パーティ名決まる!その名も
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冒険者ギルド一階の酒場は、夕食時ということもあって大いに賑わっていた。
あちこちでジョッキがぶつかり合う音と、冒険者たちの笑い声が響く。
「お待たせー! うぅ~、お腹すいたぁ!」
工房での作業が一区切りついたのか、ルルが小走りでテーブルへとやってきた。
顔やツナギのあちこちに油汚れや煤がついているが、その表情は充実感に満ちている。
『お疲れさん、ルル。……まずはこいつを聞いてくれ』
俺は席に着いたルルに、先ほどの決定事項――ミリーナの正式加入を伝えた。
「えっ、本当!? やったぁ! これで女子部屋がもっと賑やかになるね!」
「はいっ! これからもよろしくお願いします、ルルさん!」
ルルとミリーナが嬉しそうにハイタッチを交わす。
技術屋と索敵手。専門分野は違うが、波長は合うようだ。
テーブルの上には、これからの前途を祝う豪華な食事が所狭しと並べられていた。
香ばしい匂いを漂わせる山盛りの肉料理に、彩り豊かな新鮮野菜のサラダ。湯気を立てる具だくさんのスープ。そして、琥珀色に輝く果実酒のボトル。
『よし。それじゃあ改めて……新生パーティ結成に、乾杯!』
「「「かんぱーい!!」」」
三人のグラスが軽快な音を立てて触れ合う。
俺は食事こそできないが、こうして仲間たちが美味そうに食べている姿を見るだけで、魔力が充填される気分だ。
「んん~っ! このお肉、柔らかくて最高!」
「スープも魚介の出汁が効いてて美味しいですぅ……!」
「サラダのドレッシングも絶品ですね。シャキシャキして美味しいです」
ルルが肉にかぶりつき、ミリーナがスープに目を細め、エリスが上品にサラダを口へ運ぶ。
しばらくの間、テーブルは幸せな咀嚼音と「美味しい」という言葉だけで満たされた。
そして、食事が一段落した頃。
俺はギデオンに言われた「宿題」を切り出した。
『さて、腹も膨れたところで本題だ。俺たちの「パーティ名」を決めなきゃならん』
「あ、そういえばまだ決めてなかったね」
「ずっと「名無し」でしたもんねぇ」
ルルが果実酒をちびりと舐め、ミリーナが頷く。
『俺の方でもいくつか考えてみたんだが、どうだ?』
俺はFPSマニアとしての知識を総動員し、温めていた案を披露した。
『【タスクフォース・オメガ】。あるいは【ブラボー・シックス】。……隠密作戦っぽくて渋いなら【サイレント・キル】なんてのもあるぞ』
どうだ、と俺は自信満々に三人の顔を見渡す。
だが、返ってきた反応は芳しくなかった。
「うーん……なんか、響きが怖くないですか? 殺る気満々というか……」
「それに数字とか記号って、なんか覚えにくいよ師匠」
ミリーナとルルが微妙な顔をする。
くっ、このミリタリーなカッコよさが通じないとは。
「じゃあ、私が考えた名前はどう!?」
ルルがビシッと手を挙げた。
「【超高速回転歯車団】! もしくは【無限燃焼機関】!」
『……お前は暴走族か』
即座に却下だ。工場じゃあるまいし。
「でしたらぁ、こういうのはどうでしょう?」
今度はミリーナが、夢見るような瞳で口を開いた。
「【風の囁きを聞く者たち】……とか。吟遊詩人さんが歌にした時、綺麗に聞こえると思うんですぅ」
『……』
「……」
長い。そして何より、自分たちで名乗るには恥ずかしすぎる。
全員が黙り込み、テーブルに微妙な空気が流れた。
カッコよすぎてもダメ、技術寄りすぎてもダメ、ポエムすぎてもダメ。
パーティ名、意外と難しいぞ。
「あの……」
悩む俺たちを見かねて、それまで静かに話を聞いていたエリスがおっとりと口を開いた。
「ポンタさんって、その……赤くて、丸いですよね?」
『ん? まあ、そうだが』
俺のボディは赤い球体だ。それが最大の特徴でもある。
「でしたら……『アカマル』というのはどうでしょう?」
『……あかまる?』
エリスは両手で丸い形を作り、ふんわりと微笑んだ。
「呼びやすいですし、親しみやすくて可愛いと思います。『アカマル』。……どうですか?」
その瞬間、ルルとミリーナが顔を輝かせた。
「それだー!! さすがエリスちん、天才!」
「あ、いいですね! 覚えやすいし、ポンタ様の特徴そのまんまですぅ!」
『えっ、ちょ、待て待て! ダサくないか!? なんかペットの名前みたいだぞ!?』
俺の抗議の声は、女子たちの賛同の声にかき消される。
『おいエリス、もっとこう……「深紅の」とか「球体要塞」とか、あるだろ!?』
「ふふ、でも『アカマル』の方が、ポンタさんの優しさが出てて素敵ですよ?」
『ぐっ……そ、そう言われると……』
エリスの純粋な笑顔でそう言われると、弱い。
俺がたじろいでいると、脳内で無機質な声が響いた。
『推奨します、マスター。対象の形状および色彩情報を的確に言語化した、非常に合理的な名称です。……プッ』
『おいソフィア、今笑っただろ。絶対笑ったよな!?』
脳内の相棒にまでバカにされた気がするが、三人が気に入っているなら仕方がない。
『……はぁ。分かったよ。パーティ名は【アカマル】で決定だ』
「やったー! 乾杯し直しだね!」
こうして、俺たちのパーティ名は、俺の形状そのままの『アカマル』に決定したのだった。
◇ ◇ ◇
パーティ名も決まり、話題はもう一つの重要事項――「拠点」の話へと移行した。
『資金はある。問題は、どこで物件を探すかだが……』
「あ、それなら任せてください!」
ミリーナが自信ありげに胸を張った。
「アルメニアの不動産なら、商人ギルド所属の『ゴルドー商会』が一番です! ギルドの提携先でもありますし、良い物件をたくさん持ってますよ」
『なるほど、頼もしいな。……で、お前らはどんな家がいいんだ?』
俺が問いかけると、待ってましたとばかりに欲望の蓋が開いた。
「私はねー、地下に巨大な実験場が欲しい!」
ルルが身を乗り出し、目をキラキラさせて語り出す。
「あと、部屋から食堂まで自動で運んでくれるベルトコンベアと、キッチンには溶鉱炉並みの火力のコンロ! あと換気ダクトは直径2メートルくらい欲しいな!」
『家を工場にする気かお前は』
くつろげる気がしない。
「私はぁ、やっぱりお姫様みたいな天蓋付きのベッドで寝たいですぅ!」
続いてミリーナが、うっとりとした顔で両手を組む。
「窓には最高級のレースのカーテン! それで朝起きると、イケメンの執事が『お嬢様、モーニング・アフタヌーンティーでございます』って、あの三段になってるキラキラしたやつを持ってくるんです~!」
『おいおい。朝からアフタヌーン(午後)ティーかよ。時空が歪んでるぞ』
「細かいことはいいんですぅ! 雰囲気ですよ、雰囲気!」
『あと執事はついてこないからな。俺は雇わんぞ』
やれやれ、どいつもこいつも欲望に忠実だ。
俺は苦笑しながら、隣でニコニコと話を聞いているおっとりとした少女に水を向けた。
『エリスはどうだ? なんか希望はあるか?』
エリスは少し考えてから、俺の方を向いて真剣な顔で答えた。
「そうですね……お風呂場が広くて、ポンタさんをしっかり磨けるスペースがあるところなら、どこでも大丈夫です」
『……』
きりっ、と断言するエリス。
そこには一点の曇りも、迷いもなかった。
『(……さ、さすがエリス。ブレないな)』
彼女の中では、家の豪華さよりも俺のメンテナンス性が最優先らしい。
『報告。エリス個体のマスターに対する優先順位は、常に「メンテナンス」および「接触」が最上位に設定されています。……愛が重いですね』
『うるせぇ、ありがたいことだろ』
ソフィアの茶化すような声を無視し、俺は三人の顔を見渡した。
工場みたいな実験室に、お姫様の寝室、そして俺専用のメンテナンスルーム。
全部の条件を満たす物件なんてあるのか甚だ疑問だが……まあ、探してみるのも悪くない。
『よし。じゃあ明日はその『ゴルドー商会』に行って、俺たち『アカマル』の城を探しに行くぞ!』
「「「おー!」」」
新生『アカマル』、始動。
記念すべき最初のクエストは、魔物討伐ではなく――波乱含みの「マイホーム探し」だ。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
無事パーティ名も決まったポンタ達ですが、次回は不動産巡りです。
果たしてどんな物件を選ぶのでしょうか?
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