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パーティ名決まる!その名も

【カクヨムコン参加中の話題作、ついに「なろう」解禁!】

★スタートダッシュ! 毎日「7時」と「19時」の2回更新中!★


 冒険者ギルド一階の酒場は、夕食時ということもあって大いに賑わっていた。

 あちこちでジョッキがぶつかり合う音と、冒険者たちの笑い声が響く。


「お待たせー! うぅ~、お腹すいたぁ!」


 工房での作業が一区切りついたのか、ルルが小走りでテーブルへとやってきた。

 顔やツナギのあちこちに油汚れや煤がついているが、その表情は充実感に満ちている。


『お疲れさん、ルル。……まずはこいつを聞いてくれ』


 俺は席に着いたルルに、先ほどの決定事項――ミリーナの正式加入を伝えた。


「えっ、本当!? やったぁ! これで女子部屋がもっと賑やかになるね!」

「はいっ! これからもよろしくお願いします、ルルさん!」


 ルルとミリーナが嬉しそうにハイタッチを交わす。

 技術屋と索敵手。専門分野は違うが、波長は合うようだ。


 テーブルの上には、これからの前途を祝う豪華な食事が所狭しと並べられていた。

 香ばしい匂いを漂わせる山盛りの肉料理に、彩り豊かな新鮮野菜のサラダ。湯気を立てる具だくさんのスープ。そして、琥珀色に輝く果実酒のボトル。


『よし。それじゃあ改めて……新生パーティ結成に、乾杯!』

「「「かんぱーい!!」」」


 三人のグラスが軽快な音を立てて触れ合う。

 俺は食事こそできないが、こうして仲間たちが美味そうに食べている姿を見るだけで、魔力エネルギーが充填される気分だ。


「んん~っ! このお肉、柔らかくて最高!」

「スープも魚介の出汁が効いてて美味しいですぅ……!」

「サラダのドレッシングも絶品ですね。シャキシャキして美味しいです」


 ルルが肉にかぶりつき、ミリーナがスープに目を細め、エリスが上品にサラダを口へ運ぶ。

 しばらくの間、テーブルは幸せな咀嚼音と「美味しい」という言葉だけで満たされた。


 そして、食事が一段落した頃。

 俺はギデオンに言われた「宿題」を切り出した。


『さて、腹も膨れたところで本題だ。俺たちの「パーティ名」を決めなきゃならん』

「あ、そういえばまだ決めてなかったね」

「ずっと「名無し」でしたもんねぇ」


 ルルが果実酒をちびりと舐め、ミリーナが頷く。


『俺の方でもいくつか考えてみたんだが、どうだ?』


 俺はFPSマニアとしての知識を総動員し、温めていた案を披露した。


『【タスクフォース・オメガ】。あるいは【ブラボー・シックス】。……隠密作戦っぽくて渋いなら【サイレント・キル】なんてのもあるぞ』


 どうだ、と俺は自信満々に三人の顔を見渡す。

 だが、返ってきた反応は芳しくなかった。


「うーん……なんか、響きが怖くないですか? 殺る気満々というか……」

「それに数字とか記号って、なんか覚えにくいよ師匠」


 ミリーナとルルが微妙な顔をする。

 くっ、このミリタリーなカッコよさが通じないとは。


「じゃあ、私が考えた名前はどう!?」


 ルルがビシッと手を挙げた。


「【超高速回転歯車団ハイパー・ギアーズ】! もしくは【無限燃焼機関インフィニット・バーナー】!」

『……お前は暴走族か』


 即座に却下だ。工場じゃあるまいし。


「でしたらぁ、こういうのはどうでしょう?」


 今度はミリーナが、夢見るような瞳で口を開いた。


「【風の囁きを聞く者たち】……とか。吟遊詩人さんが歌にした時、綺麗に聞こえると思うんですぅ」

『……』

「……」


 長い。そして何より、自分たちで名乗るには恥ずかしすぎる。

 全員が黙り込み、テーブルに微妙な空気が流れた。


 カッコよすぎてもダメ、技術寄りすぎてもダメ、ポエムすぎてもダメ。

 パーティ名、意外と難しいぞ。


「あの……」


 悩む俺たちを見かねて、それまで静かに話を聞いていたエリスがおっとりと口を開いた。


「ポンタさんって、その……赤くて、丸いですよね?」

『ん? まあ、そうだが』


 俺のボディは赤い球体だ。それが最大の特徴でもある。


「でしたら……『アカマル』というのはどうでしょう?」


『……あかまる?』


 エリスは両手で丸い形を作り、ふんわりと微笑んだ。


「呼びやすいですし、親しみやすくて可愛いと思います。『アカマル』。……どうですか?」


 その瞬間、ルルとミリーナが顔を輝かせた。


「それだー!! さすがエリスちん、天才!」

「あ、いいですね! 覚えやすいし、ポンタ様の特徴そのまんまですぅ!」

『えっ、ちょ、待て待て! ダサくないか!? なんかペットの名前みたいだぞ!?』


 俺の抗議の声は、女子たちの賛同の声にかき消される。


『おいエリス、もっとこう……「深紅の」とか「球体要塞」とか、あるだろ!?』

「ふふ、でも『アカマル』の方が、ポンタさんの優しさが出てて素敵ですよ?」

『ぐっ……そ、そう言われると……』


 エリスの純粋な笑顔でそう言われると、弱い。

 俺がたじろいでいると、脳内で無機質な声が響いた。


『推奨します、マスター。対象の形状および色彩情報を的確に言語化した、非常に合理的な名称です。……プッ』

『おいソフィア、今笑っただろ。絶対笑ったよな!?』


 脳内の相棒にまでバカにされた気がするが、三人が気に入っているなら仕方がない。


『……はぁ。分かったよ。パーティ名は【アカマル】で決定だ』

「やったー! 乾杯し直しだね!」


 こうして、俺たちのパーティ名は、俺の形状そのままの『アカマル』に決定したのだった。


◇ ◇ ◇


 パーティ名も決まり、話題はもう一つの重要事項――「拠点マイホーム」の話へと移行した。


『資金はある。問題は、どこで物件を探すかだが……』

「あ、それなら任せてください!」


 ミリーナが自信ありげに胸を張った。


「アルメニアの不動産なら、商人ギルド所属の『ゴルドー商会』が一番です! ギルドの提携先でもありますし、良い物件をたくさん持ってますよ」

『なるほど、頼もしいな。……で、お前らはどんな家がいいんだ?』


 俺が問いかけると、待ってましたとばかりに欲望の蓋が開いた。


「私はねー、地下に巨大な実験場が欲しい!」


 ルルが身を乗り出し、目をキラキラさせて語り出す。


「あと、部屋から食堂まで自動で運んでくれるベルトコンベアと、キッチンには溶鉱炉並みの火力のコンロ! あと換気ダクトは直径2メートルくらい欲しいな!」

『家を工場にする気かお前は』


 くつろげる気がしない。


「私はぁ、やっぱりお姫様みたいな天蓋付きのベッドで寝たいですぅ!」


 続いてミリーナが、うっとりとした顔で両手を組む。


「窓には最高級のレースのカーテン! それで朝起きると、イケメンの執事が『お嬢様、モーニング・アフタヌーンティーでございます』って、あの三段になってるキラキラしたやつを持ってくるんです~!」

『おいおい。モーニングからアフタヌーン(午後)ティーかよ。時空が歪んでるぞ』

「細かいことはいいんですぅ! 雰囲気ですよ、雰囲気!」

『あと執事はついてこないからな。俺は雇わんぞ』


 やれやれ、どいつもこいつも欲望に忠実だ。

 俺は苦笑しながら、隣でニコニコと話を聞いているおっとりとした少女に水を向けた。


『エリスはどうだ? なんか希望はあるか?』


 エリスは少し考えてから、俺の方を向いて真剣な顔で答えた。


「そうですね……お風呂場が広くて、ポンタさんをしっかり磨けるスペースがあるところなら、どこでも大丈夫です」

『……』


 きりっ、と断言するエリス。

 そこには一点の曇りも、迷いもなかった。


『(……さ、さすがエリス。ブレないな)』


 彼女の中では、家の豪華さよりも俺のメンテナンス性が最優先らしい。


『報告。エリス個体のマスターに対する優先順位は、常に「メンテナンス」および「接触」が最上位に設定されています。……愛が重いですね』

『うるせぇ、ありがたいことだろ』


 ソフィアの茶化すような声を無視し、俺は三人の顔を見渡した。


 工場みたいな実験室に、お姫様の寝室、そして俺専用のメンテナンスルーム。

 全部の条件を満たす物件なんてあるのか甚だ疑問だが……まあ、探してみるのも悪くない。


『よし。じゃあ明日はその『ゴルドー商会』に行って、俺たち『アカマル』の城を探しに行くぞ!』

「「「おー!」」」


 新生『アカマル』、始動。

 記念すべき最初のクエストは、魔物討伐ではなく――波乱含みの「マイホーム探し」だ。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


無事パーティ名も決まったポンタ達ですが、次回は不動産巡りです。

果たしてどんな物件を選ぶのでしょうか?


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