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王都ゼリア、到着。そして門番は二度見する

【第2章・王都編開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

カクヨムで話題を呼んだ注目作、なろうにて絶賛連載中!

※第1章(1〜49話)完結済み。通勤・通学のお供にどうぞ!


 馬車が緩やかな丘を越えた瞬間、目の前の視界が一気に開けた。

 思わず息を呑むような威容が、そこにはあった。


 広大な平原の中心に鎮座する、途方もなく巨大な城塞都市。

 都市を囲むのは、数十メートルの高さを誇る強固な三重の防壁。そして、その中心で朝日を反射して眩く輝いているのが、王族が住まう『白亜宮はくあきゅう』だ。


「(……凄まじいな。防壁には等間隔で魔導砲の砲座が設置されているし、射線を遮る障害物もない。FPSで言えば、まさに『首都防衛戦ディフェンス』の最終マップって感じだ。空からの強襲でもない限り、物理的に落とすのは不可能に近いぞ)」


 少年の姿のポンタは、窓枠に肘をつきながら、ゲーマー特有の冷徹な視点で王都の防衛機構を分析していた。


『マスター。城壁の材質および魔力コーティングの解析を完了。物理・魔法の両面において極めて高い防御力を誇ります。生身での単独突破は推奨しません』

「(分かってるよ。俺たちは正面から、堂々と『お客様』として入るんだからな)」


 脳内で警告を発するソフィアに苦笑しながら答える。


「ポンタさん、もうすぐ王都に入りますよ! ほら、襟元が少し乱れています。……はい、これで完璧です!」

 隣に座るエリスが、かいがいしくポンタの服のシワを伸ばし、襟を正してくれる。

 すっかりお馴染みとなった、彼女の「ポンタお世話モード」だ。されるがままになりながら、ポンタは「サンキュ」とだけ返した。


「はえ〜……でっかい壁だねぇ。アルメニアの防壁も凄かったけど、王都のはもっと頑丈そう! あれ、どんな技術で組み上げてるんだろ?」

 ルルは身を乗り出し、技術者としての好奇心を全開にして壁の継ぎ目を見つめている。


「主殿! 見事な城構えですな。万が一の籠城戦になっても、あれならば数年は持ち堪えられましょうぞ!」

 ヒルデは尻尾を機嫌よくパタパタと揺らしながら、純粋な武人としての評価を下していた。


「ふふっ、皆さん王都は初めてですか? 美味しいお店や素敵な観光名所、私がたっぷり案内しちゃいますからね〜!」

 かつて王都のギルド本部で研修を受けたことがあるというミリーナが、元受付嬢らしく胸を張ってガイド役を買って出た。


 和気藹々とした空気の中、ポンタたちを乗せた馬車は、巨大な正門へと続く大行列の最後尾に取り付いた。


 ◇ ◇ ◇


「次! 身分証と積荷の申告を出せ!」


 王都ゼリアの正門。

 そこでは、完全武装の門番たちが、厳しい目つきで入国者の審査を行っていた。

 王都は大陸有数の大都市であり、人も物も莫大な量が集まる。当然、治安維持のためのチェックもアルメニアなどの地方都市とは比べ物にならないほど厳格だ。


 ポンタたちの順番が回ってきた。

 馬車からひょいっと飛び降りたのは、見た目十二歳前後の、赤髪の美少年ポンタである。

 その後ろから、銀髪の美少女エリス、小柄な少女ルル、人の良さそうな女性ミリーナ、そして長身の女騎士ヒルデがぞろぞろと降りてくる。


 対応に当たった厳つい顔の門番は、ポンタを見るなり怪訝な顔で眉をひそめた。


「おいおい子供たち。ここは遊び場じゃないぞ。王都に入るには身分証と通行税が必要なんだ。……保護者はどうした? 親とはぐれたのか?」

「いや、俺がこのパーティのリーダーだが」

「はあ? 坊主がリーダー? 悪い冗談はやめろ。大の大人が五人も乗れる馬車だ、どうせ後ろに親方でも隠れてるんだろ。さっさと出せ」


 門番はポンタの言葉を全く信じていない。

 無理もない。どう見てもポンタは「ちょっと家出してきた貴族の坊ちゃん」にしか見えないからだ。

 後ろでエリスが「ポンタさんは立派なリーダーです!」と抗議しようとするのを手で制し、ポンタはため息をついた。


「(ソフィア、面倒だ。あれ出そう)」

『推奨します。無駄な問答はタイムロスの原因です』


 ポンタは無言のまま、懐から二つのアイテムを取り出し、門番の胸元へとスッと差し出した。


 一つは、ギデオンから手渡されていた『特級冒険者(Sランク相当)の特別通行証』。

 そしてもう一つは――『男爵叙勲の招待状(王家の紋章入り)』である。


「ん? なんだこりゃ……」


 門番は面倒くさそうにそれを受け取り、視線を落とす。

 一秒。二秒。三秒。

 門番の動きが、彫像のようにピタリと止まった。


「……………………は?」


 門番は瞬きを数回繰り返し、招待状とポンタの顔を交互に見る。

 そして、ゴシゴシと両手で目を擦り、もう一度、招待状の『王家の紋章(本物)』と『Sランクの証』を凝視した。


「……えっ? ……ええええええええええっ!?」


 門番の素っ頓狂な叫び声が、正門前に響き渡った。

 周囲で列を作っていた商人や他の冒険者たちが「なんだなんだ?」「あの子供たちがどうかしたのか?」とざわめき始める。


「な、ななな、偽造!? いや、この魔力印は本物……! だ、だだだ、男爵様!? Sランク!? この子供が!?」


 パニックを起こし、ひっくり返りそうになっている門番。

 その騒ぎを聞きつけ、正門の奥からガチャガチャと金属音を鳴らして、一人の立派な鎧を着た騎士団の隊長が駆けつけてきた。


「どうした! 入国審査所で騒ぎを起こすとは何事か……ん?」


 怒鳴り込んできた隊長だったが、門番の震える手にある『招待状』を見た瞬間、彼の顔からスッと血の気が引いた。

 王都を預かる騎士隊長クラスであれば、その紋章の意味と、最近噂になっている「辺境から来る、規格外の英雄」の情報くらいは耳に入っている。


「き、貴方様は……まさか、アルメニアを救ったという……」

「ポンタだ。これで通れるか?」


 ポンタが淡々と尋ねると、隊長は弾かれたように姿勢を正し、バサァッ!と音を立てて完璧な敬礼の姿勢をとった。


「はっ!! し、失礼いたしました、男爵閣下!! 王都ゼリアへ、ようこそおいで下さいました!! すぐに特別なゲートを開けさせます!! おい、お前ら道を開けろォ!」


「い、イエッサー!」


 騎士隊長の怒声に、周囲の兵士たちが慌ててバリケードを退け、王都へのメインストリートを綺麗に空け渡す。

 先ほどまでポンタを子供扱いしていた門番は、顔面を蒼白にして直立不動で震えている。


「ふふっ、ポンタさんったら、また驚かせちゃって」

「まあ、いつものことだな」


 周囲の群衆が「おい嘘だろ……あの年で男爵!?」「Sランクって言ったか!?」とどよめく中、ポンタたちは平然とした足取りで王都の門をくぐり抜けたのだった。


 ◇ ◇ ◇


「わぁ……っ! 凄い活気ですね!」


 門を抜け、メインストリートに足を踏み入れたエリスが、目を輝かせて歓声を上げた。

 石畳の広い大通りには、色とりどりの屋台やレンガ造りの立派な店が立ち並んでいる。

 人々の行き交う喧騒、焼きたてのパンや肉の匂い。

 空を見上げれば、歯車と蒸気で動く巨大な時計塔がそびえ立ち、魔法の光で彩られた看板が街を彩っている。

 蒸気機関と魔導技術が融合した、極めて高度な文明の匂いがした。


「ねえねえ師匠! あそこの鉄の箱、蒸気で勝手に動いてるよ! 乗合馬車バスかな!? ルル、後で構造見に行きたい!」

「はいはい。迷子になるなよ」

 はしゃぐルルをたしなめつつ、ポンタもまたこの異世界の大都市の空気を新鮮な気持ちで楽しんでいた。


「さて! まずはギルド本部に行って手続きですね! その前に、あそこの大通りで串焼きでも買い食いしましょうか!」

 ミリーナが先頭に立ち、案内係として張り切っている。


 そんな、平和で賑やかな王都の昼下がり。

 ふと、ミリーナが歩みを止めた。


「……あれ?」


 異常なまでの聴覚(地獄耳)を持つ彼女の耳が、ピクリと動いた。

 大勢の人の声、馬車の車輪の音、蒸気の噴き出す音。

 その無数の生活音の「さらに奥底」から、這い上がってくるような奇妙な音を捉えたのだ。


「どうした、ミリーナ?」

 ポンタが振り返る。


「いえ……今、足元の方から……。なんか、すごく嫌な『音』がしたような……」

 ミリーナは眉をひそめ、石畳の地面を見つめている。

 ギギギ、と歯車が削れるような、あるいは、何かが「悲鳴」を上げているような、耳障りな不協和音。


『あれ? やっぱり気のせいじゃないよね』


 エリスが抱える杖の先端がふわりと光り、精霊のユーグが半透明の姿でひょっこりと顔を出した。

 彼もまた、ミリーナと同じ地面を見つめている。


「ユーグも聞こえたのか?」

『うん。聞こえたっていうか……肌がピリピリする感じ? なんか、この街の地下から、すごく嫌なノイズみたいなのが漏れてる気がするんだよね。母様(世界樹)が嫌がってるような……』


 それを聞き、ポンタの表情が僅かに引き締まる。


「(ソフィア。地中探査ソナー、何か反応はあるか?)」

『環境音のノイズが多すぎます。現時点での物理的な異常振動、および熱源反応は検知できません』


 ソフィアのレーダーには何も映らない。

 つまり、これは物理的な現象ではなく、ルナ一族の耳と世界樹の精霊にしか感知できない「魔力的な異常ノイズ」だということだ。


「……んー! でも、今は止まったみたい! ボクの気のせいかも!」

挿絵(By みてみん)

 数秒後、ユーグはあっけらかんとした顔で空を飛び回り、エリスの傍に戻った。

「それよりエリス、ポンタ! あそこの屋台の串焼き、すっごくいい匂いがするよ! 早く行こう!」

「あ、もうユーグったら! 勝手に飛んでいっちゃダメですよ!」


 エリスが慌てて追いかけ、ルルやヒルデも「飯だ飯だ!」と楽しげに後を追う。


「……気のせい、か」


 ポンタは一人、冷たい石畳を見下ろした。

 気のせいなはずがない。

 ここは王都。華やかな建国祭を半月後に控えた、この国の心臓部だ。

 FPSゲーマーの勘が、足元の暗闇に「致命的なトラップ」が仕掛けられていることを告げていた。


「(……気を引き締めねぇとな。このマップ、思った以上にきな臭いぞ)」


 ポンタは小さく息を吐くと、騒がしい家族たちの待つ陽だまりの中へと歩き出した。

 彼らが、王都の地下深くで進行する『絶望の陰謀』に直面するのは、もう少し先の話である。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


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