神の雷(アヴェンジャー)
【第2章・王都編開幕!】
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カクヨムで話題を呼んだ注目作、なろうにて絶賛連載中!
※第1章(1〜49話)完結済み。通勤・通学のお供にどうぞ!
その瞬間、戦場の時間が止まったかのような錯覚が支配した。
城壁の頂上。エリスの展開した『聖盾アイギス』の中心で、ポンタの背後に顕現したのは、この異世界には存在し得ない、無骨で凶悪な鋼鉄の塊だった。
七本の銃身を束ねた、巨大な回転式多砲身機関銃。
かつてポンタがいた世界において、攻撃機A-10サンダーボルトIIの機首に搭載され、戦車を上空から紙屑のように粉砕するために開発された史上最強の航空機関砲、『GAU-8 アヴェンジャー』。
全長六メートル、重量三百キログラム。毎分約四千発の30mm弾を吐き出すその兵器は、人間が扱う領域を遥かに超えた、純粋な破壊装置そのものだ。
『……システム、接続確認』
ポンタが脳内で呼びかける。即座にソフィアの冷静な声が返ってきた。
(リンク正常。エリスのユニークスキル『接続者』を経由し、異次元からのマナ供給パスが確立。供給量、計測不能。出力リミッター、完全解除)
ポンタの身体――その正体は、かつてこの世界に降り立った「赤き賢者」が、元の世界へ帰還するために作り上げた次元航行船のプロトタイプ『吉祥天ダルマ』だ。
全身を神話級金属「ヒヒイロカネ」で構成されたそのボディは、理論上、無限の魔力負荷に耐えうる耐久性を誇る。
現代兵器の殺傷能力と、神話級素材の耐久性、そして異次元の無限エネルギー。
三つの理外の力が融合し、今ここに、邪神すら穿つ『神の雷』が完成した。
(バレル冷却用『氷魔石』、臨界稼働。弾薬生成術式、展開。……マスター、いつでも撃てます)
『ああ……行くぞ』
フォォォォォン……!!
電動モーターのような重厚な駆動音が響き、七本の銃身が高速で回転を始めた。
ポンタの赤いボディが、眩いほどの深紅の光を放ち始める。ヒヒイロカネが過剰な魔力に反応し、熱を帯びているのだ。
フワリ、と。
重力を無視して、赤いダルマが空へと浮上した。
『聖盾アイギス』の光のドームを抜け、上空三十メートルへ。
戦場を見下ろすその位置は、神が下界を裁くための玉座のようだった。太陽を背に輝くその姿に、敵である魔物たちも、味方である兵士たちも、息を呑んで空を見上げた。
「あれは……ポンタ、なのか?」
ギデオンが呆然と呟く。そこにいるのは、愛嬌のあるマスコットではない。圧倒的な「力の奔流」そのものだった。
地上の王者たる『エンシェント・ベヒーモス』もまた、本能的な恐怖を感じ取っていた。
自分の領域を侵す空の存在。生物としての格の違い。
ベヒーモスは恐怖を振り払うように咆哮し、大気を震わせながら、先ほど城壁を半壊させた極大の暗黒ブレスを上空へ向けて放とうと口を開けた。
――グォォォォォォォォッ!!!
黒い破壊の光線が、空中のポンタへ迫る。
だが、ポンタは避けなかった。避ける必要などない。
彼は眼下の怪物を冷徹に見下ろし、静かに宣告した。
『この世界の理じゃ、お前のその鱗は無敵かもしれん。……だが、俺の理は違う』
銃身の回転が最高速に達する。
チャンバー内で生成されるのは、通常の30mm劣化ウラン弾ではない。エリスから供給された純粋なマナを、ヒヒイロカネの炉心で極限まで圧縮し、物理的な質量を持つまで高密度化した「対神・徹甲魔弾」だ。
それは魔法でありながら、魔法ではない。物理法則すらねじ伏せる、規格外の運動エネルギーの塊。
『グガァアアアアアアアア』
エイシェントベヒーモスの渾身の黒いブレス
城壁を破壊するほどの魔力を帯びた高熱の黒いブレスが迫ってくるが、ポンタは全く同時ずに一言言い放った…
『弾薬費は無限だ。――たっぷり味わえ!』
ポンタの意志と共に、引き金が引かれた。
『神代の弾雨ッ!!』
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!
天が裂けたかのような轟音が、アルメニア全土を揺るがした。
毎分四千発。それは「連射」という概念を超えていた。
七本の銃身から吐き出される、全てが赤く輝く曳光弾。途切れることのない光の線は、一本の「極太の光の鞭」となって地上へ叩きつけられた。
本来、戦車の分厚い装甲すら紙のように貫通する対物破壊兵器だ。そこに異次元の魔力が上乗せされている。その威力は、核の一撃にも等しい局所的破壊力を持っていた。
ベヒーモスの放った暗黒ブレスなど、瞬く間に押し返され、霧散する。
そして、光の奔流はベヒーモスの巨体を真正面から捉えた。
「ギ、ガァァァァァァァッ!?」
伝説級の怪物が、生まれて初めて悲鳴を上げた。
魔法を無効化するはずの鋼鉄の鱗が、意味をなさずに剥がれ飛び、その下の肉が弾け飛ぶ。
再生能力? そんなものは無駄だ。
細胞が再生を始めるコンマ一秒の間に、数十発の30mm魔弾がその箇所をさらに深く抉り取り、消し飛ばすのだ。
圧倒的な質量と熱量の暴力。
それは解体作業ですらない。消しゴムで鉛筆の線を消すように、ベヒーモスという存在そのものが、頭部から、胴体へ、そして足元へと、物理的に「消滅」させられていく。
『まだだ、まだ終わらんぞ!』
ポンタは銃口をわずかに動かした。
光の鞭が薙ぎ払われる。
ベヒーモスの背後に密集していた数千の本隊――オークも、オーガも、リザードマンも。光に触れた瞬間、絶叫する暇もなく蒸発した。
大地が深々と抉れ、地形が変わる。
もはや戦いではない。これは一方的な「掃除」だった。
数秒か。あるいは永遠にも感じられた数十秒か。
ベヒーモスが跡形もなく消え去り、その背後の平原が更地になったことを確認して、ポンタはトリガーから意識を離した。
ヒュゥゥゥゥゥゥ……ン。
回転音が下がり、やがて静寂が訪れる。
真っ赤に焼けた銃身からは、冷却用氷魔石が昇華した白い蒸気が、シューッと音を立てて立ち昇っていた。
誰も動けなかった。
歓声を上げることも忘れ、敵も味方も、ただその光景に立ち尽くしていた。
圧倒的な破壊の跡。神話の怪物がいた場所には、ただ大きなクレーターだけが残されている。
「……30mm弾……!? バッチリ発射されてるぅ!?しかもバレルも溶けてない、排熱効率が完璧に機能してるね!流石私とジイちゃんの傑作だよ!」
ルルだけが、エンジニアとしての視点で無事役目を果たしている作品に戦慄し、目を輝かせていた。
「音が……世界が悲鳴を上げているような音でした……」
ミリーナは耳を押さえながら、恐怖と安堵が入り混じった表情で空を見上げる。
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