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赤き賢者の伝説

【カクヨムコン参加中の話題作、ついに「なろう」解禁!】

★スタートダッシュ! 毎日「7時」と「19時」の2回更新中!★

 城塞都市アルメリア。

 人口およそ十万。人類の生息圏と、強力な魔物が跋扈する領域の境界線ボーダーに位置する、対魔防衛の最前線だ。


 常に死と隣り合わせの場所だが、危険度が高い分、得られる素材の質も高く、稼ぎもいい。ゆえに、一攫千金を夢見る冒険者やならず者たちが大陸中から集まってくる。

 ここは欲望と活気、そして少しの暴力が渦巻く刺激的な街だ。


 そんな喧騒をよそに、宿屋の一室には穏やかな朝が訪れていた。


「ん〜っ! 今日のポンタさんは一段とツヤツヤですね! ここが一番汚れるんですよね〜」


 俺は今、エリスの手によって「メンテナンス」を受けていた。

 彼女は専用の柔らかいクロスを使い、俺の曲面ボディをキュッキュと磨き上げている。その表情は、なぜかとても楽しそうだ。


(……まあ、悪くはないが。俺は高級車か何かか?)

『肯定。現在のマスターのボディ表面は、鏡面仕上げ率98%です。摩擦係数が低下し、敵の物理攻撃を滑らせて受け流す確率が0.5%上昇しました』

(誤差の範囲だな)


 だが、エリスが満足ならそれでいい。

 彼女にとって、この日課は精神統一のようなものらしい。


「見てくださいポンタさん! ピカピカです!」


 磨き終わったエリスは、俺を抱えて部屋の姿見(鏡)の前に立った。

 鏡の中に、銀髪の美少女と、その腕に抱かれた「真紅のダルマ」が映る。

 滑らかな赤色の塗装、凛々しい髭と眉、そしてカッと見開かれた眼力のある目。

 どこからどう見ても、日本の伝統工芸品「ダルマ」だ。


(……こうして見ると、やっぱシュールだな)


 俺は改めて、自分の姿に疑問を抱いた。

 そもそも、なぜ異世界転生して「ダルマ」なんだ?

 スライムやスケルトンなら分かるが、これは明らかに異世界の文化じゃない。


(そういえばエリス。出会った時に言ってただろ。お前の国に、俺に似た『像』があったって)


 俺が念話で確認すると、エリスは嬉しそうに頷いた。


「はい! 故郷の聖王国アイギスの大神殿に、同じお姿の像が祀られていました。私は辛い時、いつもその像にお祈りをしていたんです」

(その像、誰が作ったとかいう伝承はあるか?)

「ええっと……確か、1000年前に世界を闇から救った伝説の魔法使い……『赤き賢者』様が残した秘宝だと伝えられています」

(赤き賢者……?)


 その言葉に、俺の思考が止まった。

 1000年前。世界を救った賢者。そして、残されたダルマの像。

 偶然の一致にしては出来すぎている。


(間違いねぇ。……1000年前に、俺と同じ『日本人』がいたんだ)


 そいつが転生者なのか、あるいは転移者なのかは分からない。

 だが、その「赤き賢者」とやらが、何らかの意図を持ってこの世界にダルマという概念を持ち込んだ。そして俺は、そのボディに入り込んだ。

 これはただの偶然じゃない。何かの伏線だ。


 コンコン。


 俺が思索にふけっていると、部屋のドアがノックされた。

 キィ、と蝶番が音を立てて重厚な木のドアが開き、宿屋の女将さんが顔を出す。


「朝早くにごめんよ。ギルドから使いの人が来てるんだけど……おやまぁ!」


 女将さんは俺を見るなり、目を丸くした。


「あんた、鏡みたいにピカピカじゃないか! 顔が映りそうだよ!」


 女将さんが覗き込むと、俺の赤く輝くボディに、女将さんの驚いた顔が魚眼レンズのように面白おかしく映り込んだ。


「ふふっ、私が磨きましたから!」

「あんた、いい仕事するねぇ! ……で、使いの人なんだけど」


 女将さんが脇へ退くと、その後ろからおずおずと一人の女性が現れた。

 ギルドの制服を着た、小柄な栗色の髪の女性。

 見覚えがある。初めてギルドに行った時に、俺たちの魔石を鑑定したあの受付嬢だ。

 だが、以前のような人を小馬鹿にした態度は微塵もない。顔面蒼白で、直立不動だ。


「あ、あの……ポ、ポンタ様、エリス様……」

「……なんだ?」


 俺がジロリと(目は動かないが気配で)睨むと、彼女は「ひぃっ!」と小さく悲鳴を上げた。


「ギ、ギルドマスターがお呼びですぅ……! 至急、ギルドまでご足労願います……!」


 完全に萎縮している。

 どうやら、あの時の「金貨500枚」の衝撃と、俺の念話での脅しが相当効いているらしい。典型的な「長いものには巻かれろ」タイプか。


        ***


 俺たちは宿を出て、冒険者ギルドへと向かった。

 朝のギルドは依頼受注のラッシュで混雑していたが、案内役の受付嬢が先導すると、冒険者たちが道を開ける。

 俺たちは好奇の視線を浴びながら、一般人は立ち入り禁止の「奥の執務室」へと通された。


「入れ!」


 扉を開けると、部屋の奥から野太い声が響いた。

 執務机の向こうに座っていたのは、隻眼の大男だ。顔には大きな古傷があり、歴戦の猛者というオーラが漂っている。

 この街のギルドマスター、ギデオンだ。


「よう、また会ったな! 元気そうで何よりだ、『赤い弾丸』コンビ!」


 ギデオンは俺たちを見ると、ガハハハ! と豪快に笑った。

 威圧感はあるが、嫌な感じはしない。鉄の牙の一件以来だが、相変わらず豪快なオッサンだ。


「……で、こいつがまた失礼をしたそうで悪いな」


 ギデオンは鋭い視線を、部屋の隅で縮こまっている受付嬢に向けた。


「冒険者を身なりで判断するなとあれほど言っただろう。性根を叩き直すために、しばらく窓口業務から外してある。今は雑用係だ」

「ひぃっ! す、すみませんんん! もう二度としませんからぁ……!」


 受付嬢が涙目で頭を下げる。

 なるほど、改めて見ても部下の教育はしっかりしているらしい。このオッサンは信用できる。


「さて、単刀直入に言おう。お前たちに頼みたい仕事がある」


 ギデオンは表情を引き締め、机の上に一枚の地図を広げた。

 指差したのは、アルメリアの東に位置する山岳地帯だ。


「これは『指名依頼』だ。本来ならBランク以上のパーティにしか回さん案件だが……」


『解説。冒険者ランクはS〜Fの7段階です。現在のマスターたちはまだ「ルーキー(F〜E)」ですが、Cランク相当の「鉄の牙」を討伐した実績から、ギルドは実力を「Bランク相当」と評価しています』


 ソフィアが補足を入れる。

 ギデオンはニヤリと笑った。


形式ランクなんざ飾りだ。お前たちの腕が本物なのは、俺が一番よく分かっている。この依頼を達成したら、特別措置としてランク昇格も考えてやる。……受けてくれるか?」


 破格の条件だ。俺は地図を見た。


(場所は?)

「『旧ゴルゴ廃鉱山』だ」


 ギデオンの声が低くなる。


「最近、鉱山付近で奇妙な音がするという報告がある。『カシャン、カシャン』という規則的な金属音だ。さらに、目撃者は暗闇に光る『赤い一つ目』を見たと言って怯えている」


「……金属音に、赤い目?」


 エリスが不安そうに呟く。

 ギデオンは頷き、深刻な顔で続けた。


「ただの魔物ならいい。だが……もしあれが、東の大国『ガレリア帝国』の新型兵器……自律歩行兵器オートマタの偵察機だとしたら、事だ」


(……!!)


 その言葉に、俺の中で何かが反応した。

 帝国。機械兵器。

 剣と魔法のファンタジー世界に、似つかわしくない「オーバーテクノロジー」。


(ロボット兵器……だと? マジかよ)


 恐怖? いや、違う。

 俺のFPSゲーマーとしての血が、ドクンと脈打ったのだ。


 この世界では、前世の物理法則は通用しない。だから俺は、魔力を弾丸として再現する「MOD」を使って戦っている。

 だが、相手が生身の魔物じゃ、鉛弾で鋼鉄をぶち抜くあの『重厚な手応え』は味わえなかった。肉を削ぐだけでは、どうも「解体」した気分になれないのだ。


 だが、相手が「機械」なら話は別だ。

 装甲を貫き、回路をショートさせ、爆発四散させる。

 それは、俺が前世で最も得意としていた作業だ。


(……面白ぇ。そいつは、俺のための獲物だろ)


 俺はエリスを見た。彼女は少し怯えていたが、俺のやる気を感じ取ったのか、力強く頷いてくれた。


(ギデオン。その依頼、引き受ける)

「よし! 恩に着るぞ!」


 ギデオンは嬉しそうに机を叩いた。


「だが、あの廃鉱山は入り組んでいて分かりにくい。案内役をつける」


 そう言ってギデオンが指差したのは、部屋の隅で気配を消そうとしていた受付嬢だった。


「えっ!?」


 受付嬢が素っ頓狂な声を上げる。


「わ、私がですか!? い、嫌ですよあんな危険な場所! 服が汚れますし、暗いし怖いし!」

「お前のその『地獄耳ラビット・イヤー』、ただの噂集めに使うのはもったいないだろう? 現場で役に立ててこい。これは業務命令おしおきだ」

「うぅ……バレてる……」


 受付嬢――名前はミリーナというらしい――は、がっくりと項垂れた。

 地獄耳、か。意外なスキルを持っているようだ。


        ***


 こうして、俺たちは廃鉱山へ向かうことになった。

 最強のダルマ、ワケありの美少女、そしてビビリの受付嬢。

 なんとも奇妙なパーティだ。


「はぁ……なんで私が……ぶつぶつ……これだから野蛮な仕事は嫌なのよ……帰ったら絶対高級スイーツ食べてやるぅ……経費で落ちるかな……」


 道中、ミリーナはずっとブツブツ文句を言っている。

 声は小さいが、俺には聞こえている。

 俺は少し脅してやることにした。


『……おい。全部聞こえてんぞ? 山に置いてくぞ?』


「ヒィッ!? ご、ごめんなさいぃぃーー! 申し訳ありませんんん!!」


 ミリーナは飛び上がり、涙目で謝罪した。

 まったく、騒がしい案内役だ。


 だが、俺たちの前に待ち受けているのは、そんなコメディじみた相手ではない。

 鋼鉄の体を持つ、無慈悲な殺戮兵器。

 俺の『魔弾』が火を噴く時が来たようだ。

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