包み紙みたいな妖精を見ました
進藤理緒、何処にでもいる目立たない普通よりやや下の小学生。運動能力普通以下、リーダーシップ能力普通以下、学力普通以下、空想力……普通よりやや上。(虹色に光る惑星から、電脳メッセージが……)大休憩の時間になると、理緒は決まって図書室で思い付いた物語を書く。クラスメイトはこの時間、ドッジボールで盛り上がっている。楽しみ方はそれぞれだが、それを異質に思う者がいるのだ。「思った通り、ここだったわね。進藤さん!また一人で書き物してるの?」図書室は私語厳禁なのに、何故教師が言葉を発してもスルーされるのだろう。不公平だと思う。「……はい、してます。好きだし、生き甲斐ですから」図書室で空想ファンタジーを書きに来る度担任が外へと連れ出そうとするので、昨夜理緒は回避出来るよう逃げ道を考えていた。「それに将来アニメの脚本を書くお仕事をするべく、非日常的なストーリーを空想してるんです」(これでよし!回避成功)作戦成功した……と思いきや、担任がくちにした言葉は理緒が困るモノだった。「理緒ちゃん、なら余計に見聞を広げる為外に出ましょう?アニメに出てくるキャラクターはだいたい、スポーツに熱中してるでしょ?」(しまった……先生の方が話術に優れてる!)押されてしまう。けどね、理緒には奥の手、切り札がある。「スポーツとかはプライベートでアスレチックであそんでます。加えて空想能力を育てると、有り得ないくらいファンタジーな物語が書けるって、妖精の高井つる子ちゃんが言ってました」真面目な顔で言う理緒を、担任は困惑した様子で見る。(現実と本の区別がつかなくなってるわ……なんとかして救わないと手遅れになる)「へえ、妖精の……つる子……ちゃん?先生にも会わせてくれるかな?」担任の作戦、実際に会いたいと頼み妖精は用事があるから会えないと断れば、現実には妖精なんていないものだと説得出来るというわけ。「良いですよ、はい!仲良くなった妖精の……」「高井つる子です!宜しく、先生!」理緒が名札入れから出して広げたのは、お菓子の包み紙。その包み紙が挨拶した……もう一度言おう。包み紙が挨拶した。「最近理緒っちと、ずっともになりました!ウチ、よく人に見付かるんだけどー妖精だから『ルブラン』とか『マリー』とかのキラキラネームだと思われがちなんで、『いやいや、日本製だから日本の名前っしょ!』なんて日本アピールして笑い合ってます」「え……何……?物が……喋って……?」話術に優れた担任から言葉が消えた。「『アスレチックで遊んでたら、キラキラした物が見えて近付いたら包み紙……って思ったけど、妖精だった件』というわけです」理緒、つる子ちゃんはハイになっているが、担任だけは一人でロー……。「これ書いたら、外いきます」(え?今言う?)「今だから言います!」つる子ちゃんが担任の脳内を読んだ。「先生の言う通り、外に出るのも大事ですから」この日から理緒は担任を気遣い外にでるようぬり、担任は理解力を持ち始め生徒を自由に育てだしたそうな。ハッピースタート!