白銀の大猿と、散弾近接戦
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白銀山脈シルヴァリオの頂付近。
そこは、吹き荒れる猛吹雪と切り立った断崖に囲まれた、空に近い処刑場だった。
中央に鎮座する巨大な採取杭が、大地を汚染する不気味な低音を周囲の山々に響かせている。
氷の王、ブリザード・コングが咆哮した。
その背中には、禍々しい黒い金属片が食い込み、脈動している。
『ソフィア、解析!』
『了解。――警告。採取杭より「汚染マナ」が噴出。周囲の空間に高濃度の魔力干渉が発生しています。マスター、機動力の低下に注意してください』
ソフィアの警告通りだった。大気中に充満した汚染マナが、重油のような粘り気を持ってダルマのボディにまとわりつく。《浮遊》の制御が乱れ、俺の機動力は目に見えて削がれていく。
俺がショットガンで放った先制の散弾。その直撃で削れたはずのコングの肩が、黒い霧に覆われたかと思うと、一瞬で元の剛毛に覆われた。
「(外部電源付きの無限ヒールかよ。クソゲーだな……。おまけに浮遊の制限付きときた)」
『師匠、あれじゃ一生倒せないよ! ルルがあの杭を止めてくる! 機械の理屈なら、ルルが一番分かってるから!』
分隊無線越しに、ルルの決意に満ちた声が響く。
『分かった。ルルが杭を黙らせるまで、俺がターゲットを引き受ける。――ソフィア、物理干渉バレル実体化。インファイトに切り替えるぞ。通常機動が効かねぇなら、爆発力でカバーする!』
『了解、マスター。魔力集束……実体化バレル、マニピュレータ接続完了』
ダルマのボディ側面に、光り輝く重厚なショットガンバレルがガシャン! と形成された。
手足のない俺にとって、これが新たな「腕」であり「拳」だ。
『全員聞いてくれ。エリスはルルの護衛、ミリーナは予兆検知に全振りしろ。行くぞ!』
◇ ◇ ◇
「グオォォォォッ!!」
コングが雪原に拳を叩きつけると、汚染マナで鋭利に凍りついた巨大な氷の礫が、雪崩のごとき勢いで押し寄せてきた。
俺は回避行動に移るのと同時に、光体バレルのトリガーをあえて右斜め後ろに向けて引いた。
ズドンッ!!
空中で放たれたショットガンの猛烈な反動を推進力に変え、俺のボディは重いマナの霧を強引に引き裂いて、左前方へと弾き飛ばされた。
瞬間的な超加速。氷塊が俺のいた地点を粉砕し、断崖から崩れ落ちる。その爆風を背に、俺は既に敵の懐へと飛び込んでいた。
『一撃が重いです! ポンタ様、気をつけて!』
ミリーナの悲鳴のような警告。
コングが丸太のような腕を振り下ろすが、俺は既にその腕を駆け上がっていた。
『(ただ避けるだけじゃ能がねぇ。――これでも食らえ!)』
回避の慣性を殺さず、実体化したバレルの側面をコングの肘関節に叩きつける。
ガィィンッ! という硬質な打撃音。
『接射ッ!!』
ズドンッ!!
殴りつけた瞬間に、ゼロ距離で弾丸をブチ込む。
いかに無限再生のコングといえど、物理的な衝撃までは殺せない。巨腕が大きく跳ね上がり、ボスの姿勢が崩れた。
『今だ、ルル! 走れ!』
『了解っ!』
ルルが雪煙を上げて杭へと突進する。
コングがそれを阻止しようと、残った左腕で広範囲の氷弾を放とうとした。
『させませんっ……! 光よ、回れ!』
エリスが杖を振るう。
彼女が展開した《多重防壁》は、その場に留まらず、移動するルルの周囲を衛星のように高速回転し始めた。
飛来する氷弾を次々と火花に変えて弾き飛ばし、ルルを無傷で杭の根元まで送り届ける。
『着いた! ……えっと、この回路をこうして……供給ライン、反転! 汚れたマナ、お返ししちゃうんだからぁ!』
ルルが巨大レンチを杭の制御盤に叩き込み、スキルの魔力を流し込む。
直後、黒い杭が激しい火花を散らし、逆流したエネルギーで爆ぜた。
「ギ、ギガアアアアッ!?」
供給源を失い、逆に過負荷を受けたコングの背中の楔が次々と爆発する。
汚染マナの霧が晴れ、本来の機動力が戻ってきた。
◇ ◇ ◇
『待たせたな。……ここからは俺のターンだ』
俺の声に応え、エリスが杖を高く掲げる。
『ポンタさん! 聖光の追い風を!――《身体強化》・アクセルッ!!』
眩い光の粒子が俺のボディを包み込む。
次の瞬間、俺の視界から「慣性」という概念が消えた。
ソフィアのナビゲートが加速し、ボスの動きがスローモーションのように感じられる。
『全スロットル、オーバーリミット!』
俺はショットガンのリコイルとエリスのバフを完璧に同期させ、雪原を縦横無尽に駆け抜けた。
怒り狂ったコングが、左右から巨大な拳で挟み込もうとする。
「(遅ぇよ)」
激突の直前、俺はバレルの発射衝撃でボディを垂直に跳ね上げ、コングの鼻先を紙一重で回避。
そのまま空中で制動をかけ、瞬時にボスの顔面へ肉薄した。
コングが苦し紛れに放った裏拳。 俺はバレルを叩きつけて軌道を逸らすと、伸びきったその腕の上を、レールのように滑走して一気に駆け上がった。
『――チェックメイトだ』
ボスの目の前、逃げ場のない至近距離。
俺は実体化したバレルをコングの眉間に叩きつけ、意識のトリガーを全開放した。
『最大貫通モード。……オープンファイア!!』
ズダダダダダダダッ!!
ゼロ距離でのフルオート連射。
衝撃波がボスの頭部を貫き、五メートルの巨体が雪原を大きく滑り、背後の断崖へめり込んでいく。
やがて、凄まじい爆音と共にコングの魔石が砕け、その巨躯が力なく沈黙した。
『ポ、ポンタ様。……不協和音が、消えました。静かです……』
ミリーナが耳から手を離し、安堵の涙を浮かべる。
コングの遺体から黒い霧が晴れ、そこには透き通るような青い輝きを放つ、極大の『氷の魔石』が残されていた。
『ふぅ……。いいエイムだったぜ、ミリーナ。エリス、ナイスサポートだ』
『はい! お役に立ててよかったです!』
ボディが熱を帯び、粒子となって消えていく光体バレル。
そこへ、杭の残骸から何やら光る部品を抱えたルルが、満面の笑みで走ってきた。
『師匠! 見て見て! この杭に使われてた冷却パイプ、すっごく丈夫だよ! これと魔石があれば……ルル、すっごいガトリング作れる自信ある!』
俺はボディを揺らして、満足げに応えた。
『ああ、期待してるぜ。……これでようやく、素材が揃ったな』
極寒の風が吹く中、俺たちは新たな火力を手に入れる確信と共に、勝利の余韻に浸っていた。
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