鉄と爆炎のマイスター
【第2章・王都編開幕!】
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カクヨムで話題を呼んだ注目作、なろうにて絶賛連載中!
※第1章(1〜49話)完結済み。通勤・通学のお供にどうぞ!
ギルド地下の特別訓練場。その一角にある工房エリアは、鉄と油の匂いで充満していた。
「ふぅ……。できたぁ……」
ルルが作業台に突っ伏し、満足げなため息をついた。
彼女の周りには、複雑な設計図が散乱している。
「ガトリングの心臓部――回転機構と冷却システムの設計は完璧だよ。あとはジイちゃんが、外装をヒヒイロカネで仕上げてくれれば完成!」
俺たちの切り札となる最強兵器、ガトリングガン。
その開発は最終段階に入り、現在は街一番の鍛冶師ボルグの工房で最終調整が行われている。
ルルの仕事である「設計」と「内部機構の製作」は完了していた。
『お疲れさん、ルル。少し休んだらどうだ?』
「ううん、休んでる暇はないよ」
ルルは顔を上げ、作業台の端に積まれた「オリハルコンの駆動系(帝国の残骸)」と、ガトリングの試作パーツ(予備の回転シリンダー)を見比べた。
「決戦まであと少し……。私の武器も作らなきゃ。師匠の整備だけじゃなくて、私も横に並んで戦いたいから」
彼女の瞳は真剣そのものだった。
その様子を、休憩中だったエリスたちも見守っている。
「ルルちゃん、また新しい武器を作るんですか?」
「うん! エリスたちの負担を減らせるような、すっごいやつをね!」
ルルはガトリング用の予備パーツ――6つの穴が空いた回転シリンダーを手に取り、くるくると回し始めた。
「ねえ師匠。この回転機構……これをもっと大きくして、一発一発の威力が高い弾を撃てるようにしたらどうかな?」
『……ほう?』
「弾は火薬じゃなくて、錬金術で作った炸裂弾を使うの。こう……ポンッて撃ち出して、ドカン! って広範囲を吹き飛ばすような!」
俺は驚いた。
予備知識がない中で、彼女は「リボルバー式グレネードランチャー」の構造を思いついたのだ。
やはりこいつは天才だ。
『なるほど、そいつはいいアイデアだ。俺の世界には「グレネードランチャー」って武器があってな。直射するミリーナの弓とは違い、放物線を描いて障害物の裏側を爆撃できるんだ』
「放物線……! そっか、それなら前衛のヒルデ越しに攻撃できるし、壁の裏に隠れた敵も狙える!」
俺が現代兵器の概念を伝えると、ルルの表情がパァっと輝いた。
「すごいすごい! イメージが湧いてきた! それなら設計はこうして……」
彼女のユニークスキル『機工の真髄』が発動する。
ルルの目が解析モードのように光り、手元のパーツが目にも留まらぬ速さで組み上がっていく。
「弾頭の魔力充填率はこれでよし! 発射機構は魔力圧を利用して……できたっ!」
数時間後。
ルルの手には、黒鉄色の無骨な銃器が握られていた。
『MGL-6(魔導6連装グレネードランチャー)』の完成だ。
「よし、試射いくよ!」
ルルは訓練場の障害物コースに向かって構えた。
重量のある武器だが、ハーフドワーフの筋力を持つ彼女なら軽々と扱える。
ポンッ、ポンッ、ポンッ。
独特の気の抜けた発射音が響く。
放たれた弾頭は山なりの軌道を描き、遮蔽物(壁)の向こう側へと吸い込まれていった。
直後。
ドゴォォォォン!!
壁の裏側で紅蓮の炎が巻き起こった。錬金術で作った「焼夷弾」の効果だ。
『ナイスだルル! これなら敵が密集してようが、隠れてようが一網打尽だ!』
「えへへ、すごいでしょ!」
ルルはVサインを作った。
それを見ていたヒルデが感心したように唸る。
「むぅ……。我の前衛ラインを飛び越えての爆撃か。これなら巻き込まれる心配もなく暴れられるな」
「はい。それに、私の矢が届かない死角の敵も任せられそうですぅ」
ミリーナも安心したように胸を撫で下ろす。
だが、ルルは真剣な顔で自分の腰に手をやった。そこには愛用の巨大モンキーレンチが吊るされている。
「でも、これだけじゃ足りない。私だってレンチを使えば近接戦もできるし、逃げ足には自信あるけど……」
「耐久力に難あり、ですか?」
エリスが心配そうに尋ねる。
ルルは苦笑して頷いた。
「うん。エリスの『防護魔法』があるとはいえ、もし障壁を破られて接近されたら、私じゃ耐えきれない。……だから、もっと物理的な『壁』が必要なの」
ルルは視線を部屋の隅に向けた。
そこには、ギデオンから譲り受けた「古代ゴーレムの巨大な腕」が転がっている。オリハルコン製の超重量級パーツだ。
「あれを使いたいけど、重すぎて持ち運べないし……。師匠の『アイテムボックス』みたいに、使う時だけ出せればいいんだけど……」
ルルが巨大な腕に触れ、悩むように眉をひそめた瞬間だった。
彼女のスキル『機工の真髄』が、新たな輝きを放った。
「……あれ? これ、入れるかも」
『入る? 何がだ?』
「この腕……私が構造を完全に理解して整備したから、私の『一部』として認識されてるみたい。……やってみる!」
ルルが念じると、巨大なゴーレムアームが空間に溶けるように消滅した。
そして次の瞬間。
「――展開!」
ズギュゥゥゥン!!
空間が歪み、ルルの背後に二本の巨大な鋼鉄の腕が出現した。
本体はなく、腕だけが浮遊している。まるでルルを守護するスタンドのようだ。
「よしっ! やっぱり! 私のスキル、整備した兵器なら亜空間に収納できるみたい!」
『マジかよ……! 自分専用の武器庫ってわけか!』
ルルはニヤリと笑い、実戦形式のテストを開始した。
接近戦用の岩人形が猛スピードで迫ってくる。
「――寄らないで!」
ブォンッ!!
ルルの意思に反応し、巨大な鋼鉄の腕が岩人形を「裏拳」で薙ぎ払った。
粉砕するのではなく、弾き飛ばす一撃。
接近する敵を強制的に距離を取り、再び射撃ゾーンへと押し戻す「拒絶」の盾だ。
「私の防護魔法でダメージを防いで、ルルちゃんが敵そのものを弾き飛ばす……。これなら鉄壁ですね!」
エリスが手を叩いて喜ぶ。
『なるほど……! ヒルデが前衛で暴れるなら、ルルは後衛を守る要塞ってわけか』
「うん! これなら、スナイパーのミリーナさんや、師匠の背中も私が守れる!」
遠距離はグレネードによる曲射爆撃。
近距離はゴーレムアームによる物理防衛。
死角なしの「戦闘工兵」の誕生だ。
「へへっ、どう? これで私も、アカマルの戦力として胸を張れるかな?」
汗と油にまみれた顔で、ルルが笑う。
その姿は、誰よりも頼もしく見えた。
『ああ、文句なしだ。お前は最高の発明家であり……俺たちのチームに欠かせない最強の戦友だよ』
「えへへ……。よーし、じゃあ後は……」
その時だった。
ギィィィ……と重い扉が開く音がした。
「……待たせたな」
入ってきたのは、煤だらけになったドワーフの老匠、ボルグだった。
その手には、黒い布に包まれた「長大な筒状のもの」が抱えられている。
布越しでも分かる。
そこから放たれる、凍てつくような魔力と、圧倒的な金属の威圧感。
「最高傑作の仕上がりだ。……アカマルの旦那、受け取りな」
ついに、役者は揃った。
俺たちの切り札が、いま解き放たれる。
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