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紅の伝説と覚醒の朝

【第1章 完結!】

★カクヨムで話題を呼んだ注目作、なろうにて絶賛連載中!★


※本日(49話)で第1章が最高のクライマックスを迎え完結します!

明日からは、いよいよ舞台を王都へ移した待望の第2章が開幕!

 轟音が去り、戦場に静寂が戻ってから数時間が経過した。

 アルメニア城壁の前には、アヴェンジャーが穿った巨大なクレーターと、一直線に抉られた大地の傷跡が残されている。そして、そのクレーターの中心には、消滅したベヒーモスの心臓部にあった「神話級の魔石」だけが、奇跡的に砕けずに転がっていた。


 後片付けに追われる兵士たちは、その光景を見て言葉を失っていた。

「おい、本当にあのでかい怪物が消えちまったぞ……」

「あの赤いお姿……いや、あのお方は、古代の破壊神の化身に違いない」


 畏怖と称賛を含んだ噂が、風よりも速く広まっていく。

 だが、英雄視されているのはポンタだけではない。


「聖女様……! ありがとう、あんたは俺たちの命の恩人だ!」

「足が……食いちぎられたはずの足が治ってる……!」


 城壁の下では、多くの冒険者や兵士たちが、涙を流して一人の少女に感謝を伝えていた。

 エリスだ。

 かつては「お荷物」と揶揄され、鉄の牙にいじめられていた弱気な少女の姿は、もうそこにはない。

 瀕死の重傷者すら瞬く間に完治させた『聖盾アイギス』の奇跡。その御業を目の当たりにした人々にとって、彼女は紛れもない「聖女」だった。

 エリスは照れくさそうに、けれど誇らしげに胸を張り、一人一人の感謝の言葉を受け止めていた。


 ◇


 その日の夕刻。アルメニア領主館前の広場には、街中の人々が集まっていた。

 壇上に立ったギデオンが、よく通る声で高らかに宣言する。


「皆、よく耐え抜いた! 我々の勝利だ!!」


 割れんばかりの歓声が上がる。ギデオンは手でそれを制し、傍らに並ぶポンタたち『アカマル』のメンバーを示した。


「三万のスタンピードに対し、我々の死者はゼロ。これは一国の軍隊でも成し得ない、神話的な戦果だ! この奇跡をもたらした最大の功労者を称えたい!」


 ギデオンはポンタの隣に立ち、その赤いボディをバンと叩いた。


「ギルド本部と協議し、特例中の特例を認可させた! パーティ『アカマル』は、現在のBランクからAランクを飛び越え――我が国史上初となる『Sランク』へと昇格とする!!」


「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」


 広場が揺れるほどのどよめきが起きた。

 ギルド登録から半年足らずでのSランク到達。そして一地方都市のパーティが国家戦力級の認定を受けること。そのどれもが空前絶後の快挙だった。


「さらに! この小さくも偉大なリーダー、ポンタには新たな二つ名を授与する! その破壊的な火力と、敵を殲滅する紅き姿に敬意を表し――これより貴様を**『紅の破壊神クリムゾン・デストロイ』**と呼ぶ!」


『……おいおい、ずいぶんと仰々しい名前になったな』


 ポンタが苦笑するが、民衆は「クリムゾン・デストロイ!」「破壊神様!」と熱狂的にその名を連呼した。

 さらに莫大な報奨金の目録が手渡される。

『ありがとよ。これでルルとボルグの開発費は、使い切れないほど潤沢になったな』

 ポンタの言葉に、ルルがVサインで応えた。


 ◇


 その夜、アルメニアは街を挙げての祝勝会となった。

 広場には屋台が並び、樽酒が振る舞われ、誰もが生きて明日を迎えられた喜びに浸り、歌い、踊っていた。


「いやー、師匠の設計と私たちの実装、完璧すぎたね!」

 ジョッキを片手に、ルルが興奮気味に語る。隣では鍛冶師のボルグも頷いた。

「ああ。まさかあそこまでの威力とは……。次はもっと排熱効率を上げるぞ。氷魔石の純度を高めれば、連射時間をあと二十秒は伸ばせるはずだ」

 二人の技術者魂は、宴の席でも留まることを知らない。


 少し離れた場所では、ミリーナが夜空を見上げていた。

 彼女は耳元のイヤーマフを少しずらし、街に溢れる音に耳を傾ける。

(……今は、とても綺麗な音がします)

 かつては恐怖でしかなかった他人の感情の音。だが今は、歓喜と感謝、そして安堵の音が心地よいハーモニーとなって彼女を包んでいた。ミリーナは穏やかに微笑み、グラスを傾けた。


「ちょっとぉぉーーマリー! それ私が狙ってたお肉! 何取ってんのよー!」

「あらーー? 名前はありませんでしたわよー。モグモグ」

「むきーーっ! 返しなさいよ私の肉ーっ!」


 その横では、実体化したままのシルフィとマリーがわちゃわちゃと料理の争奪戦を繰り広げている。平和な光景だ。


「ポンタ殿、いや、紅の破壊神殿」

 騎士団長のバンスが、恭しくポンタに近づいてきた。

「貴殿らの戦いぶり、生涯忘れぬ。貴殿らはアルメニアの誇りだ。……一人の武人として、心より敬服する」

『よしてくれバンス団長。アンタたちがラインを維持してくれたからこその勝利だ。乾杯しようぜ』


 ポンタがバンスと杯を交わした、その時だった。


「ポンタ様ぁぁぁ~~~っ!!」


 赤い顔をしたミランダが、猛スピードで突っ込んできた。

 彼女は完全に目がハートになっており、その魔力同様、情熱も暴走気味だ。


「あぁ、お慕いしておりますわポンタ様! 私の魔術師団の特別顧問になってくださいまし! ……いいえ、むしろ私の『個人教授』になって! 手取り足取り、その破壊の美学を教えてくださいなぁ~っ!」


 両手を広げて抱きつこうとするミランダ。その前に、黄金のガントレットが立ちはだかった。


「させぬ! 主、逃げてください! この女、目が危険です!」

 ヒルデが物理的な壁となってミランダをブロックする。

「あら邪魔よヒルデ! 愛の力は止められなくてよ!」

「物理で止める!」


 ギャーギャーと騒ぐ二人の間に、今度はエリスが割って入った。

 彼女はポンタをひょいと抱きかかえると、頬をぷぅっと膨らませてミランダを睨んだ。


「だ、だめです! ポンタさんは私の……えっと、わ、私たちのリーダーですので! その個人的な要請は辞退させていただきます!」

『お、おいエリス、苦しいぞ』


 必死にポンタを守ろうとするエリスのいじらしい姿に、周囲から温かい笑いが起きる。

 その様子を見ていたギデオンが、豪快に笑いながらポンタの丸いボディをバンバンと叩いた。


「ハッハッハ! モテる男は辛いな、『紅の破壊神様』? まぁ、今夜くらいは存分に楽しめ。先のことはまた明日考えればいいさ」

『……違いないな』


 ◇


 喧騒から少し離れようと、ポンタはエリスと共に領主館のテラスへと移動した。

 ここからは、祭りを楽しむ人々の灯りが眼下に広がり、見上げれば満天の星空が輝いていた。

 夜風が心地よい。


「ポンタさん」

 手すりに寄りかかりながら、エリスがそっと問いかける。

「私……役に立てましたか?」


 ポンタは彼女を見上げた。

 かつて自分に自信を持てず、うつむいてばかりいた少女の顔はもうない。そこには、自らの意思で戦い、仲間を守り抜いた一人の「聖女」の顔があった。


『ああ。お前がいなきゃ撃てなかった。お前が俺の弾丸エネルギーだったからな。……ありがとう、エリス』


 ポンタの率直な言葉に、エリスは瞳を潤ませ、花が咲くような笑顔を見せた。


「はい……! 私、もっともっと頑張ります。これからも、ずっとポンタさんの隣にいさせてくださいね」

『もちろんさ。俺たちの冒険はまだ始まったばかりだろ?』


 二人は顔を見合わせ、静かに笑い合った。

 最高の仲間、最高の勝利、そして最高の夜。

 全てが順風満帆に見えた。


 ――異変が起きたのは、宴に戻ろうとしたその時だった。


『……ん?』


 ポンタは不意に、強烈な睡魔に襲われた。

 ヒヒイロカネの身体になってから、眠ることはあっても、これほど抗えない泥のような眠気を感じたことは一度もない。

(アヴェンジャーと聖盾アイギス……規格外のマナを通しすぎた反動か……?)

 視界が急速に霞んでいく。


『悪い……エリス。なんだか、急に眠く……』

「えっ? ポンタさん!?」


 エリスの驚く声を遠くに聞きながら、ポンタの意識はプツリと途絶えた。


 ◇


 翌朝。

 小鳥のさえずりと、カーテン越しに差し込む陽光が部屋を満たしていた。


「……んぅ……」


 ポンタは目を覚ました。

 だが、何かがおかしい。

 いつものように、硬い球体が転がるような感覚がない。

 背中全体が柔らかいベッドに沈み込んでいる、重みのある感覚。そして、手足が長く伸びているような違和感。


「……?」


 ポンタはぼんやりとした意識のまま、視界に入ってきた「それ」を目の前に掲げた。

 赤い球体ではない。

 肌色をした、人間の腕。そして五本の指。


挿絵(By みてみん)

「……腕、だと?」


 聞き覚えのある、しかし久しく発していなかった自分の「生声」が喉から出た。

 ポンタは跳ね起きた。布団が滑り落ちる。

 そこに在るのは、ダルマのボディではない。人間の手足、人間の胴体。

 ふらつく足取りで、部屋の隅にある姿見の前へと歩み寄る。


 鏡の中に映っていたのは――。

 まだ幼さの残る、赤い髪の「人間の少年」の姿だった。


「……は?」


 思考が停止する。

 ダルマじゃない。俺は、人間に戻ったのか?

 状況を理解するより先に、驚愕が喉を突き破った。


「何ぃいいいいいいいいッ!?」


 平和が戻ったはずのアルメニアの城内に、少年の絶叫が響き渡る。

 伝説のSランクパーティ『アカマル』。そのリーダーである破壊神の身に起きた最大の異変――。

 どうやら彼らの新しい冒険は、さらなる波乱と共に幕を開けることになりそうだ。


(第1章 完)


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

これにて第1章『紅き浮遊ダルマと銀髪の少女 編』、完結です。


ラストでまさかの人間化(?)を果たしてしまったポンタ。

この姿が第2章でどのような波紋を呼ぶのか、エリスやミランダたちの反応も含めて、ぜひご期待ください!


【重要:明日からの更新についてお知らせ】


明日より、物語は待望の第2章『王都ゼリア編』へと突入いたします!

これに合わせて、よりクオリティの高い原稿をお届けするため、明日からは以下の通り更新ペースを変更させていただきます。


更新頻度: 1日2回 ⇒ 毎日「朝7時」の1回更新


変更理由: 多くの方にお読みいただいている「朝の時間帯」に一本化し、1話ずつの密度をさらに高めていくためです。


カクヨムで応援してくださっていた皆様も、なろうで新しく読み始めてくださった皆様も、これからは毎朝のルーティンとしてポンタとエリスの冒険を楽しんでいただければ幸いです!


明日、朝7時。

第50話「ダルマから少年になった日」でお会いしましょう!

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