表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/30

初報酬は500万!?

【カクヨムコン参加中の話題作、ついに「なろう」解禁!】

★スタートダッシュ! 毎日「7時」と「19時」の2回更新中!★

 契約は成立した。

 エリスは俺を「ぬいぐるみ」のように胸に抱え、森を歩き出した。

 なんだか妙な気分だが、彼女の体温と鼓動が伝わってきて、不思議と安心感がある。移動の手間が省けるのも悪くない。


 森を抜け、街道をしばらく進むと、前方に巨大な石造りの城壁が見えてきた。


『マップデータ照合。前方、冒険者拠点・城塞都市「アルメリア」を確認』


 ソフィアのナビゲート通りだ。いよいよ異世界の街か。


「ポンタさん、検問があります。喋ったり動いたりすると、魔物だと思われて騒ぎになるかも……」

「わかってる。俺にはとっておきのスキルがある」


(ソフィア、隠蔽モード起動!)


『了解。スキル【擬態ロック・ミミック】発動。生体反応を遮断します』


 俺は意識をオフにし、ただの「赤い置物」になりきった。

 検問の衛兵は、エリスが抱える俺を不審そうに見たが、「旅のお守りの赤い人形です」というエリスの苦しい言い訳と、彼女のボロボロの姿への同情もあってか、なんとかスルーしてくれた。


 街の中に入ると、活気のある喧騒が耳に飛び込んできた。

 石畳の道、レンガ造りの建物、行き交う馬車。ファンタジーRPGそのものの光景だ。

 だが、観光をしている暇はない。まずは活動資金だ。


 俺たちは街の中心部にある「冒険者ギルド」へと向かった。

 重厚な扉を開けると、ムッとするような熱気と、エールと汗の混じった独特の臭いが鼻をつく。

 夕方のギルドは、依頼を終えた荒くれ者たちでごった返していた。


「おい見ろよ、あれ」

「ん? うわ、またあいつか。『役立たずのエリス』じゃねぇか」

「生きてたのかよ。てっきり森で野垂れ死んだかと……」


 エリスが入店した瞬間、周囲から陰湿なヒソヒソ話が聞こえてくる。

 彼女が名乗った『鉄の牙』による悪い噂が広まっているのだろう。誰もが彼女を蔑んだ目で見ている。

 エリスの体が硬直する。俺を抱く腕にギュッと力が入るのがわかった。


(……チッ、気分の悪い場所だ。ここが完全なアウェイってわけか)


 俺は心の中で舌打ちをする。

 だが、今のエリスには俺がついている。

 エリスは視線を下に向け、逃げるように受付カウンターへと向かった。


「あ、あの……素材の換金をお願いします……」


「はいはい、エリスさんですね。今日は薬草ですか? それともゴブリンの耳?」


 受付嬢も、あからさまに面倒くさそうな態度だ。

 エリスは震える手で、俺がインベントリからこっそり吐き出した「黒い魔石」をカウンターに置いた。


 ゴトッ。


 重々しい音がカウンターに響く。

 それは拳大の大きさがある、底知れない闇色を湛えた魔石だった。

 それを見た瞬間、受付嬢の愛想笑いが凍りついた。

 周囲の冒険者たちの視線も、その異様な魔力に引き寄せられて釘付けになる。


「こ、これは……!? まさか、指定危険種『ブラック・ファング』の魔石……!?」


 受付嬢の裏返った声が、ギルド内に響き渡った。


「ええっ!?」

「嘘だろ!? ブラック・ファングだって!?」

「あいつはCランクパーティーでも全滅しかねない化け物だぞ!? ありえねぇ!」


 ギルド内が騒然となる。

 嘲笑は消え、驚愕と疑念が渦巻く。

 受付嬢は震える手で鑑定魔道具を取り出し、慎重に確認を行う。レンズを覗き込む彼女の顔色が、見る見るうちに青ざめていく。


「ほ、本物です……! 魔力濃度、形状、間違いありません。……エリスさん、これをあなたが倒したのですか……?」


「い、いえ! 私ではありません!」


 エリスは慌てて首を横に振り、腕の中の俺を少しだけ持ち上げた。


「私の……その、新しく契約したポンタさんが、倒してくださいました」


「ぽ、ぽんた……? その……赤い丸いの、がですか?」


 受付嬢の目が点になる。

 周囲の冒険者たちも、ポカンと口を開けて俺を見ている。

 「人形が倒した? 馬鹿な」という空気が流れる。

 埒が明かないな。


 俺は仕方なく、受付嬢の脳内にだけ念話を飛ばした。

 少しドスを利かせて。


『……おい。いつまで待たせる気だ? 早く換金しろ。そこの嬢ちゃんが疲れてる』


「ひっ!?」


 頭の中に直接響く謎の声に、受付嬢は悲鳴を上げて飛び上がった。

 目の前の赤い物体が、ただの置物ではないことを悟ったのだろう。彼女は顔面蒼白になりながら、大慌てで金庫へ走った。


 提示された報酬額は、金貨50枚。

 日本円にして約500万円相当の大金だ。エリスの手が震えるほどの大金である。


 ギルドを出る時、俺たちは英雄のような、あるいは得体の知れない化け物を見るような目で見送られた。

 さっきまでの嘲笑は、もうどこにもなかった。


        ***


 懐が温まった俺たちは、その足で大通りにある防具屋へとやってきた。

 鉄と革の匂いが充満する店内には、様々な武器や防具が所狭しと並んでいる。


「いいかエリス。FPS……いや、冒険の基本は『装備』だ。プレイスキルも大事だが、初期装備のまま高レベルエリアに行くなんざ自殺行為だぞ」


「は、はい……でも、ポンタさん。そんなに高いものを買ってもらうわけには……」


 エリスは店の棚に並ぶ高級な革鎧を見て、値札の数字に目を回している。

 『鉄の牙』で奴隷同然に扱われ、その日暮らしを強いられていた今の彼女にとっては、到底手の届かない高級品ばかりだ。

 だが、今の俺たちには金がある。そして、俺には最強の鑑定士がついている。


(ソフィア、この店で一番性能コスパが良く、エリスの魔法適性を阻害しない装備をマーキングしろ)


『了解。スキャン開始……検索完了。右手の棚、上から二段目の「飛竜革の軽鎧ワイバーン・レザー」を推奨。軽量かつ、微弱なマナ回復効果が付与されています』


(よし、それだ! あとはそれに合うブーツと……おっ、あの深緑のマントも良さそうだな)


 俺は店主に指示を出し、ソフィア推奨の最強装備一式を揃えさせた。

 有無を言わさず試着室に押し込む。


 数分後。

 カーテンが開き、おずおずとエリスが出てきた。

 その姿を見て、俺は思わず唸った。


「……おお」


 泥だらけのローブ姿とは、まるで別人がそこにいた。

 赤茶色の革鎧は、彼女の華奢なラインを守りつつ動きやすさを確保している。その上から羽織った深緑のマントは、銀色の髪と絶妙なコントラストを描いていた。

 機能的でありながら、どこか気品を感じさせる立ち姿。


「へへ……どう、ですか? ポンタさん。これなら、一緒に歩いても恥ずかしくないですか?」


 エリスが頬を染め、はにかむような笑顔を向けてくる。

 守ってやりたい、と思わせる破壊力抜群の笑顔だ。

 俺は内心、盛大にガッツポーズをした。


(おいソフィア、今の笑顔のスクショ撮ったか!?)

『……機能にありません。マスターの記憶領域に保存してください』

(ちぇっ、つれないなぁ)


「……ああ、悪くない。最高の装備だ」


 俺は努めてクールにそう答え、心の中でこれからの冒険に思いを馳せた。

 謎多き薄幸の美少女と、最強の赤いダルマ。そして脳内の毒舌AI。

 ちぐはぐで奇妙なパーティーだが、このメンバーなら、この異世界攻略も悪くないかもしれない。


 俺たちは新たな装備と共に、夕暮れの街へと歩き出した。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


もし「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、 ブックマーク登録や、広告下の【☆☆☆☆☆】から評価ポイントを入れていただけると嬉しいです!


執筆の励みになります!

↓↓【☆☆☆☆☆】評価お願いします↓↓

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ