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隣のナニカ(ホラー短編集)

雪の日

作者: 星雷はやと



「結構、積もったなぁ……」


 俺は車を走らせながら、独り言を呟く。


 久しぶりの帰省は、大雪の歓迎を受けた。両側に広がる畑は見事に雪が降り積もっている。一面銀世界だ。都会では見ることが出来ない、懐かしい風景である。そう思うと雪も悪くない。





「うわぁ……まじかぁ……」


 実家のある坂を上っていると、途中でタイヤが滑り前に進めなくなった。前言撤回だ。やはり雪なんて碌なものじゃない。此処で車を停め、実家の家族に助けを求めるしかない。エンジンを切ると、俺は助手の鞄からスマホを取り出した。


コンコン。


「……え?」


 窓ガラスを軽く叩く音に、スマホから顔を上げた。


 すると、曇った窓ガラスの向こうに数人の姿が映った。まだ連絡していないが、家族が様子を見に来てくれたのだろうか?状況を説明しようと窓ガラスを開けようとボタンを押した。


「……あっ、エンジンを切っていた……」


 エンジンを切っている状態では、窓は開かなかった。


 コンコン。


「ん? あ、はい! 有難う御座います!」


 再び窓ガラスを叩かれると、外の人物は進行方向を指差した。如何やら坂道を押してくれるようだ。近所の人達だろうか兎に角、親切な人達に出会えて良かった。お礼を告げると、車の鍵を捻った。





「やっと着いた!」


滑る坂道を上ること、数十分。実家がある頂上に着いた。家には灯りが灯っている。その灯りに無事に辿り着けた安堵から、肩から力が抜けた。


「あ! ご近所さん達にお礼を伝えないと!」


 此処まで無事に辿り着くことが出来たのは、親切なご近所さん達のおかげである。寒い中、車を押して貰って本当に有り難い。上り坂を登れない時は雪が嫌だったが、人の優しさに触れるきっかけになった。現金かもしれないが、雪の日も悪くない。

 きっと母さんが沢山料理を作ってくれているだろうから、冷えた体を温めて欲しい。


 エンジンを切ると、ドアを開け外へと出た。


「あれ? 皆さん?」


 俺が外に出ると、人影はなく。


 只、車のタイヤの跡だけが下り坂に伸びていた。



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