表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/30

白銀の大猿と、散弾近接戦

【カクヨムコン参加中の話題作、ついに「なろう」解禁!】

★スタートダッシュ! 毎日「7時」と「19時」の2回更新中!★


 白銀山脈シルヴァリオのいただき付近。

 そこは、吹き荒れる猛吹雪と切り立った断崖に囲まれた、空に近い処刑場だった。

 中央に鎮座する巨大な採取杭が、大地を汚染する不気味な低音を周囲の山々に響かせている。


 氷の王、ブリザード・コングが咆哮した。

 その背中には、禍々しい黒い金属片が食い込み、脈動している。

挿絵(By みてみん)


『ソフィア、解析!』

『了解。――警告。採取杭より「汚染マナ」が噴出。周囲の空間に高濃度の魔力干渉が発生しています。マスター、機動力の低下に注意してください』


 ソフィアの警告通りだった。大気中に充満した汚染マナが、重油のような粘り気を持ってダルマのボディにまとわりつく。《浮遊レビテーション》の制御が乱れ、俺の機動力は目に見えて削がれていく。


 俺がショットガンで放った先制の散弾。その直撃で削れたはずのコングの肩が、黒い霧に覆われたかと思うと、一瞬で元の剛毛に覆われた。


「(外部電源付きの無限ヒールかよ。クソゲーだな……。おまけに浮遊の制限付きときた)」


『師匠、あれじゃ一生倒せないよ! ルルがあの杭を止めてくる! 機械の理屈なら、ルルが一番分かってるから!』


 分隊無線越しに、ルルの決意に満ちた声が響く。


『分かった。ルルが杭を黙らせるまで、俺がターゲットを引き受ける。――ソフィア、物理干渉バレル実体化。インファイトに切り替えるぞ。通常機動スロットルが効かねぇなら、爆発力でカバーする!』

『了解、マスター。魔力集束……実体化バレル、マニピュレータ接続完了』


 ダルマのボディ側面に、光り輝く重厚なショットガンバレルがガシャン! と形成された。

 手足のない俺にとって、これが新たな「腕」であり「拳」だ。


『全員聞いてくれ。エリスはルルの護衛、ミリーナは予兆検知に全振りしろ。行くぞ!』


◇ ◇ ◇


「グオォォォォッ!!」


 コングが雪原に拳を叩きつけると、汚染マナで鋭利に凍りついた巨大な氷のつぶてが、雪崩のごとき勢いで押し寄せてきた。

 俺は回避行動に移るのと同時に、光体バレルのトリガーをあえて右斜め後ろに向けて引いた。


 ズドンッ!!


 空中で放たれたショットガンの猛烈な反動リコイルを推進力に変え、俺のボディは重いマナの霧を強引に引き裂いて、左前方へと弾き飛ばされた。

 瞬間的な超加速。氷塊が俺のいた地点を粉砕し、断崖から崩れ落ちる。その爆風を背に、俺は既に敵の懐へと飛び込んでいた。


『一撃が重いです! ポンタ様、気をつけて!』


 ミリーナの悲鳴のような警告。

 コングが丸太のような腕を振り下ろすが、俺は既にその腕を駆け上がっていた。


『(ただ避けるだけじゃ能がねぇ。――これでも食らえ!)』


 回避の慣性を殺さず、実体化したバレルの側面をコングの肘関節に叩きつける。

 ガィィンッ! という硬質な打撃音。


『接射ッ!!』


 ズドンッ!!


 殴りつけた瞬間に、ゼロ距離で弾丸をブチ込む。

 いかに無限再生のコングといえど、物理的な衝撃までは殺せない。巨腕が大きく跳ね上がり、ボスの姿勢が崩れた。


『今だ、ルル! 走れ!』

『了解っ!』


 ルルが雪煙を上げて杭へと突進する。

 コングがそれを阻止しようと、残った左腕で広範囲の氷弾を放とうとした。


『させませんっ……! 光よ、回れ!』


 エリスが杖を振るう。

 彼女が展開した《多重防壁プロテクション・ダブル》は、その場に留まらず、移動するルルの周囲を衛星のように高速回転し始めた。

 飛来する氷弾を次々と火花に変えて弾き飛ばし、ルルを無傷で杭の根元まで送り届ける。


『着いた! ……えっと、この回路をこうして……供給ライン、反転! 汚れたマナ、お返ししちゃうんだからぁ!』


 ルルが巨大レンチを杭の制御盤に叩き込み、スキルの魔力を流し込む。

 直後、黒い杭が激しい火花を散らし、逆流したエネルギーで爆ぜた。


「ギ、ギガアアアアッ!?」


 供給源を失い、逆に過負荷を受けたコングの背中の楔が次々と爆発する。

 汚染マナの霧が晴れ、本来の機動力が戻ってきた。


◇ ◇ ◇


『待たせたな。……ここからは俺のターンだ』


 俺の声に応え、エリスが杖を高く掲げる。


『ポンタさん! 聖光の追い風を!――《身体強化フィジカル・ブースト》・アクセルッ!!』


 眩い光の粒子が俺のボディを包み込む。

 次の瞬間、俺の視界から「慣性」という概念が消えた。

 ソフィアのナビゲートが加速し、ボスの動きがスローモーションのように感じられる。


『全スロットル、オーバーリミット!』


 俺はショットガンのリコイルとエリスのバフを完璧に同期させ、雪原を縦横無尽に駆け抜けた。

 怒り狂ったコングが、左右から巨大な拳で挟み込もうとする。


「(遅ぇよ)」


 激突の直前、俺はバレルの発射衝撃でボディを垂直に跳ね上げ、コングの鼻先を紙一重で回避。

 そのまま空中で制動をかけ、瞬時にボスの顔面へ肉薄した。

 コングが苦し紛れに放った裏拳。 俺はバレルを叩きつけて軌道を逸らすと、伸びきったその腕の上を、レールのように滑走して一気に駆け上がった。

『――チェックメイトだ』


 ボスの目の前、逃げ場のない至近距離。

 俺は実体化したバレルをコングの眉間に叩きつけ、意識のトリガーを全開放した。


『最大貫通モード。……オープンファイア!!』


 ズダダダダダダダッ!!


 ゼロ距離でのフルオート連射。

 衝撃波がボスの頭部を貫き、五メートルの巨体が雪原を大きく滑り、背後の断崖へめり込んでいく。


 やがて、凄まじい爆音と共にコングの魔石が砕け、その巨躯が力なく沈黙した。


『ポ、ポンタ様。……不協和音が、消えました。静かです……』


 ミリーナが耳から手を離し、安堵の涙を浮かべる。

 コングの遺体から黒い霧が晴れ、そこには透き通るような青い輝きを放つ、極大の『氷の魔石』が残されていた。


『ふぅ……。いいエイムだったぜ、ミリーナ。エリス、ナイスサポートだ』

『はい! お役に立ててよかったです!』


 ボディが熱を帯び、粒子となって消えていく光体バレル。

 そこへ、杭の残骸から何やら光る部品を抱えたルルが、満面の笑みで走ってきた。


『師匠! 見て見て! この杭に使われてた冷却パイプ、すっごく丈夫だよ! これと魔石があれば……ルル、すっごいガトリング作れる自信ある!』


 俺はボディを揺らして、満足げに応えた。


『ああ、期待してるぜ。……これでようやく、素材が揃ったな』


 極寒の風が吹く中、俺たちは新たな火力を手に入れる確信と共に、勝利の余韻に浸っていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


もし「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、 ブックマーク登録や、広告下の【☆☆☆☆☆】から評価ポイントを入れていただけると嬉しいです!


執筆の励みになります!

↓↓【☆☆☆☆☆】評価お願いします↓↓

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ