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咆哮を貫く赤き雷(パイルバンカー)

【カクヨムコン参加中の話題作、ついに「なろう」解禁!】

★スタートダッシュ! 毎日「7時」と「19時」の2回更新中!★


 目の前には、遺跡の魔力を食らって異常進化した巨獣、『轟音の重戦車グランド・トリケラトプス』。

 全身を覆う岩石と金属の複合装甲は、半端な攻撃など受け付けないだろう。


「(ソフィア、回線構築。メンバーを同期しろ)」

『了解。魔力波長同調、暗号化通信ライン接続』


 俺はFPSスキルの『通信設定』を応用し、仲間たちの脳内に直接声を届けた。


『……聞こえるか? これから指示は、この回線で行う』


 俺の声が頭に響き、三人がビクッと肩を震わせる。


『うわっ!? 師匠の声が頭に直接!?』

『あれ? いつもの念話とは違うんですか?』


 普段、俺が使っている念話は「拡声器」のように周囲に音声を響かせるものだが、今回つないだのは特定の相手にだけ声を届ける「分隊無線スクワッド・ラジオ」のようなものだ。


『いつものように周りに響く声じゃない。俺たち4人だけの秘密の会話だ。これなら敵に作戦を聞かれることもない』

『すごーい! 内緒話みたいでワクワクするね!』

『は、はい! よく聞こえます!』


 感度は良好だ。俺は即座に指示を飛ばした。


『ルル、お前は囮だ。あの巨体を翻弄しろ。エリスはルルの護衛。ミリーナは索敵だ。ラビット・イヤーで奴の「感情」を読み、攻撃の予兆を探ってくれ』

『りょ、了解です! 殺気を聞き取ればいいんですね!』


 ルルが地面を蹴り、弾丸のように走り出した。


「こっちだよー! のろまなカメさん!」


 ルルが手製の閃光玉フラッシュバンを投げつける。

 カッ! と強烈な光が炸裂し、トリケラトプスが怒りの咆哮を上げた。


「グオォォォォォッ!」


 巨獣が猛然と突進する。

 その巨体に似合わず、恐ろしいほどの加速だ。


『速いっ! ルルちゃん、回避が間に合いません!』

『大丈夫、私が守ります! 《防護プロテクション・クインタ(五重展開)》!』


 エリスが杖を振るうと、ルルとボスの間に、ガラスのような薄い光の壁が五枚、等間隔に出現した。

 まだ聖盾アイギスを自在に操れない彼女が編み出した、現時点での主力防御魔法だ。


 パリーン、パリーン、パリーン!


 ボスの角が光壁を次々と粉砕していく。

 だが、壁を一枚割るごとに突進の威力が殺され、速度が鈍る。

 最後の一枚が割れる頃には、ルルは既に安全圏へと退避していた。


『ナイスだよエリス!』


 ルルが走り回り、ボスの注意を完全に引きつけている。

 その隙に、俺は新MOD『光学迷彩』を起動。姿を消して壁を登り、ホール上部のパイプオルガンの上へと移動した。


『(ここなら射線が通る。……ソフィア、弱点は?)』

『解析。外殻硬度測定不能。ヒヒイロカネ含有の複合装甲により、外部からの貫通は不可能です』


 やはり外からは無理か。

 俺がスコープを覗き込み、狙い所を探していると、ボスの動きが止まった。


「グルルル……!」


 ボスが大きく息を吸い込み、不可視の衝撃波を放つ。

 超音波探知ソナーだ。


『ちっ、音で見えてるのか!』


 見えないはずの俺の方へ、ボスが正確に顔を向けた。

 その時、ミリーナの絶叫が通信に響く。


『――ッ! 逃げてくださいポンタ様! 凄まじい「殺気」が喉に集まってます!』

『何だと!?』


 ボスの口がカッと開き、青白い光が漏れ出す。

 俺は即座に《浮遊レビテーション》の出力を最大にし、真横へと緊急回避した。


 ズドオォォォォォンッ!!


 俺がいた場所を、極太の熱線――いや、高密度に圧縮された咆哮波が貫いた。

 回避した俺の背後で、遺跡の巨大な石柱が三本まとめて蒸発し、壁に大穴が開く。


『冗談だろ……。あんなの喰らったら蒸発するぞ』


 冷やオイルが出る威力だ。

 だが、今の攻撃でヒントを得た。


『ミリーナ。今の攻撃の前、喉の奥はどうなっていた?』

『えっと……すごく「熱い」音がしました! 殺気が喉の奥で渦巻いて……』

『(ソフィア?)』

『肯定。共鳴咆哮ブレスの発射直前、冷却のために口腔内の装甲がスライドし、コアが露出します。露出時間は約1.5秒』


 チャンスは一瞬。

 だが、今の四つん這いの体勢では、顎が邪魔で喉の奥が狙えない。

 奴に上を向かせ、俺の方へ口を開かせる必要がある。


『よし、作戦変更だ。ワンショットで決める』


 俺は冷静に通信へ声を乗せた。


『ミリーナ。さっきと同じ「喉が熱くなる音」が聞こえたら、すぐに教えてくれ』

『は、はい! 全神経を集中します!』

『ルル。ミリーナの合図があったら、回避しながら俺の真下へ走り込め。そこから全力で上へ跳べ』

『えっ? 上へ?』

『ああ。奴を俺の目の前まで釣り上げろ。奴の咆哮波の直前に、俺が口へ叩き込む』

『……了解! 任せて師匠!』


 作戦は決まった。あとはタイミングだ。

 ルルが再び走り出し、手持ちの爆弾を使ってボスの注意を引き続ける。

 巨体が暴れ回り、床や柱を破壊していく。

 エリスも的確に障壁を展開し、飛び散る礫から仲間を守る。

 俺は光学迷彩を維持したまま、じっとその時を待った。


 数合の攻防の後、ルルがボスの猛攻をギリギリで回避した、その時だった。


『――ッ! 来ます! 喉が熱くなってます!』


 ミリーナの鋭い警告が響く。

 来た!


『今だルル! 走れ!』

『りょーかいっ!』


 ルルが急旋回し、パイプオルガンの真下へ走る。

 熱源反応を感知したボスが、猛スピードで追随する。


「ここだよー! 捕まえてみなー!」


 壁際まで追い詰められた――と見せかけ、ルルが《身体強化》された脚力で地面を蹴った。


「とおっ!」


 ルルの小さな体が、弾丸のように垂直に跳ね上がる。

 標的を見失まいと、ボスもまた勢いよく顔を上げ、ルルを追って上空へと顎門あぎとを開いた。


「グオォォォォッ!」


 空中で、上昇するルルと、パイプの上にいる俺が交差する。


「師匠、よろしく!」

「ああ」


 一瞬の会話。

 ルルが俺の頭上を飛び越え、視界が開ける。

 眼下には、ルルを喰らおうと大口を開けたボスの姿。

 喉の奥で、先ほど石柱を蒸発させた膨大な魔力が赤く輝き、ブレスが放たれようとしていた。

 まさに、絶好の射撃体勢。


『衝撃に気をつけて下さい! 《防護プロテクション・デキュマ(十重展開)》ッ!!』


 エリスの声と共に、俺とルルの足元――ボスとの間に、十枚の光壁が床のように展開される。

 これで爆発の余波は防げる。

 俺はスコープの中で、赤く輝くコアを捉えた。

 この一撃に、全てを賭ける。


「(ソフィア、一番デカいのを頼む)」

『了解。全魔力リミッター解除。対個別撃破用・最大貫通特性を魔弾に付与します。――現戦闘中、一発のみ生成可能』


 俺のライフルの機関部が、過負荷で赤熱し、唸りを上げる。


『《超高密度貫通魔弾パイルバンカー・ラウンド》、装填完了』


 準備は整った。

 ボスの咆哮が放たれる、コンマ数秒前。


『(チェック・メイト。――喰らえ、【対物魔弾・パイルバンカー】!!)』


 俺の意識に応じ、トリガーが引かれる。

 ライフルから放たれたのは、ただの弾丸ではない。赤黒い雷を纏い、空間そのものをねじ切るような「光の杭」だった。


 ズドォォォォォンッ!!


 発射音と共に、赤い閃光が一直線に走り、吸い込まれるようにボスの喉の奥へと突き刺さった。


 一瞬の静寂。

 直後、腹の底に響くような、重く鈍い爆発音が轟いた。


 ドンッ!!


 行き場を失ったブレスのエネルギーが体内で暴発し、ボスの首が風船のように膨らんだ。


「グ、ゴボッ……!?」


 展開された十枚の光壁が、下からの衝撃でバリバリと砕け散っていく。

 だが、その守りは完璧に衝撃を殺しきった。


 ズズーン……と地響きを立てて、巨体が地面に崩れ落ちる。

 俺とルルは、砕け散る光の粒子の中をくぐり抜け、スタッと華麗に着地した。


「ふぅ……」

「やったぁぁ! さすが師匠! 最高のコンビネーション!」


 ルルがハイタッチを求めて飛びついてくる。

 エリスとミリーナも駆け寄ってきた。


「心臓が止まるかと思いました……でも、信じてました」

「あぅぅ……腰が抜けましたぁ……」


 恐怖でへたり込んでいるミリーナだが、その表情は安堵に満ちている。


「皆んな、よくやった!」


 俺たちは倒したボスに近づいた。

 ルルが《機工の神髄》スキルを使い、ボスの角と、本来の目的だった遺跡のヒヒイロカネを手際よく回収していく。


「すごいよ師匠! これだけあれば、最高のガトリングガンが作れるよ!」

「ああ。これで銃身バレルと機関部の素材は揃った」


 俺はアイテムボックスに、赤く輝く最強の金属を収納した。


「残るは冷却機関……『氷の魔石』だけだ」


 俺は遺跡の出口を見上げた。

 この森の北には、万年雪に覆われた極寒の地があるという。


「よし、帰って冬装備の準備だ。次は寒くなるぞ」

「「「はいっ!」」」


 こうして、俺たちはヒヒイロカネという最大の収穫を手に、意気揚々と遺跡を後にした。

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