ヒーラー兼バッファー』を目指せ」 「私が……支援……。足手まといじゃなくて、ポンタさんの役に立てるんですか?」 「ああ。むしろお前が育たないと、俺も安心して戦えねぇ。俺の背中はお前に預ける。期待してるぞ」 「はいっ! 私、頑張ります! ポンタさんの背中を……って、ポンタさんの背中ってどこでしょう……?」 「……まあ、後ろっぽい曲面だ」


        ***


 方針が決まれば、まずは装備の更新だ。  俺たちは、路地裏にある一軒の武器屋へと足を運んだ。


 カン、カン、カン……。


 鉄を打つ重い音が響く店内には、油と金属の匂いが充満している。  カウンターの奥には、髭もじゃの頑固そうなドワーフが一人、背中を向けて作業していた。


「いらっしゃい。冷やかしなら帰んな。うちは安物は置いてねぇぞ」


 ドワーフの店主は、俺たちを一瞥すらせずに言った。  エリスがビクッと体を震わせる。


「あ、あの……杖を探していて……」 「杖だぁ? 魔導師ギルドに行きな。うちは戦士用の鉄屑しかねぇよ」


 完全に取り付く島もない。だが、俺の「FPS視点ハッキング・アイ」は、店主が打っている剣の素材を見逃さなかった。


(ソフィア、あの剣の素材は?) 『解析。希少金属「ヒヒイロカネ」の含有率0.8%。鍛造温度管理にわずかなムラがありますが、魔力伝導率を最大化するための特殊な「多重折り込み鍛造」が行われています』 (なるほど。タダの頑固親父じゃねぇな)


 俺はわざとらしく独り言のように念話を飛ばした。


「……ほう。ヒヒイロカネを混ぜて魔力伝導を上げてるのか。だが、その温度管理だと芯材に歪みが出るぞ。冷却のタイミングをあと3秒遅らせたほうがいい」


 ピタリ。  ドワーフの手が止まった。  ゆっくりと振り返ったその目は、獲物を見る猛禽類のように鋭い。


「……あぁ? なんだその赤ダルマ。お前、今なんて言った?」 「多重折り込み鍛造だろ? 悪くない腕だが、魔力の『波長』が見えてねぇな」


 俺がソフィアの受け売りを並べると、ドワーフはカハッと笑い、ハンマーを置いた。


「へっ……! 面白い。ダルマに鍛治の説教をされるとはな。……俺の名はボルグだ。気に入ったぜ」


 ボルグと名乗ったドワーフは、店の奥から一本の杖を取り出してきた。  それは白く美しい木材で作られており、先端には透き通った青い結晶が埋め込まれている。


「こいつは『聖樹の枝杖ホーリー・ブランチ』。素材が良すぎて、並の魔導師じゃ魔力を吸い取られて扱えねぇ失敗作だ。だが……その嬢ちゃんのデタラメな魔力量なら、あるいはな」


 エリスがおずおずと杖を受け取る。  その瞬間。


 ブォン……!!


 空気が震え、先端の結晶が眩いばかりの蒼光を放った。


「なっ……! まさか、完全に共鳴シンクロしてやがるのか……!?」


 ボルグが目を見開く。


「わぁ……! なんだか、体の中の熱が、杖に吸い寄せられるみたいです」 「すげぇな。嬢ちゃん、その杖は本来なら金貨100枚は下らねぇ代物だが……俺の技術不足を指摘してくれた礼だ。金貨5枚で持ってけ! 大事にしろよ」


 思いがけず強力な武器を手に入れた俺たちは、ボルグに礼を言って店を後にした。


        ***


 準備を整えた俺たちは、さっそく街の外へ繰り出した。  森に入って数分。鬱蒼とした木々の間から、最初の獲物が姿を現す。  紫色の胞子を撒き散らす、子供の背丈ほどもある巨大キノコ『スリープ・ファンガス』だ。


「(ソフィア、ロックオン。エイムアシスト起動)」 『了解。ターゲット捕捉』


 俺は思考一つで宙に浮き、滑るように射線を確保する。FPS視界の中央、赤いレティクルがファンガスの急所である柄の部分に吸い付く。


「(終わりだ)」


 ズキュゥゥンッ!


 放たれた魔弾は寸分の狂いもなく急所を貫いた。ファンガスが悲鳴を上げる間もなく崩れ落ちる。  その瞬間、俺の体へ光の粒子――敵の構成データが吸い込まれた。


MOD奪取インストール:成功】 【獲得:戦術装備『スリープ・ガス』】


「おっ、マジか。ドロップ率100%かよ」 「えっ? ポンタさん、今なにを……?」 「敵のデータを『武器パーツ(MOD)』として取り込んだんだ。こいつを使えば、俺も睡眠ガス攻撃ができるようになる。ゲームでいう『拡張マガジン』みたいなもんだな」 「もっど……? 敵の技を使えるなんて……ポンタさんは本当に、何でもできる精霊様なんですね……!」


 エリスがキラキラした尊敬の眼差しを向けてくる。ただのゲーマー機能なのだが、この世界ではチート級の神業に見えるらしい。  倒れたファンガスの死骸からは、立派なカサの部分が素材として残っていた。


(ソフィア、これは?) 『鑑定結果。最高級の食材です。加熱することで毒素が分解され、滋養強壮に効く濃厚な旨味成分に変化します』 「よし、今日の晩飯はこれだな」


 その後も、昼食用の『ファイア・バード』を狩りながら、俺たちは森の奥へと進んでいった。

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