表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/88

規格外の新人たちと、辺境伯の憂鬱

【第2章・王都編開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

カクヨムで話題を呼んだ注目作、なろうにて絶賛連載中!

※第1章(1〜49話)完結済み。通勤・通学のお供にどうぞ!


 翌朝。

 俺たちはギデオンに指定された通り、冒険者ギルドのマスター室を訪れていた。

 普段は冒険者たちの喧騒で溢れかえっているロビーも、今日はどこかピリピリとした空気が漂っている。


「――入れ」


 重厚な扉をノックすると、中から野太い声が返ってきた。

 部屋に入ると、執務机の奥でギデオンが書類の山と格闘していた。

 目の下に濃いクマを作っているが、俺たちの顔を見ると、ニヤリと口角を上げた。


「よう、来たか。昨日は飯の最中にすまなかったな」

『いや、気にするな。……それで、話ってのは?』


 俺が単刀直入に切り出すと、ギデオンは椅子から立ち上がり、部屋の隅に置かれていた木箱を持ち上げてきた。

 ドスン、と重い音がして机の上に置かれる。


「まずは約束のブツだ。『迷わずの森』の奥から回収した、帝国の兵器の残骸……その中でも特に純度の高い希少金属レアメタルと、古代遺跡から回収した魔導部品だ」


 彼が蓋を開けると、鈍い光を放つ金属パーツや、魔力を帯びた歯車がぎっしりと詰まっていた。

 それを見たルルの目が、パッと見開かれる。


「うわぁっ! すごっ! これ、オリハルコンの駆動系じゃん! こっちは高純度の魔石回路!?」

「おうよ。ハーフドワーフの嬢ちゃんなら、こいつの価値がわかるだろ?」

「わかるよ! これがあれば……あれが作れるかも!」


 ルルは宝の山に飛びつき、目を輝かせてパーツをあさり始めた。

 ここまでは和やかな雰囲気だ。

 俺はタイミングを見計らって、後ろに控えていた二人を前に出した。


『ギデオン、こっちからも報告がある。……新しい仲間を紹介させてくれ』


 まずはヒルデが一歩進み出る。


「地竜騎士ヒルデ・リンドブルム。ポンタに従い、以後お見知り置きを」


 彼女が騎士の礼をとると、ギデオンは目を丸くした。


地竜人アース・ドラゴニュートだと!? 伝説級の希少種じゃないか……。しかもその黄金の鱗、高位の騎士階級か?」

「いかにも。この身と剣は、全て主に捧げている」


 武人同士、通じるものがあるのだろう。ギデオンは感心したように唸った。

 だが、次の一人でその余裕は吹き飛んだ。


「やあ、君がここのボス? 僕はユーグ。世界樹の枝だよ」


 エリスの杖からユーグが実体化し、ヒラヒラと手を振る。

 ギデオンは飲もうとしていたお茶を、豪快に吹き出した。


「ぶふっ!!? ――ッ!?」


 彼は椅子から転げ落ちそうになりながら、ユーグを凝視した。

 精霊の放つ「格」を感じ取り、顔色が蒼白になる。


「せ、世界樹の精霊……!? 神話の存在じゃないか……! お前ら、一体どこまで規格外なら気が済むんだ!」

『まあ、成り行きでな』

「成り行きで神様を仲間にする奴があるか!」


 ギデオンは頭を抱え、深いため息をついた。

 だが、すぐに表情を引き締め、鋭い眼光を俺たちに向けた。


「……だが、そいつは好都合だ。その『規格外』の力……今すぐにでも借りたい事態になっちまった」


 場の空気が一変する。

 ギデオンは新しい地図を机に広げた。アルメニア周辺の地形図だ。


「昨日の報告通り、お前らが帝国のプラントを潰してくれたおかげで、森の枯渇は止まった。……だが、副作用が出ている」


 ユーグが地図を覗き込み、補足した。


「『逆流バックフロー』だね。堰き止められていた汚れたマナが、一気に溢れ出したんだ。それに当てられた魔物たちは、精神を蝕まれて凶暴化バーサクしてしまったんだよ」


 ユーグの言葉に、エリスが息を飲む。


「凶暴化……ですか?」

「うん。一度汚染された魔物は、理性を失いただの破壊衝動の塊になる。周囲の生き物を滅ぼすまで、その殺戮は止まらない。……もう、元には戻らないんだ」

「……その通りだ」


 ギデオンが重々しく頷く。


「斥候からの報告によると、魔物の大群がこのアルメニアに向かって北上中だ。……その数、推定3万」


『――ッ!?』


 3万。

 その数字に、俺も絶句した。

 5000程度なら俺のフルオートでなんとかなるかもしれないが、3万となると話が違う。それはもう「災害」だ。


『……味方の戦力は?』

「アルメニアの正規兵が約2000人。そして冒険者だが……生憎と、主力であるB級以上は北方の遠征や他都市の救援に出払っていてな。現在は不在だ」


 2000対30000。

 しかも、こちらはC級以下の若手冒険者と一般兵のみ。

 絶望的な戦力差だ。


「俺はギルド長であり、このアルメニアを預かる辺境伯でもある。……だが、正直に言おう。今の戦力では、市民を守りきれるか怪しい」


 ギデオンは拳を握りしめ、苦渋の表情を浮かべた。

 総司令官として、最悪の未来――都市の蹂躙が見えているのだろう。

 彼は顔を上げ、すがるような、それでいて強い信頼を込めた瞳で俺たちを見た。


「だからこそ、お前たちに頼みたい。アカマル……その規格外の力で、この都市の『遊撃部隊エース』となり、戦況をひっくり返してくれ」


 彼はさっき渡したパーツの山を指差した。


「あのパーツも、この戦いに備えての先行投資だ。……この防衛戦で武功を立てれば、ギルドの総意として特例措置を行う。お前たちを『Aランク冒険者』へ昇格させる」


 Aランク。

 冒険者としての最高峰に近い地位。

 だが、今の俺たちにとってそれは「餌」ではない。この街を守るための「責任」の証だ。


 俺は仲間たちを見回した。

 エリスは静かに頷き、ヒルデは不敵に笑っている。ルルはすでにパーツの組み立てを脳内で始めているようだ。

 ただ一人、ミリーナだけは「さ、3万……」と顔を青くして震えていたが、それでも逃げ出そうとはせず、俺の視線にコクンと頷き返した。


『……ああ、引き受けた』


 俺はギデオンに向き直り、力強く答えた。


『俺たちの家がある街だ。指一本触れさせねえよ』

「……感謝する」


 ギデオンが安堵したように息を吐き、ニカっと笑った。


「決戦は、魔物の群れが到達する数日…おそらく3日後だ。それまで地下の特別訓練場を好きに使っていい。……頼んだぞ、アカマル。お前たちが最後の希望だ」


 俺たちはギデオンに敬礼を返し、部屋を後にした。

 手には大量の強化パーツ。背中には、都市の命運。

 

 やることは山積みだ。

 最強のダルマの本気、見せてやる。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


もし「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、 ブックマーク登録や、広告下の【☆☆☆☆☆】から評価ポイントを入れていただけると嬉しいです!


執筆の励みになります!

↓↓【☆☆☆☆☆】評価お願いします↓↓

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ