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死線へのブリーフィング

【第2章・王都編開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

カクヨムで話題を呼んだ注目作、なろうにて絶賛連載中!

※第1章(1〜49話)完結済み。通勤・通学のお供にどうぞ!

 アルメニア防衛司令部。石造りの重厚な会議室は、立ち込める熱気と、それとは対照的な凍り付くような絶望感に支配されていた。

 円卓の中央に広げられた魔導地図には、無数の赤い光点が地平線を埋め尽くすように蠢いている。その数、およそ三万。対するアルメニアの防衛戦力は、正規兵2000人と、かき集められた冒険者300人に過ぎない。


 円卓を囲むのは、この地の辺境爵でありギルド長も兼任するギデオン、規律を重んじる銀甲冑の騎士団長、そして青いローブに黒髪をまとめている妙齢の女性、魔術師団長。周囲には、現在街に残っている中で有力なCランクパーティーのリーダーたちが十名ほど控えている。残念ながら、Bランク以上のパーティーは他領の救援任務ですべて出払っており、この場にいる者たちが文字通り「最後の砦」だった。


「報告によれば、魔物の先遣隊はすでに北の平原を突破。本隊の到着まで、一日の猶予もありません!」


 斥候の悲痛な叫びが室内に響く。騎士団長が、苦渋に満ちた表情で地図を拳で叩いた。


「……もはや搦手を弄する余裕はない。全軍、城門前に展開せよ。不退転の陣を敷き、玉砕覚悟で街を守り抜くほかあるまい!」


「ひっ……!」


 騎士団長の悲壮な怒声と、鎧の鳴る威圧的な音に、端に座っていたミリーナが肩を跳ねさせて怯える。そのミリーナを静めるように、隣に浮かぶ赤いダルマ――ポンタが静かに口を開いた。


『――却下だ。そんなのは戦略じゃなく、ただの集団自殺だな』


「なっ、貴公……今、なんと言った? 我ら騎士の覚悟を愚弄するか!」


 騎士団長が剣呑な眼光を向ける。ポンタは動じず、その双眸に宿る理性の光を静かに、だが力強く灯した。


『覚悟で街が守れるなら、最初から苦労はしねえよ。これだけの戦力差がある中で正面からぶつかってどうする? 三万という「物量」に対し、二千という「点」でぶつかれば、 囲まれて、疲弊して、数時間後には全員が魔物の餌になるだけだ。

少ない人数で大軍と渡り合うためには、地形や環境を徹底的に味方につける必要がある。

俺が提案するのは、三段階のポイントで敵を削る「三段階遅滞作戦」だ』


「三段階……だと?」


 ギデオンが身を乗り出す。ポンタは浮遊し、地図の北側に位置する「渓谷」を指し示した。


『第一防衛線はこの渓谷だ。ここは魔物の進行方向からは断崖絶壁に挟まれた極めて狭い一本道だが、アルメニア側からは緩やかな坂になっている。つまり、こちらは上に布陣するのが容易だが、向こう側からはこちらの姿を捉えることすらできない、理想的な奇襲ポイントだ。ここに囮を使い敵を誘い込み、土魔法で出口を堰き止め、崖の上から一方的に火力を叩き込む』


 理にかなった説明に、周囲のリーダーたちが驚きの表情で顔を見合わせる。ポンタはさらに、大河にかかる大橋の爆破と、精霊による人工的な鉄砲水での掃討作戦を次々と提案していった。


「精霊ですって……!? 召喚士は、歴史に名が残るレベルの希少な存在ですよ!」


『ああ、こいつがその召喚士様だ』


 ポンタが促すと、ミリーナが涙目になりながら「ひぃっ、み、ミリーナですぅ……」と恐縮して挨拶した。すると、周囲のCランクリーダーたちが一斉にどよめいた。


「ええっ!? あの受付嬢のミリーナちゃんか!?」

「可愛いけど、いつも仕事サボってばかりだったあのミリーナちゃんが召喚士様ぁ!?」


「みんな、ボロカスに言い過ぎですぅ~……」

 泣きそうになって困り果てるミリーナ。そのあまりに彼女らしい姿に、張り詰めていた会議室にドッと笑いが起こり、重苦しかった場の空気がふわりと和んだ。

 ギデオンはそんなやり取りを、柔らかな面持ちで見つめていた。

(いつのまに、そんな成長を遂げたのか。やはり、ポンタたちに託して正解だったな……)

 かつて自分が救った少女が、今や街を救う鍵になろうとしている。ギデオンは育ての親のような心境で、内心深く満足していた。


『最後はアルメニア城壁での最終攻防戦だ。ここまでくれば、敵の戦力は一万以下まで削られているだろう。正規兵は長槍の密集陣ファランクスを組み、城壁からの魔法攻撃と連携して踏ん張ってくれ。仕上げは、俺の「アヴェンジャー」でまとめて殲滅する。上手くいけば、一万程度の魔物なら一気に片付けられる威力がある』


 ポンタの宣言に、室内の温度が一段上がった。


『この作戦であれば、今の数の劣勢も逆転できる。現実的な作戦だと思うが、どうだ?』


 ポンタの問いかけに、諦めかけていた将兵たちの瞳に、希望の火が灯る。

「……本当にそんなことができるなら!」「守り切れるぞ!」「やってやる!」と、士気は最高潮に達した。


「よし、アカマルの提案したこの作戦を採用する!」


 ギデオンが立ち上がり、力強く机を叩いた。


「お前達、アルメニア魂を見せる時だぜ。愛する家族を、この街を、クソ魔物共からきっちり守り通そうじゃねえか。作戦開始は一時間後だ。それぞれ持ち場に戻って必要な準備に入ってくれ!」


「は!!」


 会議が終了すると、先ほどまでポンタに噛み付いていた騎士団長と魔術師団長が、真っ先にポンタのもとへ駆け寄った。


「……ポンタ殿、先ほどは失礼した。まさかこれほどの戦術眼をお持ちとは。その慧眼、恐れ入った!」

「あなたたちがいてくれて本当に良かった。私たちはまだ、戦えます!」


 二人の心からの感謝に対し、ポンタは静かに頷き、柔らかな口調で言葉を返した。


『厳しいことも言って悪かったな。だが、正規軍の立ち回りは戦局に与える影響が多大だ。あんたたちの働きに期待しているぜ』


 そのフォローに、二人は力強く頷き、使命感に燃える表情で立ち去っていった。


 一時間後、城門が重々しく開き、二千三百の将兵が静かに出撃を開始した。

 ポンタは一人、城壁の端で夕日に染まる地平線を眺めていた。大地を震わせる三万の足音が、確実に、そして不気味に迫っていた。


『(ソフィア、敵の位置情報を共有しろ)』

〈了解。第一陣、八時間後に予定の渓谷入り口へ到達。囮の騎兵部隊、配置完了しています〉


 決戦まであと八時間。

 隣には、杖を強く握りしめたエリスが立っていた。


「ポンタさん。私、全力で繋ぎます。絶対に、みんなを帰しましょうね」


『ああ。……パーティーの始まりだ』



ここまで読んでいただきありがとうございます!


作戦会議の緊張感から、ギデオンの熱い鼓舞、そして決戦前の静寂まで、非常に密度のある回になったと思いますが如何でしょうか?


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