王都からの急使と、新たな旅立ち
【第2章・王都編開幕!】
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カクヨムで話題を呼んだ注目作、なろうにて絶賛連載中!
※第1章(1〜49話)完結済み。通勤・通学のお供にどうぞ!
アルメニア領主の城、大会議室。
重厚な円卓を囲み、この街の首脳陣が顔を揃えていた。
冒険者ギルドマスター、ギデオン。
王国騎士団長、バンス。
宮廷魔術師団長、ミランダ。
そしてもう一人。綺麗に整えられた口髭を蓄えた、小柄な紳士が紅茶を啜っていた。
身長は100センチほど。子供のように低い背丈だが、その顔つきには年輪が刻まれ、高級なスーツをぴしりと着こなしている。
彼こそが、一代で巨大商会を築き上げた「ハーフリング」の傑物、ゴルドー会長だ。
「ほっほっほ。昨日の今日で呼び出しとは、ギデオン殿も人が悪い」
「言うなゴルドー。王都からの急使が来ちまったんだ、当事者を呼ばないわけにはいかねぇだろ」
ギデオンが葉巻を揉み消した時、重い扉が開かれた。
衛兵の敬礼と共に、アカマルの面々が入室してくる。
エリス、ヒルデ、ルル、ミリーナ。
そしてその中心には――赤髪の美少年が、堂々と歩いてきた。
「おう、来たかエリス。……で、ポンタはどこだ? なんで親戚の子供を連れてきた?」
ギデオンが怪訝な顔をする。
バンスも腕を組んだまま首を傾げた。
「ふむ……どこか面影があるような気もするが……」
少年は円卓の前まで進み出ると、少しバツが悪そうにポリポリと頭を掻いた。
「あーー、何故かダルマから人間になっちまったんだが、俺だ」
「ブッッ!!」
ギデオンが盛大に茶を吹き出した。
「はぁ!? お前、その声……まさかポンタか!?」
その瞬間、ガタッ! と椅子を蹴って立ち上がった人物がいた。
魔術師団長、ミランダだ。
「ああ……! なんと……なんと愛らしい……!!」
彼女は恍惚とした表情で、少年の前にひざまずいた。
「あの猛々しく無骨なダルマ様が、このような天使の如き『受肉』を果たされるとは……! これこそ奇跡! 神の御業ですわ!」
「うわっ、近い! やめろミランダ!」
「ポンタ様……♡ お肌もスベスベですわ……♡ さあ、お姉さんが手取り足取り魔法を……」
「控えろ、魔術師団長。公務中だぞ」
暴走しかけたミランダの襟首を、バンスが無言で掴んで引き剥がし、席に座らせた。
騒ぎが落ち着くのを待って、ゴルドーが口髭を撫でながら進み出た。
「ほっほっほ。まさか人化されるとは本当に驚きました。神龍が人化する神話はありますがいやはや、実際にこの目で見れるとは……」
ハーフリング特有の、商機を見定める鋭くも温かい瞳がポンタを見上げる。
「以前、拠点の購入でお会いした時はBランクへの昇格祝いでした。それが僅かな期間で、王国史上初のSランク昇格とは……。私の長い商売人生でも、これほどの出世街道を爆走する御仁は見たことがありませんぞ」
「へっ、運が良かっただけさ。……それに、あんたの街と店が無事でよかったよ、ゴルドー」
「ええ。貴方様が守ってくださったおかげです。この御恩は、商人の流儀でお返しさせていただきますよ」
ゴルドーは恭しく一礼すると、懐から一通の封書を取り出し、ポンタに手渡した。
「王都にある我が商会の本店への紹介状です。何か入用があれば、これをお見せください。最高級の品を融通させましょう」
「ありがとよ。使わせてもらうぜ」
ポンタが紹介状を懐にしまうと、ギデオンが咳払いをして本題に入った。
「さて、茶番はここまでだ。……こいつを見ろ」
ギデオンが机の上に広げたのは、王家の封蝋がされた羊皮紙だった。
その横には、猛禽類の羽がついた筒が置かれている。
「昨日の今日で、よく王都からの手紙なんて届いたな」
「こいつは『疾風鷹』便だ。魔力で強化された鷹でな、ここから王都まで一日で往復する。金貨数枚が飛ぶ高級便だが……今回の件はそれだけの緊急事態ってことだ」
ギデオンの表情が引き締まる。
「要件は二つ。一つは、昨日のスタンピード被害ゼロの報告を受けた『北の異変』対策会議への参加要請。……そしてもう一つは、Sランク昇格に伴う叙勲式への招聘だ」
「叙勲……?」
ポンタが首を傾げる。
ギデオンはニヤリと笑い、爆弾を投下した。
「Sランクパーティのリーダーは、その武功を称えられ、一代限りの『名誉男爵』の位が授与される。……つまり、お前は今後、貴族様ってわけだ、ポンタ男爵」
「はぁぁぁぁぁぁッ!?」
ポンタの絶叫が響いた。
エリスたちも目を丸くして固まっている。
「だ、男爵……? ポンタさんが、貴族……?」
「主殿が貴族に……! 素晴らしい! これで名実ともに英雄です!」
ヒルデだけが感涙にむせび泣いている。
「ま、マジかよ……。俺はただのゲーマー……いや、冒険者だぞ?」
「拒否権はねぇぞ。王都の連中は、お前という『最強の戦力』を国に繋ぎ止めておきたいんだ」
そこで、バンスが居住まいを正し、静かに口を開いた。
「単刀直入に言います。王国軍は今、帝国の『未知の兵器』に対し、対抗策を模索している。……今までの報告で聞く貴殿らが無力化した『杭』。あの技術に対抗するため、またスタンピード防衛で見せた貴殿らの戦術データと知恵を借りたいのです」
バンスの真摯な眼差しが、ポンタとエリスに向けられる。
騎士団長としての威厳の中に、ポンタへの確かな信頼と敬意が込められていた。
エリスは一瞬迷った後、隣の少年に視線を向けた。
「……私は、ポンタさんの判断に従います。ポンタさんが行くというなら、どこへでも」
全幅の信頼。
ポンタは溜息を一つ吐くと、頭をガシガシと掻いた。
「分かったよ。乗りかかった船だ。……それに、俺たちの知識(FPSの戦術)が役に立つなら、出し惜しみはしねぇ」
その言葉を聞いた瞬間、背後で二人の少女の目が「円」のマークに変わった。
「戦術データの提供……これ、高く売れるんじゃない?」
「ですです! 帝国兵器の解析料も含めれば、莫大な予算が組めるはずですぅ!」
ルルとミリーナが、すでに皮算用を始めている。
「(……こいつら、逞しいな)」
ポンタは苦笑しながらも、王都行きを承諾した。
◇ ◇ ◇
会議を終えた一行は、一度拠点である『アカマルハウス』へと戻った。
本館から少し離れた場所にある、前家主が使っていた離れの工房。
今はルルとボルグの城となっているその場所には、熱気と共に槌を振るうドワーフ、ボルグの姿があった。
「おう、戻ったか坊……ず?」
振り返ったボルグは、少年姿のポンタを見て目を丸くした。
「……誰だ、そのガキは?」
「俺だよ、ボルグ。ちっとばかし事情があってな」
事情を説明すると、ボルグは「人の身に受肉か、たまげたな」と豪快に笑ったが、すぐに職人の真剣な眼差しになった。
「で、王都へ行くってことは、新しい武器が必要なんだろう?」
「ああ。この人間の体じゃ、ガトリングみたいな重火器は扱えねぇ。生身(歩兵)で扱える、強力な火器を頼みたい」
ポンタはルルと共に作成した設計図を広げる。
対戦車擲弾発射器『RPG-7』。
携帯式地対空ミサイル『スティンガー』。
どちらも、生身の人間が運用できる最強クラスの個人携行兵器だ。
「ほう……こいつはまた、えげつない構造だな。だが、燃えるぜ」
ボルグがニヤリと笑う。
「任せときな。王都から戻る頃には、試作品を上げといてやる」
そして、ボルグは作業台の奥から、一本の短剣を取り出した。
黒い革の鞘に収められた、美しい短剣だ。
「これを持っていきな、旦那」
ボルグは、見た目は子供になったポンタに対し、変わらぬ敬意を込めてそう呼んだ。
「……いいのか?」
「ああ。旦那の体は、もうあの頑丈なヒヒイロカネじゃねぇ。人間の体は脆いもんだ。……こいつは俺の自信作だ。ミスリルの刃に、特級の『火の魔石』を埋め込んである。良かったら持ってってくれ」
ポンタが短剣を抜き放つと、刀身が微かに赤熱し、周囲の空気が揺らぐのを感じた。
魔力を通せば、鉄の鎧すらバターのように溶断するだろう。
「ありがとよ、ボルグ。……大事にするぜ」
ポンタが腰のベルトに短剣を差すと、その姿はまさに、これから伝説を紡ぐ勇者のようだった。
◇ ◇ ◇
そして、出発の時。
屋敷の前には、留守番役のシルフィとマリー、そしてボルグが見送りに立っていた。
「行ってきます! お土産、期待しててくださいね!」
エリスが馬車の窓から手を振る。
「留守の間、お掃除サボっちゃダメですよシルフィさん?」
「う、うるさいわね! あんたこそ迷子にならないでよ! ……気をつけて行ってきなさいよ!」
シルフィが顔を赤くして叫ぶ。
御者が鞭を振るい、馬車が動き出す。
遠ざかるアルメニアの街並み。
その先には、広大な平原と、王国の心臓部である王都が待っている。
「次は王都か……。待ってろよ、帝国」
ポンタは腰の短剣を撫で、少年の姿には似つかわしくない不敵な笑みを浮かべた。
「俺たちの『火力』を、たっぷり見せてやる」
FPS廃人の新たな冒険――『王都動乱編』が、今、幕を開ける。
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