咆哮を貫く赤き雷(パイルバンカー)
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目の前には、遺跡の魔力を食らって異常進化した巨獣、『轟音の重戦車』。
全身を覆う岩石と金属の複合装甲は、半端な攻撃など受け付けないだろう。
「(ソフィア、回線構築。メンバーを同期しろ)」
『了解。魔力波長同調、暗号化通信ライン接続』
俺はFPSスキルの『通信設定』を応用し、仲間たちの脳内に直接声を届けた。
『……聞こえるか? これから指示は、この回線で行う』
俺の声が頭に響き、三人がビクッと肩を震わせる。
『うわっ!? 師匠の声が頭に直接!?』
『あれ? いつもの念話とは違うんですか?』
普段、俺が使っている念話は「拡声器」のように周囲に音声を響かせるものだが、今回つないだのは特定の相手にだけ声を届ける「分隊無線」のようなものだ。
『いつものように周りに響く声じゃない。俺たち4人だけの秘密の会話だ。これなら敵に作戦を聞かれることもない』
『すごーい! 内緒話みたいでワクワクするね!』
『は、はい! よく聞こえます!』
感度は良好だ。俺は即座に指示を飛ばした。
『ルル、お前は囮だ。あの巨体を翻弄しろ。エリスはルルの護衛。ミリーナは索敵だ。ラビット・イヤーで奴の「感情」を読み、攻撃の予兆を探ってくれ』
『りょ、了解です! 殺気を聞き取ればいいんですね!』
ルルが地面を蹴り、弾丸のように走り出した。
「こっちだよー! のろまなカメさん!」
ルルが手製の閃光玉を投げつける。
カッ! と強烈な光が炸裂し、トリケラトプスが怒りの咆哮を上げた。
「グオォォォォォッ!」
巨獣が猛然と突進する。
その巨体に似合わず、恐ろしいほどの加速だ。
『速いっ! ルルちゃん、回避が間に合いません!』
『大丈夫、私が守ります! 《防護・クインタ(五重展開)》!』
エリスが杖を振るうと、ルルとボスの間に、ガラスのような薄い光の壁が五枚、等間隔に出現した。
まだ聖盾アイギスを自在に操れない彼女が編み出した、現時点での主力防御魔法だ。
パリーン、パリーン、パリーン!
ボスの角が光壁を次々と粉砕していく。
だが、壁を一枚割るごとに突進の威力が殺され、速度が鈍る。
最後の一枚が割れる頃には、ルルは既に安全圏へと退避していた。
『ナイスだよエリス!』
ルルが走り回り、ボスの注意を完全に引きつけている。
その隙に、俺は新MOD『光学迷彩』を起動。姿を消して壁を登り、ホール上部のパイプオルガンの上へと移動した。
『(ここなら射線が通る。……ソフィア、弱点は?)』
『解析。外殻硬度測定不能。ヒヒイロカネ含有の複合装甲により、外部からの貫通は不可能です』
やはり外からは無理か。
俺がスコープを覗き込み、狙い所を探していると、ボスの動きが止まった。
「グルルル……!」
ボスが大きく息を吸い込み、不可視の衝撃波を放つ。
超音波探知だ。
『ちっ、音で見えてるのか!』
見えないはずの俺の方へ、ボスが正確に顔を向けた。
その時、ミリーナの絶叫が通信に響く。
『――ッ! 逃げてくださいポンタ様! 凄まじい「殺気」が喉に集まってます!』
『何だと!?』
ボスの口がカッと開き、青白い光が漏れ出す。
俺は即座に《浮遊》の出力を最大にし、真横へと緊急回避した。
ズドオォォォォォンッ!!
俺がいた場所を、極太の熱線――いや、高密度に圧縮された咆哮波が貫いた。
回避した俺の背後で、遺跡の巨大な石柱が三本まとめて蒸発し、壁に大穴が開く。
『冗談だろ……。あんなの喰らったら蒸発するぞ』
冷や汗が出る威力だ。
だが、今の攻撃でヒントを得た。
『ミリーナ。今の攻撃の前、喉の奥はどうなっていた?』
『えっと……すごく「熱い」音がしました! 殺気が喉の奥で渦巻いて……』
『(ソフィア?)』
『肯定。共鳴咆哮の発射直前、冷却のために口腔内の装甲がスライドし、コアが露出します。露出時間は約1.5秒』
チャンスは一瞬。
だが、今の四つん這いの体勢では、顎が邪魔で喉の奥が狙えない。
奴に上を向かせ、俺の方へ口を開かせる必要がある。
『よし、作戦変更だ。ワンショットで決める』
俺は冷静に通信へ声を乗せた。
『ミリーナ。さっきと同じ「喉が熱くなる音」が聞こえたら、すぐに教えてくれ』
『は、はい! 全神経を集中します!』
『ルル。ミリーナの合図があったら、回避しながら俺の真下へ走り込め。そこから全力で上へ跳べ』
『えっ? 上へ?』
『ああ。奴を俺の目の前まで釣り上げろ。奴の咆哮波の直前に、俺が口へ叩き込む』
『……了解! 任せて師匠!』
作戦は決まった。あとはタイミングだ。
ルルが再び走り出し、手持ちの爆弾を使ってボスの注意を引き続ける。
巨体が暴れ回り、床や柱を破壊していく。
エリスも的確に障壁を展開し、飛び散る礫から仲間を守る。
俺は光学迷彩を維持したまま、じっとその時を待った。
数合の攻防の後、ルルがボスの猛攻をギリギリで回避した、その時だった。
『――ッ! 来ます! 喉が熱くなってます!』
ミリーナの鋭い警告が響く。
来た!
『今だルル! 走れ!』
『りょーかいっ!』
ルルが急旋回し、パイプオルガンの真下へ走る。
熱源反応を感知したボスが、猛スピードで追随する。
「ここだよー! 捕まえてみなー!」
壁際まで追い詰められた――と見せかけ、ルルが《身体強化》された脚力で地面を蹴った。
「とおっ!」
ルルの小さな体が、弾丸のように垂直に跳ね上がる。
標的を見失まいと、ボスもまた勢いよく顔を上げ、ルルを追って上空へと顎門を開いた。
「グオォォォォッ!」
空中で、上昇するルルと、パイプの上にいる俺が交差する。
「師匠、よろしく!」
「ああ」
一瞬の会話。
ルルが俺の頭上を飛び越え、視界が開ける。
眼下には、ルルを喰らおうと大口を開けたボスの姿。
喉の奥で、先ほど石柱を蒸発させた膨大な魔力が赤く輝き、ブレスが放たれようとしていた。
まさに、絶好の射撃体勢。
『衝撃に気をつけて下さい! 《防護・デキュマ(十重展開)》ッ!!』
エリスの声と共に、俺とルルの足元――ボスとの間に、十枚の光壁が床のように展開される。
これで爆発の余波は防げる。
俺はスコープの中で、赤く輝くコアを捉えた。
この一撃に、全てを賭ける。
「(ソフィア、一番デカいのを頼む)」
『了解。全魔力リミッター解除。対個別撃破用・最大貫通特性を魔弾に付与します。――現戦闘中、一発のみ生成可能』
俺のライフルの機関部が、過負荷で赤熱し、唸りを上げる。
『《超高密度貫通魔弾》、装填完了』
準備は整った。
ボスの咆哮が放たれる、コンマ数秒前。
『(チェック・メイト。――喰らえ、【対物魔弾・パイルバンカー】!!)』
俺の意識に応じ、トリガーが引かれる。
ライフルから放たれたのは、ただの弾丸ではない。赤黒い雷を纏い、空間そのものをねじ切るような「光の杭」だった。
ズドォォォォォンッ!!
発射音と共に、赤い閃光が一直線に走り、吸い込まれるようにボスの喉の奥へと突き刺さった。
一瞬の静寂。
直後、腹の底に響くような、重く鈍い爆発音が轟いた。
ドンッ!!
行き場を失ったブレスのエネルギーが体内で暴発し、ボスの首が風船のように膨らんだ。
「グ、ゴボッ……!?」
展開された十枚の光壁が、下からの衝撃でバリバリと砕け散っていく。
だが、その守りは完璧に衝撃を殺しきった。
ズズーン……と地響きを立てて、巨体が地面に崩れ落ちる。
俺とルルは、砕け散る光の粒子の中をくぐり抜け、スタッと華麗に着地した。
「ふぅ……」
「やったぁぁ! さすが師匠! 最高のコンビネーション!」
ルルがハイタッチを求めて飛びついてくる。
エリスとミリーナも駆け寄ってきた。
「心臓が止まるかと思いました……でも、信じてました」
「あぅぅ……腰が抜けましたぁ……」
恐怖でへたり込んでいるミリーナだが、その表情は安堵に満ちている。
「皆んな、よくやった!」
俺たちは倒したボスに近づいた。
ルルが《機工の神髄》スキルを使い、ボスの角と、本来の目的だった遺跡のヒヒイロカネを手際よく回収していく。
「すごいよ師匠! これだけあれば、最高のガトリングガンが作れるよ!」
「ああ。これで銃身と機関部の素材は揃った」
俺はアイテムボックスに、赤く輝く最強の金属を収納した。
「残るは冷却機関……『氷の魔石』だけだ」
俺は遺跡の出口を見上げた。
この森の北には、万年雪に覆われた極寒の地があるという。
「よし、帰って冬装備の準備だ。次は寒くなるぞ」
「「「はいっ!」」」
こうして、俺たちはヒヒイロカネという最大の収穫を手に、意気揚々と遺跡を後にした。
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