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小さな死神と、不運な盗賊たち

【第2章・王都編開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

カクヨムで話題を呼んだ注目作、なろうにて絶賛連載中!

※第1章(1〜49話)完結済み。通勤・通学のお供にどうぞ!

 森の木陰に入り、ポンタは深く息を吸い込んだ。

 森の匂い、風の音、土の感触。ダルマの時はデータとして処理されていた情報が、今は五感としてダイレクトに伝わってくる。


「美味い飯を食うには、まずは良い食材と下処理からだからな……」


 かつてのダルマボディにあった便利な「全自動調理機能」はもうない。これからは自らの手で獲物を仕留め、血抜きをし、解体しなければならないのだ。

 だが、その手間すらも今のポンタには楽しみだった。


 彼は意識を集中し、脳内の武器庫アーマリーへアクセスする。

 イメージするのは、かつて愛用していたサイドアーム。


「……生成クリエイト


 掌から青い魔力光が収束し、一丁の拳銃が実体化する。

 『SOCOM Mk23』。

 特殊部隊用に開発された、大型の自動拳銃だ。銃口には無骨なサプレッサー(消音器)が装着されている。


 ずっしりとした重量感が、手のひらに心地よい。

 ダルマの時とは違い、自分の指でトリガーフィーリングを確かめられる。


「なあソフィア。やっぱり……この体で『アヴェンジャー(ガトリング)』は出せないのか?」


 前回の戦いで薄々感づいてはいたが、念の為に尋ねてみる。

 脳内でソフィアが即座に応答した。


『回答。不可能です。アヴェンジャー等の重兵器召喚には、現在のマスターの「人間ヒューマン」としての器では魔力奔流を受け止めきれず、肉体が崩壊します。しかし――』


 ソフィアが補足する。


『先日、エリス様の「接続コネクト」を通じて顕現させた「巨大ダルマ(タイタン形態)」に搭乗している状態であれば、アヴェンジャーを含む全ての重火器の運用が可能です』


「やっぱりそうか。なら、いざって時は……」


『推奨しません。現在のエリス様の習熟度では、異次元からタイタンを呼び寄せるのに相応の「時間」と「集中」を要します。遭遇戦などの咄嗟の状況では間に合いません』


「なるほどな。あくまで『ここ一番の切りウルト』ってわけか」


 ポンタは苦笑した。

 人間状態でのスピーディーな戦闘と、タイタン状態での圧倒的火力。この二つの使い分けが今後の鍵になりそうだ。


『補足。人間状態であっても「歩兵兵器」であれば使用可能です。ハンドガン、アサルトライフル、ショットガン、対物ライフル等は問題ありません』


「上等だ。要するに『スネーク』しろってことだな」


 ポンタはニヤリと笑う。

 要塞から特殊部隊員へ。戦い方は変われど、やることは同じだ。

 FPS廃人の血が騒ぐ。


 ザッ……。

 不意に、背後の茂みで小枝が折れる音がした。


 ポンタの視界――HUDヘッドアップディスプレイに、複数の赤い輝点エネミーマーカーが表示される。

 動物ではない。明確な殺意を持った、人間の反応だ。


「(……やれやれ。FPSでも一番嫌いなタイプだ、こういう『芋砂(待ち伏せ)』野郎は)」


 ポンタは恐怖を感じるどころか、新しい身体のテスト相手が向こうから来てくれたことに感謝すらした。

 彼は音もなく茂みに身を沈め、静かにセーフティを外した。


 ◇ ◇ ◇


「おい、見ろよあの馬車。上等な造りだ」

「護衛は女ばかりだぜ。ありゃあ貴族のお忍びだな」


 街道沿いの茂みの中、薄汚い格好をした男たちが舌なめずりをしていた。

 王都へ向かう商人を狙う盗賊団だ。数は20人ほど。

 彼らの視線の先には、休憩中のエリスたちがいる。


「お、ガキが一人離れたぞ。まずはあいつを人質にして……」


 リーダー格の男が、森に入った赤髪の少年――ポンタを追って合図を出した。

 背後から忍び寄り、口を塞いで攫う。簡単な仕事のはずだった。


 男がナイフを抜き、少年の背後数メートルに迫る。

 少年は気づいていない。無防備に立っている。

 もらった!


 男が飛びかかろうとした、その瞬間だった。


 フッ、と少年の姿が掻き消えた。


「あ?」


 男が間抜けな声を上げた直後、腕に強烈な痛みが走った。

 視界の外から伸びてきた手が、ナイフを持つ男の手首を万力のように掴み、関節の逆方向へと捻り上げたのだ。


「ぐっ!?」

「遅い」


 ポンタは男の腕を強引に引き込むと、そのまま流れるように懐へ侵入。

 CQC(近接格闘術)の基本、体崩しだ。

 男の重心を奪い、自分の体を支点にして一気に地面へと叩きつける。


 ズドォォン!!


 背中から叩きつけられた衝撃で、男の肺から空気が強制的に吐き出される。

 動けなくなった男の首筋にある急所へ、的確な手刀が叩き込まれ、意識が刈り取られた。


「なっ……何だ今の動きは!?」

 異変に気づいた仲間の盗賊たちが、一斉に茂みから飛び出した。

「野郎、やりやがったな! 囲め! 殺せ!」


 10人近い男たちが剣を抜き、殺到する。

 だが、ポンタは慌てない。

 右手に握られた黒い鉄塊――SOCOM Mk23が火を噴く。


 パシュッ、パシュッ、パシュッ!


 サプレッサーによって減音された、乾いた発射音が連続して響く。

 それは正確無比な制圧射撃だった。

挿絵(By みてみん)


「ぐあっ!?」

「手がっ!」


 先頭を走る男の剣が弾き飛ばされる。

 続く男の太腿が撃ち抜かれる。

 肩、膝、武器。致命傷を避けつつ、戦闘能力だけを奪う神業のような射撃。


「ひ、ひぃぃッ! なんだこいつ! 魔法か!?」

「くそっ、ガキのくせに! 死ねぇぇ!!」


 リーダー格と思われる大男が、恐怖を振り払うように大剣を振りかざして突っ込んでくる。

 ポンタはハンドガンを収めると同時に、腰のベルトから一本の短剣を抜き放った。

 ボルグから託された、『赤熱のミスリルダガー』。


 魔力を通すと、刀身が紅蓮に輝き、陽炎を纏う。


「無駄だ」


 ポンタが一歩踏み込む。

 大剣が振り下ろされる軌道を読み切り、最小限の動きで回避。

 すれ違いざま、赤熱した刃を一閃させる。


 ジュッ!!


 金属が溶ける音と共に、大剣の刀身が半ばから斬り飛ばされた。

 断面が赤く熱を持っている。


「な……鉄を、斬った……?」


 大男が呆然と折れた剣を見つめる。

 その首元に、冷ややかな感触――ハンドガンの銃口が押し当てられた。


「チェックメイトだ」


 ポンタは冷ややかな瞳で見下ろした。

 周囲には、手足を撃たれて呻く盗賊たちが転がっている。

 わずか数十秒。

 完全なる制圧だった。


「て、てめぇ……何者だ……? ただのガキじゃねぇな……」


 震える声で問う男に、ポンタはハンドガンの硝煙をフッと吹き、ニヤリと笑った。


「ガキじゃねぇ。……通りすがりの『男爵様』だ。運が悪かったな」


 ◇ ◇ ◇


 事後処理は迅速だった。

 ポンタは脳内のシステムにアクセスし、スキル『通信コール』を発動した。

 ダルマ時代と同じく、念話による遠隔通信だ。


『おう、どうしたポンタ。忘れ物か?』


 脳内に直接、ギデオンの声が響く。


「いや、道中でゴミ拾いをしたんでな。回収を頼めるか?」


 ポンタが事情を説明すると、通信の向こうでギデオンが腹を抱えて笑う声が聞こえた。


『ガハハハッ! そいつらも運がねぇな、よりによってSランク冒険者を襲うとは!』

「笑い事じゃねぇよ。……とりあえず、後ろからついて来てた護衛の連中に引き渡していいか?」

『ああ、構わねぇ。元々、過剰戦力だと思ってたところだ。護衛隊には捕虜を連れて帰還させるよう伝えておく』


 ギデオンはそこで一度言葉を切り、感心したように続けた。


『それにしても、その遠距離通信スキル……何度見てもとんでもねぇな。我が王国の「疾風鷹」よりも早くて、しかも会話ができるとは。お前さん自身が国家機密級だぞ』

「今更だろ。じゃあ、頼んだぜ」


 通信を切り、ポンタは捕縛した盗賊たちを、追従していた護衛の馬車に引き渡した。

 これで心置きなく旅を続けられる。


「さて、邪魔者もいなくなったことだし……」


 ポンタは森の奥を見据え、仲間たちの方を振り返った。


「せっかくの野営だ。これから極上の晩飯ディナーを作るぞ!」


 王都への旅路はまだ長い。

 今日のところは、美味しい食事と、仲間との語らいを楽しむことにしよう。

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