規格外の新人たちと、辺境伯の憂鬱
【第2章・王都編開幕!】
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カクヨムで話題を呼んだ注目作、なろうにて絶賛連載中!
※第1章(1〜49話)完結済み。通勤・通学のお供にどうぞ!
翌朝。
俺たちはギデオンに指定された通り、冒険者ギルドのマスター室を訪れていた。
普段は冒険者たちの喧騒で溢れかえっているロビーも、今日はどこかピリピリとした空気が漂っている。
「――入れ」
重厚な扉をノックすると、中から野太い声が返ってきた。
部屋に入ると、執務机の奥でギデオンが書類の山と格闘していた。
目の下に濃いクマを作っているが、俺たちの顔を見ると、ニヤリと口角を上げた。
「よう、来たか。昨日は飯の最中にすまなかったな」
『いや、気にするな。……それで、話ってのは?』
俺が単刀直入に切り出すと、ギデオンは椅子から立ち上がり、部屋の隅に置かれていた木箱を持ち上げてきた。
ドスン、と重い音がして机の上に置かれる。
「まずは約束のブツだ。『迷わずの森』の奥から回収した、帝国の兵器の残骸……その中でも特に純度の高い希少金属と、古代遺跡から回収した魔導部品だ」
彼が蓋を開けると、鈍い光を放つ金属パーツや、魔力を帯びた歯車がぎっしりと詰まっていた。
それを見たルルの目が、パッと見開かれる。
「うわぁっ! すごっ! これ、オリハルコンの駆動系じゃん! こっちは高純度の魔石回路!?」
「おうよ。ハーフドワーフの嬢ちゃんなら、こいつの価値がわかるだろ?」
「わかるよ! これがあれば……あれが作れるかも!」
ルルは宝の山に飛びつき、目を輝かせてパーツをあさり始めた。
ここまでは和やかな雰囲気だ。
俺はタイミングを見計らって、後ろに控えていた二人を前に出した。
『ギデオン、こっちからも報告がある。……新しい仲間を紹介させてくれ』
まずはヒルデが一歩進み出る。
「地竜騎士ヒルデ・リンドブルム。主に従い、以後お見知り置きを」
彼女が騎士の礼をとると、ギデオンは目を丸くした。
「地竜人だと!? 伝説級の希少種じゃないか……。しかもその黄金の鱗、高位の騎士階級か?」
「いかにも。この身と剣は、全て主に捧げている」
武人同士、通じるものがあるのだろう。ギデオンは感心したように唸った。
だが、次の一人でその余裕は吹き飛んだ。
「やあ、君がここのボス? 僕はユーグ。世界樹の枝だよ」
エリスの杖からユーグが実体化し、ヒラヒラと手を振る。
ギデオンは飲もうとしていたお茶を、豪快に吹き出した。
「ぶふっ!!? ――ッ!?」
彼は椅子から転げ落ちそうになりながら、ユーグを凝視した。
精霊の放つ「格」を感じ取り、顔色が蒼白になる。
「せ、世界樹の精霊……!? 神話の存在じゃないか……! お前ら、一体どこまで規格外なら気が済むんだ!」
『まあ、成り行きでな』
「成り行きで神様を仲間にする奴があるか!」
ギデオンは頭を抱え、深いため息をついた。
だが、すぐに表情を引き締め、鋭い眼光を俺たちに向けた。
「……だが、そいつは好都合だ。その『規格外』の力……今すぐにでも借りたい事態になっちまった」
場の空気が一変する。
ギデオンは新しい地図を机に広げた。アルメニア周辺の地形図だ。
「昨日の報告通り、お前らが帝国のプラントを潰してくれたおかげで、森の枯渇は止まった。……だが、副作用が出ている」
ユーグが地図を覗き込み、補足した。
「『逆流』だね。堰き止められていた汚れたマナが、一気に溢れ出したんだ。それに当てられた魔物たちは、精神を蝕まれて凶暴化してしまったんだよ」
ユーグの言葉に、エリスが息を飲む。
「凶暴化……ですか?」
「うん。一度汚染された魔物は、理性を失いただの破壊衝動の塊になる。周囲の生き物を滅ぼすまで、その殺戮は止まらない。……もう、元には戻らないんだ」
「……その通りだ」
ギデオンが重々しく頷く。
「斥候からの報告によると、魔物の大群がこのアルメニアに向かって北上中だ。……その数、推定3万」
『――ッ!?』
3万。
その数字に、俺も絶句した。
5000程度なら俺のフルオートでなんとかなるかもしれないが、3万となると話が違う。それはもう「災害」だ。
『……味方の戦力は?』
「アルメニアの正規兵が約2000人。そして冒険者だが……生憎と、主力であるB級以上は北方の遠征や他都市の救援に出払っていてな。現在は不在だ」
2000対30000。
しかも、こちらはC級以下の若手冒険者と一般兵のみ。
絶望的な戦力差だ。
「俺はギルド長であり、このアルメニアを預かる辺境伯でもある。……だが、正直に言おう。今の戦力では、市民を守りきれるか怪しい」
ギデオンは拳を握りしめ、苦渋の表情を浮かべた。
総司令官として、最悪の未来――都市の蹂躙が見えているのだろう。
彼は顔を上げ、すがるような、それでいて強い信頼を込めた瞳で俺たちを見た。
「だからこそ、お前たちに頼みたい。アカマル……その規格外の力で、この都市の『遊撃部隊』となり、戦況をひっくり返してくれ」
彼はさっき渡したパーツの山を指差した。
「あのパーツも、この戦いに備えての先行投資だ。……この防衛戦で武功を立てれば、ギルドの総意として特例措置を行う。お前たちを『Aランク冒険者』へ昇格させる」
Aランク。
冒険者としての最高峰に近い地位。
だが、今の俺たちにとってそれは「餌」ではない。この街を守るための「責任」の証だ。
俺は仲間たちを見回した。
エリスは静かに頷き、ヒルデは不敵に笑っている。ルルはすでにパーツの組み立てを脳内で始めているようだ。
ただ一人、ミリーナだけは「さ、3万……」と顔を青くして震えていたが、それでも逃げ出そうとはせず、俺の視線にコクンと頷き返した。
『……ああ、引き受けた』
俺はギデオンに向き直り、力強く答えた。
『俺たちの家がある街だ。指一本触れさせねえよ』
「……感謝する」
ギデオンが安堵したように息を吐き、ニカっと笑った。
「決戦は、魔物の群れが到達する数日…おそらく3日後だ。それまで地下の特別訓練場を好きに使っていい。……頼んだぞ、アカマル。お前たちが最後の希望だ」
俺たちはギデオンに敬礼を返し、部屋を後にした。
手には大量の強化パーツ。背中には、都市の命運。
やることは山積みだ。
最強のダルマの本気、見せてやる。
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