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風
髪がなびく
さらさらと
風は透明で目には見えない
でも風は私たちを見ている
風は旅して
あらゆる苦悩を傍観してきた
ひとつ聞きたい
私の苦しみはどれぐらいちっぽけなんだ
もっと苦しんでいる人を見てきたのだろう
私はこんな苦しみで音を上げてはいられないのだろう
葉が擦れ合う
ざわざわと
風に形はあるが姿は見えない
でも音は聞こえる
風は旅して
あらゆる風景を眺望してきた
私に聞かせて
自然の美しさを
汚いものも見てきたのだろう
人間のすることなんてくだらないのだろう