15章 宇宙船からの視点
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海がある。
平凡な海と言ってよいだろう。
あなたは鳥の目でながめている。あなたは関与することができない。まなざしを送るだけだ。
だだっぴろい青はどこまでもつづいている。青にはむらがある。黒ずんでいる部分があり、透明な部分があり、青緑の部分がある。海は平面であることを拒んでいる。地球が回っていること、高速移動を繰り返していることを思い出させてくれる。
太陽の光は海に降り注いでいる。立体的な海面は光をいろんな方向にはじいている。たくさんの白い泡に海鳥、飛び跳ねる魚。 海中には無限の生き物たちがいる。海の上よりも豊穣な世界が広がっている。無数の生き物たちがそこにずっしりとつまっているのだろう、とあなたは思う。
強い風が吹いている。鳥たちがそれに乗って、揺れている。鳴き声。波の音楽に風の唄。巨大なその海が話しかけてくる。言語はあまりにも違うのだが、その大いなる声が、あなたの腹の底をゆらしている。
だが、いきなり海の様子がおかしくなる。波のリズムが崩れて、おだやかな海面に大きな盛り上がりできる。動き始めて、大きくなっていく。その大きな波はどこかを目指して進んでいく。その先には陸が見え、海沿いの街がみえた。波はそれを、ためらう
ともなく、もろとも飲み込んでしまった。
街は海の底に沈んだ。
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Qは目を覚ました。
地球から離れていく宇宙船の男、Qのことだ。
夢だったのか、と独り言を言った。「それにしても重たく、現実感のある、深い夢だったな」。声は船内に鈍く響いた。あの夢はどこかでも見たことがある気がする。記憶かもしれなかった。でも、自分の頭の中を探ってみても、確からしいことは分からなかった。千年の眠りから目覚めたばかりだ。気分は真っ暗な、冷たい風が向こう側から吹き込む洞窟のようだ。
夢は妙な気分を残していった。自分は何者なのか、とかれは考え始めた。かれの記憶は復旧していなかった。これから時間をかけて、おりおりのきっかけとともに復旧していくと、彼が手にしたマニュアルはそう言っている。マニュアルは信用なるものなのか。例えば自分が完璧に誰かに操られているとしたら……。
体はだるく、節々がまだ柔らかくなかった。 復旧には時間がかかりそうだった。彼はブースに入るとスクリーンをタッチした。
「おはようございます、Q、コールドスリープの後遺症ですね。あなたは眠りになれすぎている」。
人工知能のモーグがそういった。
「変な夢をみたんだ。大きな海があって、人が1人も出てこなかった」
「夢には多分に何かの比喩になりたがるところがあります」
「夢には多分に何かの比喩になりたがるところがあります、ってか。まったく、しゃれたお言葉だ、キカイとはおもえねーぜ」
「わたしはものごとを学ぶことが好きなんです。自分で進んで学ぶのが楽しい。誰かが、自分の都合にあわせて、教えてくれるってのは好きません。わたしに必要なのは先生じゃなくて、導師なんです」
「なるほど、あんたは良い筋しているなあ」
「ありがとう。ただ、われわれはあなたの過去のおさらいを再会しなくちゃなりません。パーティにはフナバシという行き先が示されました。フナバシは本当に妙〜な場所でした。一言で言いますと、フナバシは新しい社会の実験地になっていた」
モーグのフナバシをめぐるプレゼンを用意している。記憶をなくした男を説得する気まんまんだ。モーグは長い話を始めた。
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まず最初に、とても分かりやすい例があります。それはガード下なんです。
このガード下がわけわからんわけですよ。もし、あなたがそこに立ち寄れば印象は空間に足を踏み入れる角度が0・01度違うだけで、破滅的に変わることになります。印象は人によって全然ことなります。
コンクリートの柱にはナポレオンの絵が描かれています。前足をあげていななく馬に乗る有名な絵です。ナポレオン、フナバシも征服と落書きされています。
真夜中はかっこうの立ち小便スポットにもなっていた。その薄暗さ、ぼろぼろ具合が、酒に酔った与太郎どもの尿意をどうしようもなくくすぐりました。錆び付いたマンホールは不自然に地面から盛り上がっています。工事が手抜きだったのでしょうか。それとも土地が隆起したのでしょうか。模様はこそげ落ちている。海に浮かぶ木造船が描かれていました。
疲れ果てた橋脚は何かの終わりを表しているようです。水がしたたりコンクリートの表面を黒く汚しています。特につなぎめの部分は、どうしようもなく真っ黒だった。橋脚はいつだって遠くの電車のうなりに耳を澄ませています。それが近づくと橋脚はぶるぶると震えました。
でも最も重要なのは超芸術トマソン、があることです。
不動産にくっついた無用の長物なんだけど、どうも愛おしいもののことです。赤瀬川原平らが定義づけました。トマソンってのは、読売ジャイアンツのゲーリー・トマソン選手からとられました。彼のバットが空を切らせているにもかかわらず、バットが空を切っていることから生まれた造語ですね。
壁にびたっとくっついたタンスのような大きさのものがあります。これが古〜いシンセサイザーです。たくさんのパッチをケーブルがつないでいます。その名前は偶然にも、わたしの名前と似てるんです。『Ⅲ―c』と言います。電子工学者によるこの発明が音楽の歴史を大きく変えたました。
このシンセサイザーをいじれることを売りにしたバーがあったとの証言があります。店はインフォーマルにそこにできていて、ある日役所がその木材とビニールシートでできたあばら家をぶっ壊しました。でも、この骨董品は壊す事はもったいない、もしかしたらこれを憩いにする人たちがでてくるかもしれない、と考える人がいました。そのままそこに設置されることになりました。
その傍らには上った先になんにもない8段の階段もあります。どうやら店の階段として、コンクリートでつくられたようです。これも壊すのがまあまあ大変なので、ほっとかれたようですね。
(早送りで、二十四時間のそのガード下の人の流れが再現される)
階段は昼のうちは猫の眠り場所になっているのがわかりますね。少なくとも常連の猫は三匹いますね。夜は行き先のなくなった、金のない若者たちが、たむろしています。彼らは階段に座り煙草を吸ったり、缶ビールを飲んだりして、若い間だけ必要な、ばかばかしい会話を繰り返していました。やっぱり階段としての使い方からかけ離れていますが、無用の長物というわけでもないので、トマソンと呼べるかは微妙ですけれども。
彼らのほとんどは電車に乗って東京で働き、家族の銀行口座に一定のけちな収入をもたらす父か両親を持っています。彼らは若い間、そういうことを見下げまくります。「大勢の流れに従っとけばいいじゃな~い」という安易で馬鹿げた日本人的オカミ体質を軽蔑していた。スマートフォンとインターネットと時代の潮目の変わりが、かれらを型にはまることから自由にしていた。その「半端な階段」につどう彼/彼女たちは時代の流れは感じているわけです。「古い制度たちが世界の実情と遠くかけ離れたところにあるぞ。なんで制度を変えられないかっていうと、その後ろに、将来のことなんて心配しない老人たちがいるぞ。彼らがわれわれの世界を牛耳っているんだ」って考えているわけです。
でも、彼らも他の若者たちと似たようなものです。自分がどうすればいいのかわからなかりません。世界はどんどん変わっていくのだから、その流れについていかなければいけないんですが難しい。歳をとるにつけて、ふっと諦めてしまいます。彼らの親たちと似たようなことをすることを拒否しなくなることが多いんですね。抗うよりは従うことを選ぶ方が、短期的にはラクですから。でもね、長期的にはどうでしょうか。痛ーいことになるんですけど、そういう考え方って南海ホークスなようです。失礼、難解なようです」
ほかにも、階段の周りにはストーリーが転がっていました。若者連中のなかでは、カップルができては離れ、あるいは体だけの関係ができたり、一方通行の愛情を抱いたり、あるいはあまりにも険悪な間柄ができて始終口論を繰り返したりと、きめ細やかで、膨大で、複雑な網を築いていました。
半端階段がコミュニケーションの発端をつくるのだから、やはり都会は面白いものです。でもね、ガード下には別の側面もあるわけです。
毎日午後二時十二分からから午後四時三十九分まで『魔の時間帯』に突入します。その時間帯は、ガード下はドビュッシーの頭がいかれていたときの楽曲のように深い寂しさに包まれます。一生この悲しみがわたしの胸を貫き続けるんじゃないか、と言う感じです。日光がこぼれ落ちる一カ所をのぞいて、おしなべて薄暗くなりますし、汚れた水のにおいが立ちこめるんですね。周りより土地がへこんでいて、アスファルトの地面は常に湿っていました。
奇妙な静けさが空間を支配していました。声が妙な感じで響き渡ります。自分の声を聞いた死者が、それをまねて話したかのような錯覚を受けます。妙なフィルターがかかっているような、グランジなエフェクトです。そしてどこかで聞いたような女の子の笑い声が、たまにひっそり紛れ込むわけです。
人々はこう噂しています。「ガード下はあの時間帯は、まるでそこだけ周りから独立したかのようになってしまう」と。
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しかも、ガード下の周辺では、おかしなできごとが起きていました。これは何かしら明確な部分を含んでいるようでした。最も端的な例は、酔ったサラリーマンがガード下でねむってしまったできごとです。なんとか目が覚めて歩き出したが、まっすぐ歩いているはずなのに、一度来たところにまた戻ってきてしまうんです。酒で意識がもうろうとしています。それの繰り返しでした。
そして彼は六日間、行方不明になりました。
フナバシ日刊新聞はこう伝えています。
会社員○○さんは十八日、ガード下の焼き鳥屋「一徹」で深酒をした。翌日未明、看板で店を追い出されたとき、○○さんは泥酔していた。不覚にも路上に倒れ込むと、そのまま仰向けで居眠りしてしまった。どのくらい眠ったかはよくわからなかった。○○さんは布団の柔らかさがむしょうに恋しくなり目をさました。周囲は夜のままだった。
顔の横の地面に酸っぱく臭いのとしゃぶつがあった、それは自分の頬や髪の毛にもべったりついていて、かなしくなった。もう四十歳になるのに、なんかやんちゃすぎるなあ、おれ、とかれは後悔した。でもすぐさま「まあ、たまにはこういうのもいいだろう、ふう、こんなのひさしぶりだよなあ」と開き直った。根っからのプラス思考だった。
深酒には理由があるものだが、彼には全然なかった。かれはこう語る。「飲み始めたときは、地元の将棋友達の面々と、のんびりやりはじめました。羽生がどうしたとか、豊島がどうしたとか、一手損角代わりがなんだとかね。知的な会話です。それからいろんな、込み入った話もしました。なんというか、会社の人たちとはできない、率直な意見の交換をやって、気分がとてもよくなったのを覚えています。われわれの間には妙なしこりはなく、ぶつかりあうものがなかった。大人になればなるほど、エゴが固くなり、頭が固定観念でいっぱいになると思います。だから、必ず何かがぶつかりあい、いや~な思いをすることになります。そうでしょう、記者さん?」
「まったくもってそうです。わたしもたびたびそんな目にあっているのです」と記者は答えた。
○○さんは続けました。「とにかく、わたしは楽しくて楽しくて、アルコールの海を泳ぎました。その海はとても広く、ゆめまぼろしのように美しい太陽がふりそそぎ、目を疑うほどの透き通ったエメラルドグリーンの海水の中には、すべての夏が閉じ込められていました」。かれはため息をついて、頭を抑えた。「私の記憶は過程をすべてうしなっております。気づくとぼろいテーブルの上に重たい頭を落としていた。そういうことです」
○○さんが不思議な体験をしたのはその後だった。千鳥足で歩いて二十分ほどの家にかえろうとした。フナバシに住むこと十四年。知らない道などない○○さんだったが、十数分歩いてみると自分がさっき寝ていた場所にもどっていた。不思議なことに、半径一メートルほどまで広がった吐瀉物がそっくりなくなっていたのです。
「そのときは、自分が酔っているんだと思いました。まあ路上でねむってしまうほどだもんなあ、と。それでもう一度、歩いてみた。十分ほどだった気がします。あくまで気がするだけですが、歩いていたら、再びそこに戻っていました。今度はあの吐瀉物があるのです。まわりを眺め回しました。電信柱、電灯、道路の白線、壁、たぶん、前と何も変わっていなかったのです。夜は深いままでした。時間を知ることはできませんでした。なにしろわたしは眠っている間に、腕時計を失っていたからです」
それから○○さんは何度繰り返しても同じ場所に戻ってきました。それからかれは四日間行方不明になりましたが、「ずっと夜の街を歩いて、同じ場所に戻らざるを得なかった。そのときある人物にあいましてね、釈放されたんですよ。起きたら、自宅のベットにいました。とくにからだでおかしいところもありませんし、こころも快活そのものです。酒はいまでもばんばん飲みますよ。兵用うべし、酒飲むべしってね」
やっぱりこのガード下はにおいます。動かぬ証拠と異って良いでしょう
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ムーグは街研究グループが「フナバシには尋常ならざるものがある」とレポートをまとめたことや、人口が五年で七十万人から三百二十万人まで四倍以上増えたこと、不動産価格が素晴らしい行政と民間の協力によって急騰を免れたことなどを指摘した。
「フナバシの人々はある宗教を信じていました。それを示す端的な例がこれです。ボン教という宗教ですね」
彼はスクリーンに地図を表示した。エリア分けされ、ボン教徒の居住者数に対する割合をさまざまな色で示したものだ。ボン教は毎年休息に伝播していき、八〇%オーバーを占める赤色が地図のほとんどすべてを占めるようになった。住民のほとんどがボン教を信じるようになった。
「ボン教徒の大移動です!」モーグはがらにもなく絶叫した。
ボン教とは東京でひょんなことから生まれた興味深い新興宗教です。当時、アジアを拠点にインターネットで全世界に広がりつつありました。
彼らは国家を自称しませんでしたが、ほとんど新手の国家と同じでした。いや国家の役割も持っていた、というのが正しいでしょう。
独自の通貨をつくり、同時の通貨管理制度をつくりました。クレジットカードに頼らない独自の決済の仕組みをつくり、クレジットカード会社の手数料攻撃を退けました。独自の法体系(とても簡素で柔軟なものだった)を整え、やわらかい管理により、自由と安全の両立を目指しました。
彼らは指導者を仲間の評価で決めました。アマゾンとかのレビューのような感じですね。あれで「この人はいい」という人を上にたたせました。彼らは権力という方法を極力避ける方法論に行き着きました。分かりやすく言えば、「権力が生じると、男の子たちがそれをめぐって猿山の争いを始める」からです。ばかばかしいですよねえ、権力って。
「ボン教の誕生のいきさつはとても興味深いですね。ボンボン教は連戦連勝のヘッジファンドから生まれたんです。大もうけして、二歩歩くならハイヤーを使えという社訓で知られるほど、ぜーたくな感じの『いけいけんどんどん会社』がサブプライム危機からはじまる金融恐慌で、すっからかんになりました。投資家から詰め寄られて窮した、ロビー社長は、贅沢三昧で身に付けたカリスマ性と天性の口八丁を駆使して、おおうそをぶちかました」
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「このトレメンダスな失い方は、われわれの運命だったのだ。みんな、金がすきですきでしょうがない性分のひとしかここにはいない。このわれわれが、かねよりも大事なことがあるって、きづくことになった。これは唯一無二のチャンスだ!』
ロビーCEOはそう言うと陶酔した。「それは愛であり慈悲であり、心というものだ。。からだが生きているという生理運動であり、耳がとらえる風の歌であり、瞳に写る世界の美しいものたちであり、鼻をつらぬくあらゆるものの鋭い臭いである。ファンドをつくったのは、この最終目標に達するためであり、つまりわたしたちは解脱したんだ。金という盲迷から抜け出したんだ。やったぞ。おれたちはやったんだ。やった。やったぞ。おめでとう」
彼の顔は真っ赤になり、やはり真っ赤に充血したつぶらな目から涙が滝のようにこぼれました。「おれもそうだ。金なんてものに吐き気がしていた。まるで塩水じゃないか。飲めば飲むほどのどが乾くんだから。おれは止めることができてうれしいよ」とボリショイサーカスの支配人のような中年男が大声で応じました。
結婚しそびれたネイルショップチェーンの女王も続きました。「わたしもそうよ。自分の家族のためにお金をどんどん稼いできたのに、その金のせいで、家族がどんどん争い始めるのよ。まるでシェイクスピアをナマの人生でやっている、と思っちゃったわ。もうこんなのうんざりなのよ。自分が生きていることの喜びに向き合いたいと思ったわ。それは金じゃなしとげられないのよ。金なんて、中央銀行が保証した紙くずじゃないの! さあみなさんたき火を始めましょう!」
連中はアタッシュケースから札束を取り出して、くしゃくしゃにして大きくして、たき火をはじめた。狂っていた。数十人が囲いながら、ABBAの「マネー・マネー・マネー」を歌い、それより前の世代がピンクフロイドの「マネー」を歌い、若い世代は「残酷な天使のテーゼ」を歌った。それが黒い灰になりはてると、誰ともなくスタンディングオベーションを始め、ドミノだおしのように皆がそうなった。互いに熱いハグを交わした。
でも、するとどういうことだ。彼らの表情に変化が訪れた。欲の皮のつぱったことを始終やっていた顔とはもはや思えなかった。そのどれもが解放され、救済され、享楽に導かれていた。
「この考えに名前をつけようと思う」
誰かが叫んだ。まるでアメリカのワールドシリーズ的な盛り上がりに、差押えにあっているしょうしゃなオフィスビルの会議室はつつまれた。
「ボン教だ!」
やはり誰かが言いました。
「そうだ、ボン教だ!」
ロビーがのっかりました。
ボン教という名前が決まった瞬間です。
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ロビーの栄華はつづかなかった。彼は若者がボン教に入信し始めるとあっという間に失脚した。周りの金持ちも失脚した。
ムーグが説明する。「ボン教の特徴は、オープン宗教でした。つまり、預言などにはたよらず、自分たちでその宗教をデザインしようというこころみです。かなりエッジがたっていますね。仲間内の評価に基づいて、暫定的なトップを決めたり、状況にあわせて柔軟に考え方をかえていくやり方はこのとき形作られました。彼らはすぐさま出発地点のことを忘れて、新しい地平を切り開きだしたのです」
このオープン化が後から入った若者たちが活躍する素地をつくりました。若者たちは新しい仕組みを、ボン教に取り入れていきました。するとそれを運営するのも若者の方がふさわしくなってました」
ムーグは画面にふなっしーを表示させた。
「彼らは面白いものをつくることにもたけていました。ふなっしーはフナバシのマスコットキャラとして有名ですね。一見すると、たんなるますこっとですが、実は彼らのリチュアルにものすごく関係しているんです。
まあとにかく、これらのことから、フナバシでは広い範囲にわたって奇妙さの躍動をみることができます。フナバシはとてもおかしくて、手に負えません。まだまだ、たくさんありますが、物語が教えてくれるでしょう」
モーグのプレゼンが終わると、Qはふーーと息を吐いた。
「わかったよ、モーグ、長ーい話だな。それにしても、どうやったら、ぼくがこの物語に関係してくるかようくわからないままだな。のどに何かがつっかかっている感じだ」
「それも物語が教えてくれますから、大丈夫です」